2018年12月5日

『NEW POWER』ジェレミー・ハイマンズ、ヘンリー・ティムズ・著 神崎 朗子・訳 vol.5170

【これは「買い」ですね。】
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JR山手線の新駅名「高輪ゲートウェイ」に、ネット上でたくさん批判が集まっています。

公募の結果、さまざまな名称が集まっていたのに、投票で130位だった「高輪ゲートウェイ」をあっさりトップダウンで決定。

一企業の意思決定がなぜここまで問題になるのか考えた時、「あ、これはルールが変わったんだな」と、ピンときました。

少数の人間が握り、リーダー主導で決める「オールドパワー」のルールと、多くの人が参加型で生み出す、仲間(ピア)主導型のルールが、ぶつかり合っているのです。

現在、商品開発やマーケティングで苦しんでいる企業も、組織運営で苦しんでいる企業も、その根っこはまったく同じ。

要は、「オールドパワー」のルールから脱却できていないのです。

とはいえ人間、慣れ親しんだルールからはそう簡単に抜け出せないもの。

そこで、何がどう変わったのか、具体的に教えてくれる救世主のような一冊が、本日ご紹介する『NEW POWER』です。

著者は、194カ国、4800万人以上のメンバーを持つ世界最大規模のオンラインコミュニティ「アヴァース」共同設立者で、マッキンゼーで戦略コンサルタントも務めたジェレミー・ハイマンズ氏と、ファスト・カンパニー誌が「もっともイノベーティブな企業」リストに選んだ「92ストリートY」のCEOで、約100カ国から1億ドル
以上の資金収集に成功した「ギビング・チューズデー」の共同創始者でもある、ヘンリー・ティムズ氏。

発売されるやいなや、『NYタイムズ』『フィナンシャル・タイムズ』で話題となった一冊で、「ニューパワー」の時代に組織や個人が成功するための原理原則がしっかり書き込まれています。

民主主義的な「ニューパワー」の危うさについても書かれており、「オレはニューパワーの世代だから」と安心している読者も、読んでおけば転ばぬ先の杖となること間違いなしです。(古代アテネは直接民主制→衆愚で滅びたことをお忘れなく)

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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オールドパワーの働きは「貨幣(カレンシー)」に似ている。少数の人間がパワーを掌握し、油断なく守り抜こうとする。権力者は強大なパワーを蓄えており、行使できる。閉鎖的で近づきがたく、リーダー主導型。オールドパワーはダウンロードして取り込み、獲得するもの。ニューパワーは「潮流(カレント)」のように広まる。それは多数の人間によって生み出される。オープンで一般参加型であり、対等な仲間(ピア)によって運営される。ニューパワーはアップロードして分配するもの。水や電気のように、大量にどっと流れるときに最大の力を発揮する。ニューパワーを手にする者たちの目的は、溜め込むことでなく提供すること

ミートゥー・ムーブメント、患者たち、そしてスコットランドの女子学生に共通しているのは、現代のツールを利用して、人びとの「参加したい」という強い欲求をうまく振り向けたことだ

とくに30歳未満の人たち(現在の世界人口の半数以上)に顕著なのは、新たな感覚──つまり、自分たちは「参加する権利」を持っているという感覚だ

オンライン・コミュニティの仲間からわくわくするほどクリエイティブな刺激を受け、すぐにフィードバックをもらえる人たちは、会社の日常的なプロジェクト業務で上司がほとんどコメントをくれなかったりすると、非常につまらなく感じるはずだ

なお、我々のビジネスや文化において、「協働」や「シェア」(共有)がますます盛んになっているが、それが必ずしもよい結果を生むわけではない点にも注目すべきだろう。医学誌『ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー』で発表された最近の研究では、「協働は優秀な人たちにとっては社会的に不利にはたらくことがわかった」。周囲から浮き、疎外されてしまうからだ

いま必要なのは、ただのキャッチフレーズではなく「ミーム・ドロップ」──あらゆるメディアで使用できる映像やフレーズだ

人びとはもはやアイデアを消費するだけでは飽き足らず、アイデアを発展させ、手を加え、無数の人びとに届けるために、自分も役割を果たしたいと思っている

◆「拡散」されるアイデアの3つの条件「ACE」
Actionable(「行動」をうながす)
Connected(「つながり」を生む)
Extensible(「拡張性」がある)

「大ヒット」が運動の終焉を招く

「具体的な見返り」と「目的意識」を組み合わせる

いまのように分散化の進んだ世界では、実力やノウハウのある人たちが群衆のサポートを獲得しやすいのが現実で、その裏には疎外された人たちが存在する

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ゲットアップやエッツィ、レディット、ロバーツ・スペース・インダストリーズなどの具体的な事例が紹介されており、何が「ニューパワー」時代の成功法則か、何がリスクなのかよくわかります。

なかでも、拡散されるアイデアの3つの条件「ACE」や、プラットフォーム・オーナー、スーパー参加者、参加者の3つのバランスが大事だと述べた部分は、インターネットで活動する企業は、ぜひ押さえておきたいところです。

経営者、宣伝広報、マーケターのバイブルとして、広く読まれるべき一冊だと断言します。

今年最高の一冊は、『サブスクリプション』だと思っていましたが、土壇場に来て、それを上回る本が登場してきましたね。(どっちもダイヤモンド社か!)

『サブスクリプション』ティエン・ツォ、ゲイブ・ワイザート・著
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ぜひ、読んでみてください。

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『NEW POWER』ジェレミー・ハイマンズ、ヘンリー・ティムズ・著 神崎 朗子・訳 ダイヤモンド社

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◆目次◆

第1章 ニューパワーの世界へようこそ
第2章 オールドパワーvsニューパワー
第3章 「ミーム」を投下せよ
第4章 「群衆」をつくれ
第5章 ニューパワー・コミュニティという武器
第6章 影響範囲を「拡大」する
第7章 がっちりつかんで離さない
第8章 オールドパワーから「ジャンプ」する
第9章 新しい「リーダー」になる
第10章 パワーを「ブレンド」する
第11章 「未来」の波に乗る
訳者あとがき
NEW POWER用語集

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