2015年12月23日

『ぼくらの仮説が世界をつくる』佐渡島庸平・著 vol.4173

【『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』の仕掛人】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447802832X

ものすごく売れた本ではありませんが、ゲイリー・ハメルの『経営の未来』という本に、気になる質問が書かれていました。

※参考:『経営の未来』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532313805

その質問とは、<誰があなたの会社を動かしているのですか>というもの。それに対する答えは、以下の通りでした。

<あなたの会社は、二〇世紀初頭に「近代」経営管理のルールや慣行を生み出した人びと、とうの昔に亡くなった少数の思想家や実務家によって、今現在もほとんど動かされているのである>

こういうことに自覚的でない方は、誰かが作ったルールの上で努力するしかない人、一方でこれまでのルールやシステムに疑問を持ち、新たな仮説を持って挑む人が、「起業家」と呼ばれる人たちです。

本日ご紹介する一冊は、1600万部超の大ヒット作『宇宙兄弟』や、同じく600万部超のヒット作『ドラゴン桜』を手掛け、出版業界のコンテンツ流通の仕組みを変えようと目論む、株式会社コルクの佐渡島庸平さんが、その出版論、コンテンツ論を語った一冊。

出版不況の原因を流通に求めたり、作家が直接読者に売る可能性を模索したり、じつに興味深いコンテンツ論が展開されています。

ヒットメーカーのノウハウとして読んでも面白いですが、何と言っても、起業したてのエネルギーが伝わってくるのがいい。

読んでいて、11年前、出版業界を変えようと殴り込んできた自分の若い頃を思い出しました。

さっそく、本書の中からエッセンスを拾ってみましょう。

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昨今の出版不況は、作品の質が落ちているせいで起きているわけではなく、本について、語る場、語る習慣がなくなってきているのが原因なのではないか。ドイツの詩人シラーは、「友情は喜びを2倍にし、悲しみを半分にする」と言っていますが、この言葉は永遠の真理です

物理的な距離を縮め、効率的にするITサービスは、どんどん開発されている。その一方で、心的な距離を縮めてくれるサービスはまだほとんどないのではないでしょうか

「女性読者が増えると、『宇宙兄弟』がヒットし始める」という仮説を立てた(中略)「女性がよく行くところで、影響力がある場所はどこだろう?」と考えていたときに、ふと「美容室だ!」と思い浮かんだのです(中略)「オシャレな人」と認める美容師さんから、「このマンガおもしろいよ」と勧められたら、きっと読んでくれるだろうと考えたのです

強烈な個性を持っている作家がいれば、「世間をその作家に合わせる」ように仕向けるべき

「いい作品とは、新しい定義を生み出すことができるもの」。これがぼくのいい作品の「定義」というわけです。たとえば受験マンガの大ヒットとなった『ドラゴン桜』を作るときには、「教育の再定義をしよう」と考えました

「真の友情」や「濃密な絆」をテーマとしたマンガにすると、ヒットするのではないか

作家も、本というプロダクト一つではなく、そのまわりに付随するすべてを、誠実にパブリッシュしていくことが、求められていく

映画はヒマだからふらっと観に行くものではなく、「予定を立ててわざわざ観に行くもの」になっている

すべては「コース料理」から「アラカルト」へ

これからはサービスごとにユーザーが棲み分けされた、渋谷や新宿や銀座のような街がインターネット上にもできてくる

おもしろさというのは<親近感×質の絶対値>の「面積」だった

モノではなく作品として扱ってもらうためにも「作家が読者に対して直に売る」仕組みを作ることが重要になります。作家から直接買う作品を、誰もモノだとは考えないからです

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「人は40歳を超えたら、若い人から学ばなければならない」と、最近は思っていますが、本書はまさに若い人ならではの視点に刺激される一冊です。

コンテンツ業界に携わる人、作家として成功したい人、熱い起業論が読みたい人は、ぜひチェックしてみてください。

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『ぼくらの仮説が世界をつくる』佐渡島庸平・著 ダイヤモンド社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447802832X

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◆目次◆

はじめに 大航海時代が始まった
第1章 ぼくらの仮説が世界をつくる 革命を起こすための思考アプローチ
第2章 「宇宙人視点」で考える 本質を見極め常識を打ち破るための思考法
第3章 インターネット時代の編集力 モノが売れない時代にぼくが考えてきたこと
第4章 「ドミノの1枚目」を倒す 遠くのゴールに辿り着くための基本の大切さ
第5章 不安も嫉妬心もまずは疑う 「先の見えない時代」の感情コントロール
第6章 仕事を遊ぶトムソーヤになる 人生を最高に楽しむための考え方
おわりに 仮説を実現する冒険に出よう

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