【掘り出し物です。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4422100653
本日ご紹介する一冊は、ひさびさにご紹介する絶版・掘り出し物。
現在も寝具の製造・販売・卸として続いている和田哲株式会社の祖であり、「最後の船場商人」と言われた故・和田哲夫氏の教えを、孫の和田亮介氏がまとめた、じつに興味深い経営訓です。
本書の初版が出されたのは1976年。
元々は、日本寝装新聞社から出されていたもので、その後、創元社によって復刊。現在は絶版となっていますが、繊維業界が苦しい現在、強く復刊を希望したい一冊です。
タイトルにある『扇子商法』というのは、広げてもすぐに縮められる、という意味から名付けられたもので、その実践のポイントは、「不況にピントを合わせる」ことにあります。
つまり、「人を増やさない」「借金しない」「無駄しない」ということですが、この教えを受けてか、現行の和田哲株式会社は、かつてほどの規模はないものの、社員わずか16名で売上12億円を叩き出しています(2015年)。
現金で仕入れ、手形で売るという、斬新かつ合理的な商法や、昭和51年当時としては画期的なダイレクト・メール、インパクトあるキャッチコピー、勝負どころで打った新聞広告…。
商売の基本を堅実に押さえつつ、出るところは出るという攻めと守りのバランスの取れた考え方に、一気に引き込まれてしまいました。
評論家の荒垣秀雄氏が「異色の名エッセイ」「蒲団屋さんがこんな名文家とは知らなかった」と絶賛する本書の内容を、ちょっとだけシェアしましょう。
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「暑い時にはいっぱい開いて使うけれども、いらん時には小さくたたんでおくやろ。経営もこれと一緒、いつまでも続く好景気なんぞはどこにもあらへん。必ずつぎは不景気や。反対に不況いうもんは、必ず次の好況呼ぶもの。それやよってに、その時々にすぐ応じられるように、常から準備しとかんならん。ええ時はひろげ、わるい時はちぢめる。言ってみればわけないことやが、実はこいつがむずかしい……」
お辞儀と挨拶、彼に言わせると、商人にとって一番大切な感謝の気持ち、これを相手にもっともよく伝える手段がこの二つだという
お辞儀、挨拶のつぎは掃除だった。掃除が行き届いている家は栄えるというのが持論だったから、それは徹底していた
彼は、機を失うよりも、考えの足らざることによって招く失敗を、より多く怖れたのである
当時流行った言葉に、「流行のバスに乗り遅れるナ」というのがあったが彼は、「あわてて満員のバスにのるアホはない。ボクやったらバスの行先、スピード、運転手の顔つき、乗ってる連中の顔ぶれ、席の空き具合までも確かめる。それに、バスはナニもそれ一台やないさかい……」
「学問した人は、とかく結論先に出す、結局何もでけへん。商売は理屈じゃないよって、やってみなわからへん。何とかしようと努力し精出す、そこにおのずと道が開けて来るもんや」
「それとナ、たいていの人はこれ商売したらナンボ儲かる。これボロイと思う。つまり儲けを先に考えるやろ。僕は逆や、ナンボの損ですむか、その計算先にする。下手しても、これくらいの損やったら別条ないと思った時、はじめて心を決めるんや。そうしとけば、いつだって左枕やないか」
売り手にとって、値切らんと現金でエエ商品買いたい言うたら、これはありがたいにきまっとる。ますますいい商品つくったろかいと思うのは当たり前やろ。“利は源に在り”。まず売ってくれはるところのこと先に考える、これが第一や。そして今後はそのエエ商品を手形で売る。そしたら今度は買手がよろこぶ。二宮尊徳はんの“売手よろこぶ買手よろこぶ”というやっちゃ。その上にボクは、誰彼みさかいなく売ることは絶対せなんだ。全国一流エエとこばっかり。そやよって貰う手形もみな上等。銀行さんは安心してそれ割ってくれはるという、ざっとこんな筋書になっとるねん
「人生一生のうちで、苦労する量は誰も同じや。ただ人によって、その苦労を人生の前半でするか、後半でするかの違いやろ。ところが前半の苦労と、後半の苦労とでは、同じ苦労でも、その結果はえらく違う。前半の苦労はクスリ、後半の苦労は毒になる」
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ここまで読んでしまった方は、もう絶版本を拾い損ねていると思いますが、これは何としてでも入手して、読んで欲しい内容です。
商売には流行り廃りはありますが、商売に臨む姿勢や積極性、イノベーティブな考え方というのは、いつの時代も通用する勝利の法則なのだと確信しました。
最近どのビジネス書を読んでも小利口な内容ばかりで辟易していたのですが、ひさびさに商売人の魂を吹き込まれました。
「絶対入手!」の一冊です。
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『扇子商法 ある船場商人の遺言』和田亮介 創元社
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4422100653/
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http://bit.ly/2tEzY8o
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◆目次◆
第一話 更紗に賭けた“三つの安全”
第二話 銀行家の安心する商売
第三話 不況にピント合わせた“扇子商法”
第四話 「企業の永遠性」が狙い
第五話 居によって社員を整う
第六話 徹底した健康管理を貫く
第七話 肺ガン防止喫煙法
第八話 詳しくは考うべし
第九話 招宴はすべて南地大和屋で
第十話 忠兵衛さんとの名勝負
第十一話 人間すべからく陰徳を積むべし
第十二話 倒産の“ひっかかり”防止法
第十三話 “オスマン”三社の因縁話
第十四話 “出番”には入念な身支度
第十五話 “硬・軟”自在の社員操縦法
第十六話 ダイレクト・メールの元祖
…以下、長いので省略します。
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