【心を使って考えるとは?】
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本日ご紹介する一冊は、精神科医である著者が、「生きる意味」を見つけるためのヒントを提示した、興味深い論考。
著者によると、かつて精神科医の扱う問題は、「愛情の飢え」「劣等感」「人間不信」だったようですが、近年は「存在意義」や「生きる意味」にテーマが移り変わってきているようです。
では、なぜ最近になって「人生の意味」が問題になってきているのか。
著者は本書で、こんなヒントを提示しています。
<自我の芽を摘まれて育ってきた彼らにとっては、精一杯のささやかな希望が「もうこれ以上何かを強制されたくない」という願い、つまり「せめて面倒なことは最小限にして、少しでも楽な人生を送りたい」という形になるのは、必然の結果なのです>
<人は「主体性」を奪われた状態のままで、自力で人生に「意味」を見出すことは原理的に難しい>
<外見上いかに「能動」に見える活動的な行為であっても、それが内面的空虚さを紛らすために消費社会によって生み出された、外から注入された欲求で動いているものは、その内実は「受動」でしかないのだ>
著者は、われわれが人生の意味を感じるには、儲かるとか役に立つとかいった「意義」や「価値」をひたすら追求する「資本主義のエートス」から目覚める必要があると説いています。
ギリシヤ時代に行われていた「観照生活」。
ただひたすら何かと戯れる生活。
美のある生活。
人間らしく生きるには、何が必要か、考えさせてくれる論考です。
さっそくチェックしてみましょう。
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私たちの現代とは、決してギリシヤ時代よりも進歩したのではなく、皆が<労働する動物>という名の奴隷以下の存在に成り下がってしまい、人間らしい「観照」も「仕事」も見失ってしまった時代
人が「生きる意味」を問わざるを得なくなるのは、必ずや「意義」を追い求める生き方に疲弊したから
「意味」というものは、あらかじめ固定的に存在しているものではありません。「意味」とは、人が「意味を求める」という「志向性」を向けることによって初めて生ずる性質のものなのです
人が生きる「意味」を感じられるのは、決して「価値」あることをなすことによってではなく、「心=身体」が様々なことを「味わい」、喜ぶことによって実現されるのです
問題点は大きく二つあって、「真の自己」を外に求めてしまっていることと、それを「職業」という狭い範疇のものに求めてしまっているところ
愛とは、相手(対象)が相手らしく幸せになることを喜ぶ気持ちである。
欲望とは、相手(対象)がこちらの思い通りになることを強要する気持ちである。
芸術とは人間であるために「不可欠なもの」であって、決して「剰余として」身にまとうような贅沢品ではない
「愛」とは、単に他の人に向かうものだけを指すのではなく、世界の様々な物事や人生そのものにも向けられるもので、対象に潜む本質を深く知ろうとしたり、深く味わおうとしたりするものです
何でもないように見える「日常」こそが、私たちが「生きる意味」を感じるための重要な鍵を握っている
「味わう」ということは、私たちの内なる自然である「心=身体」が担っています。一方、それを妨げがちなのが「頭」です
ともすれば「心=身体」を抑え込み支配的に振る舞いがちな「頭」なのですが、このように協働的な「頭」の用い方ができた時、そこに至福の喜びが訪れます。古代ギリシヤ人が「観照生活」を最も人間らしい過ごし方と考えたのは、そのためでもありました
私たちは、もはや「何者かになる」必要などなく、ただひたすら何かと戯れてもよいのではないか。それこそが、「遊び」の真髄
生きることを謳歌し、美に生きることが「労働」よりも下らないこととして扱われてしまうのだとしたら、それは人間性の大いなる堕落
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エーリッヒ・フロムやフランクル博士など、心理学の巨匠たちの言葉も引きながら、われわれがどんな生き方をするべきかが説かれており、じつに良い学びになりました。
ビジネスパーソンはつい、労働によって何かを獲得すること、少しでも得することに躍起になりがちですが、本書を読めば、人生で何が一番大事なのかが見えてくるはずです。
ぜひ読んでみてください。
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『仕事なんか生きがいにするな』泉谷閑示・著 幻冬舎
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◆目次◆
第1章 生きる意味を見失った現代人
第2章 現代の「高等遊民」は何と闘っているのか
第3章 「本当の自分」を求めること
第4章 私たちはどこに向かえばよいのか
第5章 生きることを味わうために
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