2017年5月26日

『Airbnb Story エアビーアンドビーストーリー』 リー・ギャラガー・著 関美和・訳 vol.4692

【注目の創業物語】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822255190

先日訪れたニューヨークでは、全泊Airbnbを使いました。

ご存知の通り、Airbnbは、世界最大の民泊プラットフォームを提供している注目ベンチャーで、その宿泊体験に熱狂的なファンがついています。

現地の生活がまるごと経験できて、信じられないほど豪華な部屋に安く泊まる、グループで宿泊してシェアする、などといったことも可能です。

洗濯機や乾燥機、食器や調理器具なども使用可能な場合、ほとんど持ち物を持たずに旅ができる、外食なしに安く済ませることができる、といったところも魅力です。

本日ご紹介する一冊は、この注目ベンチャーAirbnbの創業物語を、フォーチュン誌のアシスタント・マネジング・エディターである、リー・ギャラガー(ニューヨーク在住)がまとめた一冊。

2人のデザイナーとひとりのエンジニアという、珍しいパターンの創業ゆえに、そのスタートは苦労が多かったという同社。

度重なる失敗にもめげず、ダメなら何度でもローンチすればいい、と開き直る。資金繰りに詰まると、シリアルを売ってでも儲ける…。

なりふり構わず前に向かう3名の姿は、読んでいる者に不思議な勇気と感動を与えてくれます。

Yコンビネーターには「君たちゴキブリみたいだな。絶対に死なない」と評されて入学を許可され、老舗ベンチャー・キャピタル「セコイア・キャピタル」のパートナー、グレッグ・マカドゥーには、「貸し別荘業界が400億ドル市場だと知っているか」と言われ、奇跡の出資を取り付ける。

本書には、そんなAirbnbの奇跡の成長の物語と、同社への出資を目論む人々へのヒントとなる情報が書かれています。

度重なる宿泊トラブル、当局との衝突、競合の出現、ホテル業界の民泊参入…。

同社を取り巻く状況がヴィヴィッドに描かれていて、じつに読み応えがありました。

ポイントをチェックしますが、基本的にこれは「買い」でいいでしょう。

分厚い本で論点も多いですが、本当に気になったところだけ、ご紹介します。

———————————————–

ほかのウェブサイトと違って、エアビーアンドビーは、ホストの個性が出るような部屋の見せ方をしている。プロの写真家を送り込み、部屋がおしゃれで温かく見えるように撮る

ほとんど話題にならないが、エアビーアンドビーの一番の特徴は、都市型という点だ。それまで、ほとんどのホームレンタル会社は、別荘か、昔ながらの休暇地やリゾート地の物件しか扱っていなかった

RISDは「世界を変える」という理想に満ちた、有名な芸術教育の機関だ。世界中のどんな問題も創造的なデザインで解決できると教わってきた。どんなものでも、かならずデザインできる。理想の世界をデザインすることだってできる。デザイナーは世界を変えられる

「ローンチして誰も気づいてくれなかったら、何度でもローンチすればいい。ローンチしたら、そのたびに記事にしてくれるから」

赤の他人を家に泊まらせるなんて妙だし、ありえないほど危険だと投資家には思われた。創業者のふたりが美大出身という点も、敬遠された。技術的なDNAがないと思われたのだ

ゲビアは、パートナーたちと話しているグレアムのところに近づいて行き、シリアルを手渡した。グレアムはぎこちなくありがとうと言った。おみやげにしては妙だと思った。いえ、おみやげじゃなくて、コレ自分たちでつくって売ったんです。それで会社の資金にしたんです。ゲビアたちはオバマ・オーの制作秘話を披露した。グレアムは座って聞いていた。「へぇー」。少し間があった。「君たちゴキブリみたいだな。絶対に死なない」

マカドゥーは話しかけ、貸し別荘業界が400億ドル市場だと知っているかと聞いた。チェスキーは、自分たちの会社が、「別荘」の「貸し出し」と関係するとは思ってもみなかった

投資家にとっては、エアビーアンドビーの効率の良さと成長性がなによりの魅力だ。拡大にお金がかからないため、この8年間で使った費用は3億ドルに満たないと推定される

「危機のときコンセンサスで決めると、中途半端な決定になる。それはたいてい最悪の決断だ。危機のときには、右か左かに決めるべきなんだ」

いつになるかはともかく、最終的には上場に向かうはずだ。2015年には、プライベートエクイティファームのブラックストーングループでCFOを務めたローレンス・トシを雇い入れている

———————————————–

あっという間に世界3万4000都市を超える宿泊ネットワークを築き上げたAirbnb。

その株式上場はみんなが注目するところですが、本書では、その辺についても言及されています。

来るべき(?)上場に備えて、今から読んでおくといいでしょう。

読み物としても、情報源としても、価値ある一冊です。

———————————————–

『Airbnb Story エアビーアンドビーストーリー』
リー・ギャラガー・著 関美和・訳 日経BP社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822255190/

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B071F38ZXZ/

<楽天ブックスで購入する>
http://bit.ly/2qpZk8k

———————————————–

◆目次◆

主な登場人物
イントロダクション
1章 大ばくち
2章 会社をつくり上げる
3章 エアビーアンドビー共和国
4章 わるいヤツら
5章 アンチとの闘い
6章 ホテル業界を破壊する
7章 リーダーになる
8章 3人が次に出すものは?
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
脚注

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー