【「尾崎牛」が起こしたイノベーション】
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リチャード・P・ルメルト氏の『良い戦略、悪い戦略』に、こんな記述がありました。
※参考:『良い戦略、悪い戦略』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532318092
「古典的な軍事戦略では、防御側は高地をとるのがよいとされている」
「未踏の高地を手に入れる一つの方法は、自前のイノベーションによって作り出してしまうことである」
このイノベーションを生み出すのに有効なのが、新しいコンセプトを創り出し、従来のコンセプトを陳腐化してしまうこと。
その手法をシンプルにまとめた本があったので、本日はそれをご紹介します。
『コンセプトのつくり方』は、電通のクリエーティブ・ディレクターで、コンサルタントでもある山田壮夫さんが、プロの「コンセプトのつくり方」を紹介した一冊。
食べ物好きの著者らしく、事例のほとんどが食べ物のイノベーションで、冒頭では、世界中のシェフが今、注目しているという「尾崎牛」を紹介しています。
従来、和牛は産地ブランドで売るのが当たり前だったところ、生産者の個人名を冠した生産者ブランドを創ったということで、確かに画期的です。
ほかにも、「玉子で世の中を幸せにしたい」と訴える山高食品のケースはじめ、興味深い事例が満載で、どうやって「コンセプト」を世に仕掛けていくか、イメージが湧くと思います。
さっそく、ポイントを見て行きましょう。
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いま世界中のシェフが注目している「尾崎牛」をご存知ですか?
ニューヨークの三ツ星レストランではステーキひと皿に一〇〇〇ドル(!)の値が付き、フランスの名立たる料理人が指名する和牛ブランドです(中略)和牛は「特別な産地ブランド」で売るのが当たり前でした(中略)尾崎牛を育てている尾崎宗春さんの牧場は宮崎県宮崎市にあるので、常識に従えば「宮崎牛」として出荷することになったでしょう。ところがそうせず、個人名を冠した「特別な生産者のブランド」をつくったのです
イノベーションを「ひとの行動・習慣・価値観にもう元に戻れないような変化をもたらすモノ・コト」と定義するなら、「尾崎牛」は黒毛和牛産業におけるイノベーションに成功しました
そもそもぼくたちはコンセプト(概念)がなければ、何ごとも見ることができません。その暗黒の中で「切る食器」というコンセプト(ナイフ)、「刺す食器」というコンセプト(フォーク)、「すくう食器」というコンセプト(スプーン)。それによって初めて他のものと区別し、認識することができます。コンセプトは経験的世界という暗闇から物事を照らし出す「サーチライト」です
LCC(格安航空会社)の先駆けとなった「サウスウエスト航空」のコンセプトは「空飛ぶバス」でした。そしてこのコンセプトによって、この航空会社がやるべきことが直感的に示されました
「最高の料理」はそのままだとどこからどう手をつけていいのかわかりづらいので「最高の食材」「最高の料理人」「最高のキッチン」……など小さな部分に分けていきます
◆「玉子で世の中を幸せにしたい」山高食品のケース
・「玉子好きのためのスイーツがない」という課題を設定
・「玉子にうっとり」というコンセプト
・具体策としては、スペインはアンダルシア地方の郷土菓子「トシーノ・デ・シエロ」というプリンのレシピを導入しました。ふつうプリンは「全卵・牛乳・砂糖」でつくりますが、トシーノ・デ・シエロは「卵黄・砂糖」(少量の水)のみ。とにかく玉子の香りが濃厚で激甘なのです
コミュニケーション軸とマネジメント軸の交差点にある「課題」を「ターゲットの気持ち」として描こう
◆でき上がったコンセプトを待ち受ける「死の谷」
・理解の谷 「間違いなく成功します」と証明できない
・習慣の谷 「いまの常識」の呪縛から逃れられない
・根気の谷 形になるか見当がつかない
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ビジネスにしろ、書籍にしろ、基本的にはコンセプト勝負。
本書は、そのコンセプトの創り方を、電通のクリエーティブ・ディレクターから学べる一冊です。
ぜひチェックしてみてください。
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『コンセプトのつくり方』山田壮夫・著 朝日新聞出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023314846
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◆目次◆
第一章 コンセプトは身体で考える
第二章 こびととつくるコンセプト
第三章 コンセプトをアーカイブしよう
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