【エドガー・シャインの問いかける技術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862761712
仕事を通じて、何万人という人に会ってきましたが、人を見る際、ポイントにしているのは、「目上、目下にどう接しているか」です。
目上の人にあまり馴れ馴れしいのも業界的にそぐわないですし、逆に目下に傲慢な態度を取るのもリーダーとしていかがなものかと思います。
となると「謙虚が一番」ということになるのですが、これだけだとどうも具体性に乏しい。
そこで学びたいのが、「謙虚に問いかける」技術。
謙虚に問いかけることで周囲を理解し、周囲からも協力を得ることができると説くのが、本日ご紹介する『問いかける技術』です。
著者は、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院名誉教授のエドガー・シャイン氏。監訳者を、氏のもとで学んだという神戸大学大学院教授の金井壽宏氏が務めています。
コミュニケーションの本にしては抽象度が高く、説明がまだるっこしいかもしれませんが、事例も含め、じっくり読むと多様性の時代に求められるリーダーの態度、コミュニケーションを説いていることがよくわかります。
謙虚に問いかけることで、チームの雰囲気が良くなり、風通しが良くなり、リーダーはメンバーに対して感謝の気持ちが持てる。
ビジネスが軌道に乗り、調子に乗っている時に「謙虚になれ」といっても止まりませんが、「謙虚に問いかける」なら具体的な分、できるかもしれません。
さっそく、中身をチェックして行きましょう。
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世界は今、目に見えて複雑になり、文化の多様性が増し、人々が互いに依存し合うことによって成り立っている。だからこそ、良好な人間関係を育む適切な質問をすることは、きわめて重要である。相手の考えを聞く、その人と互いに尊重し合う気持ちを大切にする、相手は自分が必要とする知識を持っているであろうことに気づく──。こうした心がけがなければ、国籍も職業も経歴も異なる相手を理解することはできないし、ましてや一緒に仕事をしていくことなどかなわない
「謙虚に問いかける」は、相手の警戒心を解くことができる手法であり、自分では答えが見出せないことについて質問する技術であり、その人のことを理解したいという純粋な気持ちをもって関係を築いていくための流儀である
悪い知らせを伝えて上司の反感を買うことを恐れて、高いリスクを孕んだ選択肢を選びとってしまうということが、驚くほど頻繁に組織のなかでは起こっている
質問するという行為は会話の相手に力を与えると同時に、一時的に私を弱い立場に置くことになる
支援を求めやすい風土をつくることは上司の責任になってくる。彼らのほうから部下に力を貸してほしいと言わなければならない
上の立場にいる人がこの流儀を学ぶ過程でもっとも難しいのは、「今ここで必要な謙虚さ」を示せるようになることであり、部下をはじめとする自分よりも地位の低いメンバーに、自分は実質的に頼っているという事実を認識することだ
相手をとるか自分をとるかという選択を迫られた場合、二人にとってどうするのがいいかという視点で考えよう
具体例を尋ねることは、相手の話に対する興味、もっと知りたいという意思、親身になって考えていることなどを示すためにもっとも有効な手段だが、それだけではない。一般論的な発言の主旨を明確にすることができるのだ
たとえ一方的な話し方でも相手に対する純粋な興味から出た言葉であれば、いかなる質問も「謙虚に問いかける」になりうる
◆異なる文化的背景を持つ人が集まるチームの場合
人間関係をこのように築いていく場合、「文化の島」をつくり出す必要がある。「文化の島」とは、権威や信頼関係についてそれぞれの文化が定めるルールは一旦脇に置いておく、という状況だ。これを実現するためには、職場から離れて気持ちを楽にできる場にメンバーを集め、食事や余暇的な活動のように個人的な付き合いを深められる機会を設ける必要がある
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本書は、アメリカ人を想定読者として書かれており、「自己主張の強さ」を前提とする書き方には、違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、日本人が肩書や権威、社会的圧力に弱いのは、著者の想定以上であり、ここに関しては、リーダーが十分警戒する必要があるでしょう。
著者も断っているように、「謙虚に問いかける」には決まった「型」はないため、本書の原則・事例を読みながら実践するしかないでしょう。
リーダー、マネジャーの心構えとして、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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『問いかける技術』エドガー・シャイン・著 英治出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862761712
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◆目次◆
はじめに 良好な人間関係と強い組織を築くために
第1章 謙虚に問いかける
第2章 実例に学ぶ「謙虚に問いかける」の実践
第3章 ほかの問いかけと「謙虚に問いかける」はどう違うのか
第4章 自分が動き、自分が話す文化
第5章 地位、肩書、役割 人々に行動をためらわせる「境界」の存在
第6章 「謙虚に問いかける」を邪魔する力
第7章 謙虚に問いかける態度を育てる
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