2016年5月8日

『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』森岡毅・著 vol.4310

【めちゃくちゃ良い】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041041414

あれは忘れもしない2014年の3月、土井のところに、かつてないタイプのお誘いがありました。

「土井さん、USJを見に来ませんか?」

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン。

当時、最悪の状況を脱し、V字回復を果たしつつあったテーマパークから、突然お呼びがかかったのです。

前日の夜遅くまで予定が入っており、かなりタイトなスケジュールでしたが、面白そうなので参加することにしました。

連絡をくれたのは大手広告代理店の担当者でしたが、もちろん企画したのは彼らではありません。

企画したのは、USJのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、森岡毅さんでした。

森岡さんは、神戸大学経営学部を卒業後、マーケティングで有名なP&Gに入社し、北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表など、要職を歴任した実力派マーケター。

当時、『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』を出版され、そのプロモーションも兼ねて、お招きいただいたというわけです。

※参考:『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041041929

森岡さんは、土井に会うなりこうおっしゃいました。

「大阪と東京の間には、3万円の交通費の川が流れています。これを乗り越えるべく、今準備を進めています」

彼らが用意していたのは、ご存知「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」。

これを起爆剤に、最も集客の落ち込んだ2009年度に比べて、年間で600万人以上来客を増やし、ついに2015年10月には月間175万人を達成、単月であのディズニーランドを超える偉業を成し遂げたのです。

パーク内ツアーをしていて、土井がもっとも感銘を受けたのは、じつは派手なアトラクションではありません。ファミリー客を回遊させる、ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」です。

かつてセガにいた経験から、ファミリー客の単価がどれだけ高いかを知っていたため、「この人は現実をわかっている」と思いました。

ということで長くなりましたが、本日ご紹介する一冊、『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』は、この辣腕マーケター、森岡毅さんが本格的にマーケティングの極意を紹介した一冊。

前作も面白かったですが、今回の作品の比ではありません。

マーケティングに興味のある方、業績アップに興味のある経営者、マネジャーは、絶対に読んでみてください。慎重派の方のために、エッセンスだけご紹介しておきます。

———————————————–

まず、エンターテイメント全体に占める映画の割合が、実は1割しかないという事実があります。世の中の人々の行動の平均値として、何かのエンターテイメントを10回楽しむとすると、映画のコンテンツを見ているのはそのうち約1回でしかないというデータがあるのです。圧倒的な9割は他のことをしているのに、映画ファンだけで1100万人も集客できるわけがないだろうと

そのビジネスを左右する本質である「衝くべき焦点」を「ビジネスのドライバー」と呼びます(中略)ビジネス・ドライバーでないということは、その問題解決にどれだけ注力しても、ビジネスは好転しないということです

「良いものを作れば売れる」時代はすでに終わり、「売れたものが良いもの」という時代がやってきました

◆コントロールすべき消費者との接点
(1)消費者の頭の中を制する
(2)店頭(買う場所)を制する
(3)商品の使用体験を制する

「売上金額」=「売上個数」×「平均価格」=
「消費者の数」×「認知率」×「配荷率」×「購入率」×「平均価格」

◆戦略の4Sチェック
Selective:やることとやらないことを明確に区別できているか
Sufficient:経営資源がその戦局での勝利に十分であるかどうか
Sustainable:立てた戦略が、短期ではなく中長期で維持継続できるか
Synchronized:自社の特徴を有利に活用できているかどうか

戦況分析を本気でやる理由は、市場構造に逆らって確実に失敗する「地雷」を避けるためです。そしてできればその市場構造を自分の味方につけられるような戦略がないかを考えるためです

◆既存ブランドが成長したい時に有効なコアターゲットを発見する6つの切り口
1.ペネトレーション(もし自ブランドの浸透率を伸ばすための「空白地」を見つけることができたならば、それは有力なコアターゲットになる)
2.ロイヤルティ(既存の使用者の中で「SOR(Share of Requirements)」を伸ばせるグループはないか?)
3.コンサンプション(既存の使用者の中で1回あたりの「消費量」を増やせるグループはないか?)
4.システム(既存の使用者の中で使用商品の種類(SKU数)を増やせるグループはないか?)
5.パーチェス・サイクル(既存の使用者の中で購入頻度を上げる(購入サイクルを短くする)理由を作れるグループはいないか?)
6.ブランド・スイッチ(競合ブランド使用者の中にブランド変更の可能性の高いグループはないか?)

———————————————–

「一流のマーケターに要求される仕事は、値上げしながら個数も伸ばすこと」
「マーケターの仕事は、会社のお金の使い道や従業員たちのあらゆる努力を、消費者にとって意味のある価値に繋がるようにシフトさせること」
「マーケティングの最大の仕事は、消費者の頭の中に「選ばれる必然」を作ること、そのための活動を「ブランディング」と呼ぶ」

などなど、マーケティング名言が連発の内容です。

一番すごいのは、本書を通じて行っているご本人のブランディングですが、マーケティングという仕事自体を売りに来ているのがすごい。

しかも、読み手を満足させるべくマーケティングのエッセンスをきちんと伝え、全体を網羅しているのです。

マーケティングの仕事、押さえるべきポイント、実務上の秘訣、さらに生きた事例。しかもその事例が、P&Gの事例や、東京ディズニーランドを破ったUSJの事例という…。

これが面白くないわけがありません。

ぜひ立ち読みでもいいから読み始めてみてください。一気に引き込まれること、うけあいです。

これはひさびさに「買い」の一冊でしょう。

———————————————–

『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』森岡毅・著 KADOKAWA
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041041414

————————————————-

◆目次◆

プロローグ USJがTDLを超えた日
第1章 USJの成功の秘密はマーケティングにあり
第2章 日本のほとんどの企業はマーケティングができていない
第3章 マーケティングの本質とは何か?
第4章 「戦略」を学ぼう
第5章 マーケティング・フレームワークを学ぼう
第6章 マーケティングが日本を救う!
第7章 私はどうやってマーケターになったのか?
第8章 マーケターに向いている人、いない人
第9章 キャリアはどうやって作るのか?
エピローグ 未来のマーケターの皆さんへ

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー