2015年4月20日

『トヨタ生産方式の逆襲』鈴村尚久・著 vol.3926

【トヨタ生産方式による、現場指導実例】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166609688

日本企業の影響力が弱まり、いまや米ビジネススクールのケースで取り上げられるのは、トヨタだけ。

従来通りのやり方でやっているはずなのに、なぜ日本のメーカーは勢いを失ってしまったのでしょうか?

その原因はおそらく、ビジネスで最も大事な「お客様」を忘れてしまったからだと思います。

どんなに素晴らしい機能も、生産システムも、「お客様の役に立つ」という視点なくしては、価値と結びつかない。

本日ご紹介する一冊は、その原点に立ち返らせれくれる、素晴らしい一冊です。

著者は、トヨタ生産方式の「生みの親」大野耐一氏の片腕として活躍した鈴村喜久男氏の息子で、自身もトヨタに入社し、経理部、第2購買部、産業車両部、生産調査部、販売店業務部、国内企画部を経験。現在は、独立してコンサルタントを務めています。

本書は、著者がトヨタ生産方式のコンサルティングを通じて得た気づきや、大幅に改善したクライアント企業の事例、そしてトヨタ生産方式の本流のノウハウをまとめたもの。

単なる生産の合理化にとどまらず、どうすれば顧客価値が増大するのか、その本質的な部分をとらえ、顧客価値を実現するための生産を論じています。

著者によれば、消費者がモノを買うのは、概ね次の三つの理由から。

1.機能やブランドを評価し、気に入って買う
2.価格が安いので買う
3.欲しい時にぴったりのタイミングなので買う

このうち、あまり重視されていない3の「タイミング」を活かした販売と生産を心掛ければ、利益が増えるというのです。

著者の言葉を引用すると、<納期を短縮してタイミングで売る発想があれば、国内生産でも収益率を維持するどころか、上向きにすることも可能><お客が求める納期に即座に対応できる能力。それは価格競争力よりも「武器」になる>のです。

本書では、誤解されている「ジャスト・イン・タイム」(=在庫ゼロ)ではなく、あくまで顧客価値を重視して時には在庫を持つことの重要性を強調。

そして、武器としての「ストア」の設置を推奨しています。

「製品ストア」を設置し、そのストアにどの商品を何個置くのか、1日当たりの出荷予定は何個なのかを明示させれば、今、何日分の製品在庫があるのかが、明らかになる。

これがわかることによって、後補充もスムーズに行くのです。

本書には、この考え方で成功した事例がいくつも載っており、なかでも「コープさっぽろ」の例は、顧客価値を高めた事例としてわかりやすいので、紹介しておきます。

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◆「コープさっぽろ」の当初の問題点
・午後4時までに各店舗から集めた注文情報に対して、翌々日の朝に1回、工場から開店前に商品を届けるシステム
・注文から納入まで、要する時間は40時間以上

◆著者の取り組みとその後の成果
<最大のポイントとなったのは、物流体制の改革でした。店舗への配送を、朝のみの1回から、朝・夕の1日2回に改めるように指示しました>
<改善当初、2回配送をすれば物流費が高くなると抵抗を受けましたが、「物流コストは上がっても、結果としてそのコスト増を上回る収益が必ず出る」と私は説得を続けました>
<豆腐や惣菜のような生ものは、つくりたての方が美味しいので、配送回数が2回になれば鮮度のよい商品が店頭に並び、顧客の評価が高まるのは当然です>
<案の定、多目に注文し過ぎて廃棄する商品が減少すると同時に、顧客の評価を得て売り上げが上がりました。豆腐だけで年間1500万円分廃棄していたのがほぼゼロになりました>

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配送回数を2回にすることで、廃棄ロスが減り、顧客満足度が上がった。素晴らしい事例ですね。

やはり利益はお客様満足とコストとの間に宿るもので、どちらか一方だけ考えるのは得策ではありません。また、コストに関しても、一面的な見方だと全体を見失います。

本書には、このような素晴らしいケーススタディがたくさん載っており、経営改善の良いヒントとなります。

ぜひ読んでみてください。

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『トヨタ生産方式の逆襲』鈴村尚久・著 文藝春秋
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166609688

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◆目次◆

第1章 「常識」を疑い、パラダイムを変えよ
第2章 「タイミング」を売れ!
第3章 顧客ニーズと生産体制のマッチ
第4章 「サラダ理論」で需要予測とオサラバしよう
第5章 ホワイトカラーという「魔物」
第6章 下請けを巻き込んで効率的なモノ造りを
第7章 短納期こそ最大の顧客満足

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