2015年12月7日

『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』 入山章栄・著 vol.4157

【最先端の経営学?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822279324

ビジネス書を読むことの効用はさまざまですが、個人的には「失敗するやり方」を学ぶことのメリットが大きいと考えています。

企業は投資に失敗すれば多額の損失を計上しますし、場合によっては倒産します。

だからこそ、人の失敗を見て「失敗するやり方」を学び、同じことを繰り返さないのが大事なのです。

ただし留意したいのは、それがどれだけ信ぴょう性のある知恵なのか、という視点。

実務家のなかには、学術理論を嫌う方もいますが、学んでおくことで防げる失敗もあるのです。

本日ご紹介する『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』は、タイトル通り、ビジネススクールでまだ紹介されていない経営学の最新知識を紹介した一冊。

なぜ最先端の経営理論がMBAの教科書や「ハーバード・ビジネス・レビュー」に載らないのか、その理屈を説明した後で、経営に使えそうな学術研究を紹介しています。

M&Aが失敗しやすいことや、ビジネスモデルでは「新奇性」が大事なこと、ダイバーシティは必ずしもパフォーマンスにプラスではなく、性別、国籍、年齢などの多様性はパフォーマンスに影響を及ぼさない、もしくはマイナスの影響を及ぼすことなどが書かれています。

さっそく、エッセンスをチェックしてみましょう。

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米インディアナ大学のジェフリー・コーヴィンらが2004年に「ストラテジック・マネジメント・ジャーナル」に発表した研究では、過去のM&Aに関する93本の論文を集計したメタ・アナリシスから、実際に買収企業は業績が下がることを明らかにしました。やはり、M&Aとは一般的に失敗する確率のほうが高いといえそうです

「補完性」と「囲い込み」は、企業価値と統計的に有意な関係を持たない

「新奇性」が高いビジネスモデルの企業は、一貫して高い企業価値
を実現する

「差別化戦略をとって新奇性の高いビジネスモデルを持つ企業」が最も企業価値が高い

企業組織はどうしても「知の深化」に偏り、「知の探索」を怠りがち

パフォーマンスを高めるために大事なのは、「組織のメンバー全員が同じことを知っている」ことではなく、「組織のメンバーが『ほかのメンバーの誰が何を知っているのか』を知っておくことである」

個人がバラバラでアイデア出しをするほうが、ブレストよりも、出てくるアイデアの数(バラエティー)も、アイデアの質も高まる

「真のグローバル企業」の条件を満たしたのは、キヤノンとマツダだけ

「タスク型の人材多様性は、組織パフォーマンスにプラスの効果をもたらす」

「デモグラフィー型の人材多様性」については、ホーウィッツたちの分析では「組織パフォーマンスには影響を及ぼさない」という結果となった。さらにジョシたちの研究では、「むしろ組織にマイナスの効果をもたらす」という結果になった

イメージ型の言葉を使う比率が高い大統領ほど「カリスマ性が高く」、そして「後世の歴史家から『偉大な大統領』と評価されている」

日本最強の後継社長は「婿養子」である

たたみやすさが起業を促す

ハイブリッドからフルタイム起業に移行したほうが、「会社を辞めていきなりフルタイム起業」した場合よりも、そのスタートアップ企業の生存率が3割高い(ラフィーたちの統計分析)

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目からウロコの学術研究がたくさん紹介されており、戦略からマネジメント、チーム作りまで、さまざまな点でこれまでの通念、やり方がまずかったことが示されています。

・大事なのは「情報の共有化」ではない
・「ブレスト」のアイデア出しは、実は効率が悪い
・世界はグローバル化していない

ひょっとしたら、本書をいちばん読むべきなのは、ビジネス書の著者かもしれませんね。

ひさびさにきっちり学んだ感があり、充実の読書となりました。

これは、おすすめしたい一冊です。

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『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』入山章栄・著 日経BP社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822279324

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◆目次◆

Part1 いま必要な世界最先端の経営学
Part2 競争戦略の誤解
Part3 先端イノベーション理論と日本企業
Part4 最先端の組織学習論
Part5 グローバルという幻想
Part6 働く女性の経営学
Part7 科学的に見るリーダーシップ
Part8 同族企業とCSRの功罪
Part9 起業活性化の経営理論
Part10 やはり不毛な経営学
Part11 海外経営大学院の知られざる実態

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