【注目・心理学の新理論】
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世の中には、人間の認識や思い込みとはまったく違う真実がある。
学術書や科学書を読むのは、まさにその思い込みを排除するためです。
本日取り上げる思い込みは、われわれが完全に自分のコントロール下で思考し、決断していると思っていること。
ここに真っ向から異議を唱えたのが、本日ご紹介する一冊、『赤を身につけるとなぜもてるのか?』です。
この本、じつは心理学の新理論である「身体化された認知」(Physisal Intelligence)を取り扱った希少な一冊で、テルアビブ大学社会科学部心理学科教授のタルマ・ローベルさんが書いています。
本書によると、われわれは理性で考えているようでいて、大部分、視覚や聴覚や嗅覚の影響を受けています。
その結果、温かいカップを持つと他人が親切に見え、赤い色を見るとテストの成績が悪くなり、重いものを持つと物事を重要と感じるのです。
タイトルにもなっている『赤を身につけるとなぜもてるのか?』は、赤い色に対する人々の評価から来ているもので、調査によると、<男性客は、赤いTシャツのウェイトレスに、ほかの色をしたウェイトレスより多額のチップを渡す傾向があった>そうです。(女性客には、そのような傾向は見られなかった)
色や光、手触り、温度によって人が好印象を持ったり、多く購買することがわかっており、これはぜひ学んでおきたいところです。
さっそく、気になるポイントをチェックして行きましょう。
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温かい飲み物を持たされた人は、冷たい飲み物を持たされた人より、その知人との関係を親しいと答える傾向があった
部屋の気温が何度くらいだと思うか? この問いに関して、排除された経験を思い出した人は、受け入れられた経験を思い出した人より低い音頭を答える傾向があった。回答の平均は、前者が摂氏二一・四度、後者が摂氏二四度だった。同じ部屋にいたのに、これだけの違いがあらわれたのである
ゲームで疎外感を味わったグループは、そうではないグループに比べて、温かいものを好む割合が格段に多かった
ソファに座ると交渉姿勢も柔軟になる
一つの実験では、通りかかった人を呼びとめ、履歴書を見て求職者に評価をくだすよう求めた。履歴書は全員に同じものを見せたが、半分の人には重さ三四〇グラムほどのクリップボードに挟んで渡し、半分の人には重さ二キロあまりのクリップボードに挟んで渡した。すると、重いクリップボードのグループのほうが求職者の能力を高く評価し、応募動機が真剣だと判断する傾向があった
重大な秘密を隠している人は、物理的に重いものを持っている人と似たような行動を取ると結論づけられた
赤色を見るとテストの成績が下がる
男性客は、赤いTシャツのウェイトレスに、ほかの色をしたウェイトレスより多額のチップを渡す傾向があった
黒のユニフォームを着たグループは、白のユニフォームのグループより攻撃的なゲームを選ぶ傾向が見られた
人は暗い部屋にいると不正に走りやすく、明るい部屋にいれば不正をする確率が低くなるのである
パーソナルスペースを侵されると個性をアピールしたくなる
縦線が長い組織図を見せられたグループは、縦線が短い組織図を見せられたグループに比べて、社長の力が強いと感じていた
自分を強く見せたいときは、実際には半分しか飲まないとしても、大きなサイズのコーヒーを買うほうが得策だろう
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この学問による知見は、たとえば疎外感を味わった人を物理的に温めると感情が改善されるなど、物理的アプローチが精神面に効く、という事実を示しており、じつに興味深い。
かつてベストセラーとなった『なぜこの店で買ってしまうのか』を思わせる内容で、データが本当に興味深い。
※参考:『なぜこの店で買ってしまうのか』
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店頭のマーケティングや職場の改善にも使える視点が満載ですので、ぜひ買っておきたいところです。
これは読み応えある一冊です。ぜひ読んでみてください。
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『赤を身につけるとなぜもてるのか?』タルマ・ローベル・著 文藝春秋
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◆目次◆
はじめに 五感が操る私たちの世界
第1章 温度──アイスかホットか
第2章 手触り──商談に勝つ椅子、負ける椅子
第3章 重さ──バックパッカーが旅に魅せられる理由
第4章 赤 その1──赤ペンの使用を禁じた学校
第5章 赤 その2──赤を身につけるとなぜもてるのか?
第6章 光──冬になるとなぜ気持ちが沈むのか?
第7章 空間 その1──感情的な交渉と論理的な交渉
第8章 空間 その2──選挙に勝つと背が高くなる?
第9章 浄め──心の汚れは除菌シートで落ちる
第10章 匂い──あの店ではなぜ財布のヒモが緩むのか?
最終章 閃き──グーグルのオフィスは何が違うのか?
おわりに 身体化された認知があなたの人生を変える
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