【正しく意思決定するために】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062579537
経営は決断の連続なわけですが、正しく意思決定するためには、自分の認知バイアスを知る必要があります。
人間の脳にはクセがあり、正しく判断できないことが往々にしてあるからです。
本日ご紹介する一冊は、『海馬』『記憶力を強くする』などのベストセラーを持つ東京大学薬学部教授・脳研究者の池谷裕二さんが、二者択一のクイズ形式で、人間の認知バイアスを解説した一冊。
クイズを解いてはページをめくり、認知バイアスについて解説を受けるという構成で、嫌でも自分のバイアスを意識させられる仕組みになっています。
たとえば、4人にそれぞれ40円を配り、好きな金額を「共同預金」に寄付してもらうというケース。寄付した金額は2倍になって共同預金に入り、その後に4等分されて自分に返ってくる、まったく寄付しなければ40円はまるごと自分の所持金になるというルールにすると、決断の速い人と遅い人で違いが出るのです。
さて、どちらが多く寄付したでしょうか?
1.決断の速い人のほうが多額の寄付をする
2.決断の遅い人のほうが多額の寄付をする
答えは、「決断の速い人のほうが多額の寄付をする」で、われわれが思慮深いと思っている熟慮タイプは、じつは自分の利益を優先する人間なのです。
本文の言葉を借りると、「脳は、直感的に即断すればするほど、全体に利する行動を取ります」ということですから、やはり経営者は即断即決が良いようです。
本書にはこのように、興味深いクイズがたくさん用意されており、楽しく読み進めることができます。
クイズは買った後にじっくり読んでいただくとして、ここでは役に立つ知識・教訓をピックアップしてみましょう。
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人は自分のクセに無自覚であるという事実に無自覚です
10秒以内に即断した人は寄付金が平均27円だったのに対し、10秒以上考え込んだ人は平均21円でした。つまり、熟慮するタイプは自分の利益を優先する傾向があったのです
夢や目標をたくさん持っている士官候補生に比べて、単に好きだからやっている候補生のほうが、将校に出世する率が15%ほど高かった
自制心や意志力は、筋力に似て、有限リソースです。がんばった後は、やる気や忍耐力、ときには道徳観さえも削がれます。若い人ほどこの傾向が強いことが知られています
繰り返し学習して頭に叩き込むよりも、テストを解くことでその知識を使ってみるほうが、記憶としてよく定着します
脳は「一回の過ち」を否定されるより、「人間としての本質」を否定されることに抵抗を感じます
「わざわざ遠くまで食べに行くくらいだから美味しいはずだ」と、自分の努力を正当化します
脳は自分をモラルのあるタイプの人間であると自認すると、それを埋め合わせするかのように反モラル的行動を正当化します。だから良い行動をとった後は、「次は少しくらいよいだろう」とモラルに欠ける行動をとる確率が高まるのです
脳は確実性を求めます。確率が0%か100%に近いほどわかりやすく、魅力を感じます。だから、「無毒」と謳う殺虫剤に、より多くの金額を投資します
脳は警告を楽観的な方向に解釈し、起こりうる災害を過小評価しがち
一般に、強者の判断基準は「正誤」「益損」であるのに対し、弱者の判断基準は「善悪」です。両者の価値観はたいてい相容れません
脳は手に入れたものに愛着を感じ、手放すことに抵抗を感じます。新しいものを手に入れる快感よりも、すでに持っているものを失うことへの不快感に敏感なこの傾向を、「保有効果」と言います
モラルの低さは生得的なものではなく、「人よりも上にいる」という特権意識によってもたらされるわけです。さらに「金欲は悪でない」と説明してから実験を行うと、下流階級の尊大ぶりは、現実の上流階級の人よりも劣悪になりました
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もともとは、朝日出版社から出ていた『自分では気づかない、ココロの盲点』に大幅に書き足し、30項目を80項目に増やしたもののようですが、確かに量が増えた分、内容も充実しています。
すべてテスト形式で書かれているので、サクサク読めて理屈がきっちり学べます。(本書の理論によれば、記憶も定着しやすいはず)
友人や家族と一緒に、クイズとして楽しむのもアリかもしれません。
ぜひ読んでみてください。
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『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』池谷裕二・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062579537
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◆目次◆
1.大は小を兼ねる 選択肢過多効果(Choice Overload Effect)
2.思慮深い行動 熟慮の悪魔(The Devil in the Deliberation)
3.麗しきあの方 選択盲(Choice Blindness)
4.候補生は将校の夢を見るか 内発的動機づけ(Intrinsic Motivation)
5.やめられないとまらない リアクタンス(Reactance)
6.我が家の楽園 コントラフリーローディング効果(Contrafreeloading Effect)
7.笑いのツボ ダニング=クルーガー効果(Dunning‐Kruger Effect)
8.高慢と偏見 バイアスの盲点(Bias Blind Spot)
9.聖域なき行動観察 ローゼンタール効果(Rosenthal Effect)
10.ピグマリオン効果(Pygmalion Effect)
11.美味礼讃 記憶錯誤(Paramnesia)
ほか
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