【もっと伝わる文章を書くために】
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駆け出しのライター時代、師匠からこんなことを言われました。
「美味しい」とだけは書くな。
「美味しい」はあくまで主観だから、そのままでは伝わらない。
どう書けば相手が美味しいと感じるのかを考えて書け、ということです。
この教えを原則化すると、「形容詞を使うな」ということ。
この原則を一冊のノウハウにまとめたのが、本日ご紹介する『形容詞を使わない大人の文章表現力』です。
著者は、国立国語研究所教授で、一橋大学連携教授でもある石黒圭さん。
アマゾンで検索したところ、これまでに30冊弱の日本語関連本を出されています。
本書では、そんな文章のプロフェッショナルが、文章から形容詞を排して、より具体的でより伝わる表現を教えてくれます。
どうすれば「すごい」「おもしろい」をもっと伝わる表現に変えられるか、どうすればひどい肩こりの状態を相手に伝えられるか、どうすれば夏の終わりのはかなさを伝えられるか…。
ワンランク上の文章表現をするためのテクニックが、約240ページのなかにビッシリ詰め込まれています。
さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。
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「すごい」だけでは、驚きの強さは伝わっても、何がすごいのかは伝わりません。「何がすごいか」を詳しく説明する表現を加えることが必要です
赫さんの研究によれば、ファッション誌に出てくるオノマトペは「ちょ」がつくものがもっとも多く、「ちょっぴりピンク」「ちょこっとイン」のように使われます。次に多いのは「ふわ」がつくもので、「ふわふわニット」「ふわもこアイテム」のように使われます。そのあとに続くのが「たっぷり」「すっきり」で、「たっぷりフレアのスカート」「すっきりシルエットのパンツ」のように使われるそうです
◆歌謡曲のオノマトペ
第1位「そっと」第2位「キラキラ」第3位「ドキドキ」
子どもっぽくなるということで避けられがちなオノマトペですが、うまく使えば、言葉の生気を蘇らせる装置として有望
「すばらしい」という1語で一括してしまうのでなく、すばらしく感じられる点を具体的に列挙したほうが説得力は増す
ほんとうに休みが多いのであれば、
●うちの近所の焼き鳥屋は週3日営業で、店が開いている日よりも閉まっている日のほうが多い。
と書けば、事実に基づいた記述で確実です
夏の終わりが近づくとはかなさを感じてしまいます。そんな自分の気持ちをSNSで発信するときに、「はかない」と直接書かずに、夏の風物詩に託して書く方法はないでしょうか。(中略)私自身が夏の終わりを「はかなさ」とともに感じるのは、セミと花火です
「の」が文末に挟まると、文の一部の要素を否定することになります。それによって、表現の力を強めることができます。たとえば、以下のような感じです。
●私はお金儲けがしたくて仕事をしているのではない。お客さまに喜んでほしくて仕事をしているのだ。
“not A but B”の論理を使ったものでおもしろいのは、
●場所に届けるんじゃない。人に届けるんだ。(クロネコヤマト)
でしょう。宅配の荷物を大切に扱っていることが伝わります。同じ宅配便のキャッチコピーとしては、
●歩いてる佐川のお兄さんを、私は見たことがない。(佐川急便)
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スペースの都合で、全部の文例が紹介できないのが残念ですが、じっくり取り組めば、形容詞を排した文章表現のノウハウがバッチリ身につきます。
教えてくれる人がいる場合には、著者が作成した問題に実際に取り組むと効果的だと思います(以下は問題例)。
問1 夏が終わる「はかない」気持ちを、「はかない」という形容詞を使わずに、夏の風物詩をとおして描写してください。
ぜひやってみてください。
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『形容詞を使わない大人の文章表現力』
石黒圭・著 日本実業出版社
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◆目次◆
第1部 大雑把な発想を排する 直感的表現から分析的表現へ
第1章 あいまいさを避ける[限定表現]
(「すごい」「おもしろい」のあやふやさを避ける)
第2章 個別性を持たせる[オノマトペ]
(「おいしい」「痛い」のありきたりを避ける)
第3章 詳しく述べる[具体描写]
(「かわいい」「すばらしい」の手軽さを避ける)
第2部 自己中心的な発想を排する 主観的表現から客観的表現へ
第4章 明確な基準を示す[数量化]
(「多い」「さまざま」の相対性を避ける)
第5章 事情を加える[背景説明]
(「忙しい」「難しい」の根拠不足を避ける)
第6章 出来事を用いる[感化]
(「はかない」「せつない」の感情表出を避ける)
第3部 ストレートな発想を排する 直接的表現から間接的表現へ
第7章 表現を和らげる[緩和]
(「嫌いだ」「まずい」の鋭さを避ける)
第8章 裏から迫る[あまのじゃく]
(「くだらない」「つまらない」の不快さを避ける)
第9章 イメージを膨らませる[比喩]
(抽象性を避ける)
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