【起業家・三木谷浩史を追う迫真のルポ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532319633
本日の一冊は、年間流通総額2兆円、会員数9400万人、球団ビジネスも成功させた楽天創業者・三木谷浩史氏の軌跡を、日本経済新聞社編集委員がまとめた一冊。
ファーストペンギンというのは、リスクをおかして飛び込む最初のペンギンのことで、著者はリスクを取らない現在の日本を、こう言って嘆いています。
<戦後の日本には、ファースト・ペンギンが何羽もいた(中略)今や日本のファースト・ペンギンは絶滅危惧種となり、ほとんどの日本人が氷の上で立ち竦んでいる>
そして、かつて存在したファーストペンギンの代表、本田宗一郎のこんな言葉を紹介するのです。
<日本人は、失敗ということを恐れすぎるようである。どだい、失敗を恐れて何もしないなんて人間は、最低なのである>
ルポルタージュ形式でジャーナリストが書いているため、経営のノウハウがわかるわけではないのですが、楽天が現在の成功を収めるまでのさまざまな局面と、その裏に隠されたエピソード、関係者のやり取りを上手にまとめています。
ケーススタディとして、またノンフィクションとして読み応えがあり、自分が経営者だったら、ヘッドハントされる側だったらなどと、自分を投影しながら読むことができました。
なかでも勉強になったのは、三木谷さんの人材の口説き方。
できる経営者は概してこれが上手いものですが、本書に書かれている口説き文句は、群を抜いています。
実際に口説かれた島田亨氏(楽天球団元オーナー、インテリジェンス創業メンバー)によると、「あの人は僕らの前に、どうしても遊びたくなる玩具をぶらさげるんですよ。我々のような人種は、それを見ると、つい飛びついてしまう」のだとか。
いろんな口説き文句が登場しますが、なかでも印象に残ったのは、興銀志望で就職活動をしていた本城氏に三木谷さんが語った以下の言葉です。
「興銀で学ぶことも多いと思う。でも、これから世の中を変えるのは銀行や商社じゃない。個人だよ。個人が積み重ねる『既成事実』が世の中を変えるんだ」
やはり経営者にとって大切なのは、自身の志とそれを周りに伝える言葉の力。
下手なノウハウよりずっと読み応えがあり、じつに充実した読書となりました。
これはおすすめの一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「仮説、実行、検証、仕組化」とは、三木谷が日ごろのビジネスで唱えている「成功のコンセプト」の一つである。楽天を日本最大のネット企業に導いたビジネスの手法は、プロ野球でも立派に通用した。三木谷はそう言いたかったのだ
「金の力ではなくマネジメントの力でイーグルスを優勝させる」
それが三木谷の信念だった
インテリジェンスの上場益などで一生食うに困らない金を手にしていた島田は「何で今さら、そんな火中の栗を……」と思ったが、隣で聞いていた江幡は「絶対に引き受けろ」と肘で島田をつついた。「球団の社長なんて、やりたくてもできる仕事じゃないぞ」。そう言われてみれば、そんな気もする。島田の頭にリクルート時代に教えられた言葉が浮かんだ。「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」リクルート創業者、江副浩正の言葉である
一騎当千の彼らは、カネや働く場所に困って楽天に来たわけではない。むしろ報酬でいえば、前の職場より減った役員がほとんどだろう。一方で仕事量はべらぼうに増えている(中略)それでも彼らが三木谷の下に集う理由を、島田はこう説明する。「あの人は僕らの前に、どうしても遊びたくなる玩具をぶらさげるんですよ。我々のような人種は、それを見ると、つい飛びついてしまう」
メリルリンチの同僚や上司からは「気は確かか」と呆れられた。確かに給料はメリル時代に比べ、一桁下がる。それでも立花が島田の後を継ぐことにしたのは、三木谷に惹かれたからだ。立花は言う。「三木谷さんって、宿澤さんに似てるんですよ」宿澤広朗。現役時代は「天才スクラムハーフ」と呼ばれ、ラグビー日本代表の監督も務める傍ら、本業の銀行員としても三井住友銀行の専務執行役員にまで上り詰めた伝説的な人物である。2006年に登山中に心筋梗塞を起こし、55歳の若さで急逝した(中略)宿澤はカネより男気で仕事をするタイプだ。負け戦が続く邦銀に踏みとどまって「日本を何とかしよう」とあがいていた
「日本人は、失敗ということを恐れすぎるようである。どだい、失敗を恐れて何もしないなんて人間は、最低なのである」(本田宗一郎)
企業としての金融リテラシーと実務の処理能力が高いから、異常なまでのハイペースでM&Aを続けることができる。それが楽天の成長を支えている
興銀志望で就職活動をしていた本城に興銀OBの三木谷はこう言った。「興銀で学ぶことも多いと思う。でも、これから世の中を変えるのは銀行や商社じゃない。個人だよ。個人が積み重ねる『既成事実』が世の中を変えるんだ」
他人と違っても、前例がなくても、正しいと思ったことは主張し、行動すべきである。それが三木谷家のルールだった
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『ファーストペンギン 楽天三木谷浩史の挑戦』
大西康之・著 日本経済新聞出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532319633
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◆目次◆
第1章 天国と地獄 イーグルス優勝と二重価格問題
第2章 ファースト・ペンギン 失敗を恐れるな
第3章 電撃的連続買収 世界よ、これが楽天だ
第4章 冒険者たち ネット世界一の旗の下に
第5章 受け継がれるDNA 創業世代から新世代へ
終章 ファースト・ペンギンの育て方
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