2016年8月21日

『コシノ洋装店ものがたり』小篠綾子・著 vol.4414

【感動。コシノ三姉妹を生んだ母の自叙伝】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062814439

いつもおすすめしている名著『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』は、父から息子への愛情が伝わる、素晴らしい作品だと思います。

※参考:『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102428011

「人はなぜ育つか」という問いは、ここで答えるにはあまりに難しい問いですが、あえて一つ答えるとすれば、「愛情のある言葉で育つ」ということが言えると思います。

本日ご紹介する一冊は、そんな父から娘への愛情が伝わる、素晴らしい自叙伝。コシノ三姉妹を育てた「お母ちゃん」、故・小篠綾子さんによる遺作です。

おそらくほとんどの読者が気になるであろう、「なぜ3人ともが世界的ファッションデザイナーになれたのか?」「どんな教育をしたのか?」に対して、著者はこう答えています。

<何もしてません。それはすべて娘たちが自分で決めてやったこと、したいと言ったことをただやらしただけです。私はそれに一度も反対したこともありませんし、ましてや、洋裁をさせるために育てた
ことなんか一度もありません>

ビジネスの成功と教育には、ただ一つ共通点があります。

それは、「信じること」。

本書には、著者を信じ続けた父の愛があり、また娘たちを信じ続けた著者の愛が表現されています。

著者が父から受けた教え、娘たちにかけた言葉、そして娘たちからかけられた言葉…。エピソードも感動的で、じつに読み応えがあります。

奔放な著者の生き方には賛否両論あると思いますが、その生きる姿勢からは、多くを学ぶことができると思います。

気になった言葉をいくつかピックアップしてみましょう。

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私は女に生まれましたが、自分の信ずるまま、心の赴くままに、好き勝手に生きてきました。針と鋏をうまく使えば、女性がこんなにも美しく見える。それがお金になり、生きる力になりました

「好きなことをしたいなら、それだけのことをしてからやれ」というのが父の口癖でした

どうせ作るならと、父のような着物ではなく、その当時流行り出していた洋服のワンピースに仕立てたのです。当時は女の人の大半が着物で、ようやく外国から洋服が伝わって来た頃でした

父に「あかん!」と言われたぐらいで、「はい、そうですか」とやめられるような私の夢やない。こうなったらとことんやると決心し、翌日には妹たちが「やめとき……」と止めるのを振り切って、いつもどおりパッチ屋に出かけました

好きで決めたことは投げ出せない

目に見える愛情はいくらでも示せるけれど、父がしてくれた厳しさは、自分が憎まれてもしてやる愛情でした。自分が辛くても我慢してやってやるのが本当の親の愛情なのだということも思い知らされました。それまでの私は、父がやさしいなんて思った事もありませんし、いつも自分の道を突き進むごとに現れてくる大きな壁にしか思えませんでした。しかし今では、その壁を乗り越える度に、父が私に生きる勇気という魔法をくれていたのだと思えるのです

「見てくれと言っても見本さえも見てくれないのなら、見なくてはならないようにすればいいのだ」(中略)さっそく家に戻り、頼まれもしない洋服の制服を一晩かけて作り、翌日、私はその服を着て、前日の担当者に会いに行きました。「あんた、どこで、その洋服を……」と担当者は私の姿を見ると驚いて目を見張りました。私は自分を持って、「私が作った洋服です。これがお宅の百貨店の制服の見本です」と言ってやりました。その甲斐あって、私は生まれて初めて自分がデザインした洋服を売る、という経験をすることになりました

「薄情も情のうち」

後ろを振り返って、ああだ、こうだと言っても現実は変えられないのだから、前を向いて進む。つまずけば、またそこで考え、前を向いて歩いて行けばい。そんな私を作ったのはもうこの世にはいない父なのだ。だから余計に考えないことにしました……。それが本当の父との別れになったのです

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本書は、2001年10月、小篠綾子さんが88歳の時に書かれていますが、著者はその5年後にお亡くなりになっています。

本当に素晴らしい本を遺してくれたと、著者ならびに当時の編集者に感謝の言葉を述べたいと思います。

読者が女性起業家なら、必読。

読み始めたら面白くて、止まらなくなりました。

起業家、自叙伝好きには、ぜひおすすめしたい一冊です。

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『コシノ洋装店ものがたり』小篠綾子・著 講談社

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◆目次◆

第一章 女にしか出来ないこと
第二章 父と娘の二人三脚
第三章 男と女──夫婦というもの
第四章 別れと出会い
第五章 恋という名のあだ花
第六章 我が子との戦い

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