【これは力作!】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150504296
中国、東南アジア、インド、アフリカ…。
ここ十数年は、新興国の急激な成長に話題が集まりましたが、果たしてこの成長はいつまで続くのか? 次に発展するのはどの国なのか?
おそらく、知りたい投資家、ビジネスパーソンは多いと思います。
そこでおすすめなのが、本日ご紹介する『ブレイクアウトネーションズ──「これから来る国」はどこか?』。
モルガン・スタンレーで新興国市場を担当する投資のプロが、新興国の成長性を見る視点、次に躍進する国の候補を挙げた、じつに興味深い論考です。
一人当たり国民所得が4000ドル以上に達すると成長率が鈍化するという「4000ドルのバリア」、ある経済指標があまりにも普及すると、その予知能力が失われるという「グッドハートの法則」、農業セクターの余剰労働力が底をつき、都市部の賃金に悪影響を与える状態を意味する「ルイスの転換点」、人件費と輸送費に影響を与えるインフラへの投資率、第一都市と第二都市の人口の差…。
新興国を見る際のポイントがわかる、じつに知的な論考でありながら、各国の分析も載っており、実用的な内容。
「中国が内需主導により、これからも成長を続ける」という主張はなぜあやしいのか、インド経済の成長阻害要因はどこにあるのか、経済が加熱しているブラジルの真の問題点はどこにあるのか、急成長したロシアの課題は何なのか、なぜトルコ、インドネシアが有望なのか、なぜアンゴラの市場開放が注目されているのか…。
ここまで詳しく新興国を分析した本は、他に類がありません。
重要ポイントが多すぎて、赤ペンだらけになりましたが、さっそく、かいつまんでポイントを見てみましょう。
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実のところ、中国の個人消費は、急激な経済成長への期待を背景に二桁近くの成長を続けてきたため、もはや伸びようのない自然障壁となっている
この一〇年で中国の経済成長の原動力となったのは設備投資で、GDPの三五%から五〇%近くまで拡大した(中略)投資対象はもっぱら道路、橋、港など、中国を世界最大の輸出国に変えるために必要なインフラで、その結果、中国の世界輸出市場に占めるシェアは、この一〇年で一〇%へと倍増した。このような散財が長続きするはずはない。中国政府は二〇一〇年までに投資拡大ペースの削減計画を打ち出す
新興国が自国に費やすお金が少なすぎる場合の大きなリスクは、インフレ率の急騰である。投資資金が干上がると、国は、次第に豊かになってきた中流層の望む製品を作ったり運んだりするための新たな工場や道路に、十分な資金をつぎ込めなくなる。供給が需要増に追いつけず、値上がりが始まる。ビジネス環境が不安定だと投資が反転するはずもない。何と言っても政府におけるえこひいきと汚職ほど不安定な要素はないのである。だからこそ、汚職はインフレ要因なのだ
成長率が高いのは、ブラジルの主要コモディティ輸出品の価格が値上がりした時だけなのだ。これでは、とうていこの国を「台頭する経済国」とは言えまい
ブレイクアウト・ネーションを見極めるにあたって外せない重要ポイントの一つは、その国の「第二の都市」の規模や成長率が、「第一の都市」と比較してどうか? という点である。どのような大国でも、国で二番目に大きい都市は、たいていは最大都市の少なくとも三分の一から半分ぐらいの人口を擁している
アフリカ第二の産油国アンゴラは、経済規模が一〇〇〇億ドルもあるにもかかわらず、証券取引所がないため、フロンティア市場とすら見られていない。しかし、こうした分類は、すぐにでも変わるかもしれない。というのも、アンゴラが市場を開放するという話は、何年も前から話題になっているからだ。もしそうなれば、市場がオープンになった初日から、国内外の投資家の間では大反響が起きるだろう
中国のGDPの世界シェアは一〇%だが、贅沢品売上高のシェアは二〇%
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450ページを超える厚い本にもかかわらず、ワクワクする内容で、まったく厚さを感じさせませんでした。
もともと、2013年に単行本として出ていたものを文庫化したらしいのですが、なぜかこんな素晴らしい本を見逃していました。
ビジネスパーソンが世界経済を見る目を養うのに、これほど素晴らしい本はないと断言できます。
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『ブレイクアウトネーションズ』ルチル・シャルマ・著 早川書房
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150504296
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◆目次◆
プロローグ
第一章 長い目で見れば何でも正しい?
第二章 宴の後──中国
第三章 誰もが驚く魔法のロープ──インド
第四章 神様はきっと、ブラジル人?──ブラジル
第五章 「大立て者」経済──メキシコ
第六章 天上にしかスペースがない──ロシア
第七章 ヨーロッパのスイート・スポット──ポーランドとチェコ
第八章 中東に響く単旋律──トルコ
第九章 虎への道──東南アジア
第十章 金メダリスト──韓国と台湾
第十一章 エンドレス・ハネムーン──南アフリカ
第十二章 第四世界──スリランカからナイジェリアまで
第十三章 もうひとつの宴の後──コモディティ・ドットコムを越えて
第十四章 「第三の降臨」──次なるブレイクアウト・ネーションズ
エピローグ
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