2019年3月11日

『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』 ヤニス・バルファキス・著 関美和・訳 vol.5232

【名著。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478105510

本日ご紹介する一冊は、今売れている『FACTFULNESS ファクトフルネス』と肩を並べる名著。

※参考:『FACTFULNESS ファクトフルネス』ハンス・ロスリング・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822289605/

ギリシャ経済危機の際、財務大臣を務めたヤニス・バルファキス氏が、娘のために書いた、哲学のある経済解説本で、ブレイディみかこ氏のオビ推薦が、最も本書の特徴を言い表していると思います。

「経済をこれほど詩的に語れる書き手が、いまほかにいるだろうか」

資本主義の原理と経済の本質を、歴史、文学、哲学の教養を絡めながら語るという独特のスタイルで、一気に引き込まれること、間違いなしです。

<なぜ、アボリジニがイギリスを侵略しなかったのか?>
<文字──それは余剰を記録するためのものだった>
<どうして産業革命はイギリスで起きたの? フランスや中国じゃなくて>
<産業革命の原動力が石炭ではなく、借金だったことがわかっただろうか?>

恐ろしいのは、この優れた語り部の話を聞いているだけで、格差が生まれた理由、国家を支える政治・経済・宗教の仕組み、起業家と借金の役割、信用創造、国債、仮想通貨までが一気に理解できてしまうということ。

ギリシャ人らしい教養のエッセンスも入っており、知的読書が好きな人は、必読の一冊です。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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歴史の中で迫害された人たちのことを、賢くないから犠牲になったのだと少しでも思いそうになったら、そんな考えは捨てたほうがいい

土地を耕す必要のない場所では、誰も農耕なんて考えなかった。たとえば、自然の恵みが豊かなオーストラリアでは、畑を耕したりしなかった。土地を耕さなければ生きていけない場所でだけ、農耕が発達した。そのうちに試行錯誤を経て、より効率のいい農耕の技術が生まれてきた。人間が農耕の手段を開発していく過程で、社会は劇的に変わっていった。農作物の生産によって、はじめて本物の経済の基本になる要素が生まれた。それが「余剰」だ

農作物の余剰が、人類を永遠に変えるような、偉大な制度を生み出したということ。それが、文字、債務、通貨、国家、官僚性、軍隊、宗教といったものだ

アフリカとヨーロッパの形を比べてみるといい。アフリカが南北に長いことがわかる(中略)アフリカの一部で農耕経済を発展させた社会があっても(たとえばいまのジンバブエがそうだ)、その仕組みは広がらなかった

イギリスは人類史上稀に見る残酷な改革を行った。これが「囲い込み」だ(中略)イギリスはこうして、「市場のある社会」から「市場社会」への道を歩みはじめた。農奴を締め出すことで、労働力と土地を「商品」にしたのだ(中略)これが労働市場のはじまりだ。土地も道具も持たない人間は、労働力を売って生きていくしかない。苦役を商品にするというわけだ

いまは、城でも絵画でもヨットでも、カネさえ積めば買えないものはない。交換価値が経験価値を打ち負かし、「市場のある社会」が「市場社会」に変わったことで、何かが起きた。おカネが手段から目的になったのだ

かくして、大転換が起きた。借金が生産プロセスに欠かせない潤滑油になったのだ。利益自体が目的になったのも、このときだった。利益が出なければ、新しい起業家たちは生き延びることができないからだ

アンドレアスやほかの誰かが家を売る場合、値段をどんどん下げていけば、いつか買い手が見つかる。だが、ワシリーやほかの失業者がみんな希望を下げて雀の涙ほどの給料で働こうとすると、さらに仕事を見つけにくくなる可能性があるのだ

国家に紐づかないビットコインのような仮想通貨の最大の弱点は、そこではない。最大の弱点は、危機が起きたときにマネーの流通量を調整できないことにある

つまるところ、満足と不満の両方がなければ、本物の幸福を得ることはできない。満足によって奴隷になるよりも、われわれには不満になる自由が必要なのだ

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ギリシャ語で「ae」を「エ」、「oi」を「イ」と発音することがわかっていれば、本書の訳文も少しは変わっていたと思うと、そこだけが残念ですが、中身の秀逸さ、読書の楽しみを損なうことはないので、ギリシャマニアのたわごとと思ってください。(古代ギリシャ語に関しては、専門家にご確認ください)

世界25カ国で続々刊行の話題作、ということですが、読んでその理由がよくわかりました。

これは、必読の一冊です。

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『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』
ヤニス・バルファキス・著 関美和・訳 ダイヤモンド社

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◆目次◆

プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本
第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか?
第2章 市場社会の誕生
第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ
第4章 「金融」の黒魔術
第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界
第6章 恐るべき「機械」の呪い
第7章 誰にも管理されない「新しいお金」
第8章 人は地球の「ウイルス」か?
エピローグ 進む方向を見つける「思考実験」
訳者あとがき

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