2018年11月29日

『不便益という発想』川上浩司・著 vol.5166

【京大教授が説く、新しい時代の価値「不便益」とは?】
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本日ご紹介する一冊は、京都大学デザイン学ユニット教授、川上浩司さんによるユニークな一冊。

こんな内容の本なのに、つい件名では利便性を優先してしまいましたが、本当は『不便益という発想』はサブタイトルで、メインタイトルは『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか?』という長いタイトル。

この不便なタイトルを丸暗記できれば、おそらく教授や教授のゼミの生徒と仲良くできる上、飲み会ではヒーローになれるでしょう(笑)。

このように、一見不便なことが便益をもたらしてくれることを、本書では「不便益」と呼んでおり、何もかもが便利になった時代に、新たな価値をもたらすキーワードです。

本書には、この不便益の価値を教えるエピソードや事例がたくさん登場し、また人に喜びをもたらす不便益の創り方、設計方法についてもヒントが示されています。

なかでも、152ページに示された「不便益の六つの性質」は必読。

この6つの視点があれば、きっとみなさんも不便益を創り出すことができるはずです。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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人工システム側単体での高機能化や効率化が、必ずしも人を含めた系(システム)を良くするとはかぎらない

学習とはすべて、「自分の時間や手間をかけて、自分が変わることにリアリティーを与える作業」

必ず狙ったところにヒットが打てる「究極のゴールデンバット」があったら、便利でしょうが、野球は成立しません(中略)人の心技体で競うものでなくなった途端、スポーツは意味がなくなるのです

テレビを見るためにはロビーにいる必要がある、という不便は、異国で友人を作るチャンスをくれました

「俺だけ感」が「嬉しさ」を生む

「自己肯定感」を感じるには、自分が習熟できている、主体性を持っている、スキル低下を防ぐ、などが関連します

「次世代の車いすをデザインせよ」と言われたら、工学畑の人間ならば、車いすに自動停止装置を付けたり、動力をアシストするなど、使う人が楽(便利)になる方向に考えてしまいがちです。ところがCOGY(ペダル付き車いす)は逆の発想です。足元にペダルが付いており、移動するためには、自分で漕がなければなりません

「ゴミ箱ロボット」は、一見、自走式のゴミ箱のようです。ゴミを発見すると、ゴミ箱はゴミのほうに向かっていきます。(中略)しかし、彼はゴミを見つけると、近くに寄ってきた人とゴミの間をウロウロし、ペコリとお辞儀をするような仕草をするだけです。これで、人に「ゴミを拾ってゴミ箱に捨てる」ことを誘います。自分ではゴミを拾うことはありません

東京都立川市にある「ふじようちえん」は、楕円形の園舎が目を引く幼稚園です。園舎の屋根には登ることができて、園児が毎日走り回っています。「ある大学の研究員が調査したところ、都内でサッカーを取り入れている幼稚園の子どもたちよりも、三倍以上も歩数が多かったと報告」(加藤積一『ふじようちえんのひみつ』小学館)されているほど

◆不便益の六つの性質
1.アイデンティティを与える
2.キレイに汚れる
3.回り道、成長が許される
4.リアリティと安心
5.価値、ありがたみ、意味
6.タンジブルである(実際に触れることができる、手触りがある)

不便の益を得るには、昔の不便な方式に戻すというのも一つの手です

「頭を使わずに長さが測れるとは便利すぎる、不便にしてやれ」からスタートして、目盛りを素数だけにして簡単な引き算を必要にする、というふうに考えたのが、京都大学の定番グッズになった「素数ものさし」です

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京都在住の知人の勧めで買った本ですが、これは当たりでした。

あらゆる商品・サービスが「効率化」という軸で開発されている今日、この「不便益」というコンセプトは、商品開発のブレークスルーになる可能性があります。

エピソードや事例が豊富で、楽しく読めるので、ぜひ気軽な気持ちで手に取ってみてください。

きっと、新たな気づきがあるはずです。

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『不便益という発想』川上浩司・著 インプレス

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◆目次◆

序 章 不便は手間だが役に立つ
第1章 そもそも、便利ってなんだ?
第2章 不便じゃないと楽しくならない!
第3章 これは不便益だ!(勝手に認定)
第4章 「便利」という害
第5章 安心も「仕掛け」も、不便から
第6章 「益をもたらす不便」の性質
第7章 不便益システムを作る
第8章 不便益を「形」にする

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