【生きやすさのヒント】
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お金や地位が絶対的な価値ではなくなった今、人はどうやって住む場所や働く企業を選ぶのか。
ひとつ思ったのは、「居心地の良さ」です。
「物質よりも精神」の時代だからこそ、精神の快適さに重きが置かれる、というのは自然なことだと思います。
そこで本日、手に取って見たのが精神科医・森川すいめいさんによる、『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』です。
この本は、岡檀(おかまゆみ)さんの「自殺希少地域」の研究に触発された著者が、5か所六回、日本の「自殺希少地域」を巡って、それぞれ約一週間前後宿泊したときの記録です。
人間にとって「居心地が良い」とはどういうことか、どうすれば人は生きにくさを感じずに社会生活を営めるのか、重要なヒントが書かれています。
「右へ倣えを嫌う」
「赤い羽根募金の寄付率はとても低い」
「あいさつ程度の付き合い」
「ひとの話をきかない」
次々と自殺希少地域の意外な事実が明らかにされますが、これらはじつは、居心地の良さの条件です。
家族であれ、会社であれ、チームであれ、コミュニティであれ、著者の発見から得られるヒントは多いと思います。
さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。
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希少地域では、隣近所との付き合い方は「立ち話程度」「あいさつ程度」と回答するひとたちが八割を超えていて、「緊密」だと回答するひとたちは一六パーセント程度だった。一方で、自殺で亡くなるひとの多い地域は「緊密」と回答するひとが約四割だった(岡檀『生き心地の良い町』、八四ページ)
何かあるのが当然としてこれを解決しようとする組織は変化に対応できる。変化に対応することを主眼とするから、ルールは最小限になる
嫌いあっても違いがあってもそこにいていいということが前提にある
「派閥があると生きづらいんですよね」
組織内の人間関係がよい組織はメンバーの共通のゴールを目指している
「できることは助ける。できないことは相談する」こうありさえすれば、困ったことがあったひとは孤立しないと感じた
「この町は、バスがバス停以外にも止まる。としよりが乗ることが多いから。としよりはバス停まで来られない」
幸福度が高い地域というのは、男女が平等であることと相関があるという研究報告がいくつかある。世界経済フォーラムの二〇一五年度版の男女平等に関しての調査報告では一四五か国中、日本は一〇一位だった。日本は男女平等ではない
見返りは必要ない。困っているひとを見ると助ける。それが返ってくるとは思っていない。ただ助ける。助けっぱなし。そして、ひとは助けられ慣れている。助けられっぱなし。助けっぱなし、助けられっぱなし、だ。お互いさまなのである
旅先で、たいていの場合は私が精神科医であることは言わない。しかし、自殺希少地域では言わされる。相手に興味がある態度を受けるので、私はあまり心配せずに自分がそうだと言える
彼ら彼女らは、そういう異物との対話にとても慣れている。ひとが多様であることをよく知っているから、みんなと違うものへの偏見が少ない。もう少し言うと、みんなが同じだとは思っていなくて、みんな違うと思っているから、私が精神科医という異なる存在であったとしてもあまり気にされることがない
自殺で亡くなるひとが少ない地域というのは、「自分をしっかりともっていて、それを周りもしっかりと受け止めている地域である」
自殺希少地域のひとたちは対話する
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とある有名小売企業で「チーム作りの達人」と呼ばれている方が、その秘訣を、「相手のことを徹底して知ること」とおっしゃっていましたが、案外、人間関係が上手くいく秘訣というのは、シンプルなものなのかもしれません。
チームやコミュニティの仲間を孤立させないために、すべての人が居心地の良さを感じられる社会を実現するために、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』森川すいめい・著 青土社
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◆目次◆
序章 支援の現場で
第1章 助かるまで助ける
第2章 組織で助ける
第3章 違う意見、同じ方向
第4章 生きやすさのさまざまな工夫
第5章 助けっぱなし、助けられっぱなし
第6章 ありのままを受け入れる
終章 対話する力
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