2017年11月8日

『クルマを捨ててこそ地方は甦る』藤井聡・著 vol.4858

【地方こそクルマを捨てるべき?】
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この2017年11月末で、1年間続いた山口県居住生活をいったん終了します。

思えば昨年、FM山口の生放送で土井が指摘したのが、「山口にはクルマが多過ぎる」ということでした。

人口わずか20万人弱(196,451人/11月1日現在)の山口市内が渋滞していて、近隣の主要な観光地に行くにも、ムダに時間がかかる。これは問題だと思ったのです。

──しかし、どうやらこの視点はまだまだ甘かったようです。

地方におけるクルマのデメリットは、観光の機会ロスだけではない。
クルマは、もっと深刻な問題を引き起こしていたのです。

本日ご紹介する一冊『クルマを捨ててこそ地方は甦る』によると、<今地方が「疲弊」している重大な原因は、まさにこの、地方社会が「クルマに依存しきっている」という点にある>。

クルマ社会化=モータリゼーションが進めば、鉄道やバスなどの公共交通産業が打撃を受け、駅前は寂れ、郊外型の大型ショッピングセンターだけが繁栄する。ところがその大型ショッピングセンターは地域外の大資本であって、地域経済への還元率は低い。

つまり、地方はクルマ社会化することによって、富をどんどん地域外に流出していた、というのです。

注目したいのは、この論考をまとめているのが、第2次および第3次安倍内閣・内閣官房参与で、防災・減災ニューディール担当の藤井聡さんだということ。

つまり、以前ご紹介した、『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』で描かれていたような街づくりが実現する可能性があるということで、そうなればすべての商売に影響が出ます。

※参考:『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』
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これは読まない手はないでしょう。

さっそく、ポイントをチェックしてみます!

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筆者の研究室の調べでは、地元商店街では使ったオカネの5割から6割が地元に還元されるのだが、大型ショッピングセンターでは、1割から2割程度しか地元には還ってこない。その大半は、地域外に流出するのだ

道からクルマを追い出せば、人が溢れる

歩行者を対象とした心理調査により、「商店街でクルマとすれ違うことで、楽しい気分が失われてしまう」という実態が明らかになっている

「歩行者天国」の最大の魅力はクルマがない、ということだが、そこにはもう一つの大きな魅力がある。それは「賑わいがある」ということだ。賑わいとは、人がたくさん集まり、活気ある状況をいう

そもそもクルマが走っているような道では、親は子供の手をつないだり抱っこしたりしておかないと危ない。結果、子供たちは好きに歩き回る自由が制約されてしまう。お母さんたちにしてみても、子供を守るためにずっと「緊張」していなければならなくなる

歩道拡幅の効果は、それだけにはとどまらない。その結果、より多くの人々が四条通りを訪れるようになったのである。歩行者調査によれば、四条通りの毎月の歩行者数は、歩道拡張前と比べて1~2割程度増加している

日本中で最も「高密度な都市」が形成されている東京23区では、現在、すべての移動に占める、クルマでの移動の割合(一般に、自動車分担率といわれる)は、わずか11%にすぎない(平成20年時点)。つまり、東京の人たちの移動の実に9割が電車か徒歩だ。一方で、全国各地で同様の調査を行なったところ、地方都市圏のクルマでの移動のシェアは、実に58%に上る

広く薄い都市化と税収減で「行政サービス」が劣化する

富山市は街の中心部に約90億円弱のLRT投資を行なって、それを「軸」として薄く広く拡大した市街地のコンパクト化を図った

言うまでもなく、こうした新しい人の流れは「新しいビジネスチャンス」を生み出す。実際、富山港にある国指定重要文化財である北前船廻船問屋「森屋」の入場者数は、LRT開通後、一気に3.5倍に増加している

平成28年1月時点で、環状線(セントラム)沿線を中心に、4.9~7.5%もの地価上昇率が確認されている

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ショッピングセンター関連の方や、自動車ビジネス関連の方は、著者の主張を苦々しい思いで受け止めるでしょうが、人口減少時代に「集中」するというのは、戦略的には正しいと思っています。

やはり、強者は日本国内で弱者をいじめるのではなく、海外に雄飛して外貨を稼ぐのが本来の筋であり、地方のマーケットは地元の中小零細企業に任せておくのが良い。

実際、著者の研究でも、地元で消費する方が地方経済への還元が大きいということがわかっているそうです。(大資本のお店で消費すると、富が流出してしまう)

一企業の利害を超えて、これからこの国がどうするのが正解なのか、いよいよ真剣に考えなければならない時期が来ています。

ビジネス視点がもっと盛り込まれているとなお良かったですが、議論のきっかけとして、またこれからのビジネスのヒントとして、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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『クルマを捨ててこそ地方は甦る』藤井聡・著 PHP研究所

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◆目次◆

第1章 道からクルマを追い出せば、人が溢れる
第2章 クルマが地方を衰退させた
第3章 クルマを締め出しても、混乱しない
第4章 「道」にLRTをつくって、地方を活性化する
第5章 「クルマ利用は、ほどほどに。」──マーケティングの巨大な力
終章 クルマと「かしこく」つきあうために

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