【NEW YORK TIMES 2017ベストブック】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862762573
本日ご紹介する一冊は、「NEW YORK TIMES 2017ベストブック」に輝いた、注目のノンフィクション。
アパルトヘイト政策のもと、白人と黒人の間に生まれ(当時は犯罪だった)、見事有名コメディアンとなった著者が、その半生を振り返った自伝ですが、これはいわば南アフリカ版『佐賀のがばいばあちゃん』です。
※参考:『佐賀のがばいばあちゃん』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198920001/
どんな過酷な状況にあっても「笑い」を忘れず、力強く生きる方法を教えてくれた母との思い出が、著者に、そしてわれわれ読者に、生きる力を与えてくれます。
洋書レビュアー、エッセイストの渡辺由佳里さんが、こう書いていますが、その通りだと思いました。
<「人生は不公平」なんて愚痴を吹き飛ばす涙と笑いの痛快な自伝。>
仕事や人生で使える教訓にも満ちていて、これは「買い」の一冊。
中学生、高校生、大学生にもぜひ読ませたい本だと思いました。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。
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アパルトヘイトが巧妙だったのは、圧倒的多数の黒人同士を、反目しあうよう仕向けていたことだ。英語の「分離(アパート)」「憎悪(ヘイト)」とたまたま音が同じだけど、まさにそのとおりだった。とにかく、グループに分け、憎みあわせておけば、管理しやすいってわけだ
普通、子供というものは両親の愛の証だけど、僕の場合は両親の犯罪行為の証だった。オヤジといっしょにいられるのは家の中だけ。家を出たら、オヤジは僕たちとは通りの反対側を歩かなければならなかった
「家に男がいないからって、夫がいないわけじゃないのよ。神様がわたしの夫」
かあさんに自分を哀れむ気持ちなんて、これっぽっちもなかった。「自分の過去に学べば、その過去のおかげで成長できる。だけど、過去を嘆きはしない。人生には苦しいことがいっぱいあるけど、その苦しみで自分を研ぎすませばいい。いつまでもこだわったり、恨んだりしたらダメなの」とよく言っていた
学校も仕事も礼拝もないときは、まだ行ったことのない場所へ出かけた。「わたしがあんたを選んで、この世界に連れてきた。だから、わたしにできなかったことは全部させてあげる」というのが、かあさんの方針だった
食べるもの、つまり食べていけることが、僕たちの暮らしのバロメーターだった。かあさんはいつも、「あんたの身体と魂と知性にちゃんと栄養を与えるのがわたしの仕事」と言っていた
あるとき、アディダスのスニーカーをねだると、かあさんはアビダスという偽ブランドを買ってきた。「かあさん、これ偽物だよ」「どこが違うって言うの」「見てよ、このロゴ。3本線じゃなくて4本ある」「ラッキーじゃない。1本おまけされたのね」
よく、夢を追いかけろと言うけど、思い描けないことを夢見ることはできないし、どこで生まれ育ったかによって、思い描けることがかなり限られてしまうことだってある
本当に可能なことは、自分の目の前の世界のはるか向こうにある。かあさんは、なにが可能かを示してくれた
「魚を与えれば1日で食べてしまうけど、釣りを教えれば一生食べていける」とはよく言われる。だけど「釣りざおも与えたらいいんじゃないか」とまで言う人はいない。このたとえ話には、そこが欠けているのだ。アンドリューといっしょに作業したことで、僕ははじめて気づいた。恵まれた世界の人から教わる必要があるのだ
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逆境と、それに堂々と立ち向かう母が、全米有数のコメディアンを作った。その事実も感動ですが、人はどこまでも前向きに生きられる、というのが一番感動したポイントでした。
恐怖、絶望、笑い…。
本当に感情を揺さぶられる一冊でした。
これはぜひ、読んでみてください。
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『トレバー・ノア 生まれたことが犯罪?』トレバー・ノア・著
齋藤慎子・訳 英治出版
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◆目次◆
第1部
1 走れ
2 生まれたことが犯罪
3 トレバー、お祈りして
4 カメレオン
5 ふたりめの女の子
6 抜け穴
7 愛犬フフィ
8 父、ロバート
第2部
9 桑の木
10 思春期の、長く、ぎこちなく、ときに悲劇的で、いたたまれないことだらけの恋の教訓
その1「バレンタインデー」
11 アウトサイダー
12 思春期の、長く、ぎこちなく、ときに悲劇的で、いたたまれないことだらけの恋の教訓
その2「片思い」
13 色めがね
14 思春期の、長く、ぎこちなく、ときに悲劇的で、いたたまれないことだらけの恋の教訓
その3「ダンスパーティー」
第3部
15 いいぞ、ヒトラー!
16 チーズボーイ
17 世間は守ってくれない
18 母の命
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