2014年8月27日

『<わたし>はどこにあるのか ガザニガ脳科学講義』マイケル・S・ガザニガ・著 vol.3690

【世界的権威が語る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314011211

本日の一冊は、米国認知神経科学研究所の所長を務め、認知神経科学の父とも言われる世界的権威、マイケル・S・ガザニガによる講義。

英国スコットランドの伝統ある一般公開講座「ギフォード講義」で語られた内容をもとにまとめられた論考で、われわれの脳や「意識」の問題に切り込んだ、興味深い内容です。

本書によると、右脳は推論が苦手で、物事を額面通りに受け取るのに対して、左脳は推論をしたがり、ときにナラティブにしようと、間違った推論を打ち立ててしまうそうです。

<パターン不在の証拠を突きつけられてもなお、構造性の仮説を立てずにはいられないのが左半球だ。この衝動はとても強力で、かえって不利に働く状況でもつい顔を出す──だから人はスロットマシンで勝てないのである>

本書では、われわれがなぜミスをしてしまうのか、どうすれば社会的に良い関係を築き、幸せに暮らせるのか、さまざまなヒントが書かれています。

・意識が介入して、よけいな時間がかかると「へま」が起こる
・決定論的な文章を読むと攻撃的な傾向が強まり、他者への親切心が薄れる
・幸せな表情はつねに模倣される

◆社会関係を築くために求められる認知能力
(1)視覚情報を解釈して他者を認識する
(2)人の顔を覚えられる
(3)誰と誰が知りあいか覚えている
(4)情動的情報を処理できる
(5)複数の人間関係の情報を一元的に処理できる

「意識」の働きを知り、「自分」を正しく知ることで、仕事も人間関係もうまくいく。

ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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左脳にはインタープリター・モジュールと呼ばれるモジュールがあって、脳に入ってくるすべてのインプットを受けとり、「語り(ナラティブ)」を構築する

意識が介入して、よけいな時間がかかると「へま」が起こる

ヒト以外の動物は、過去に最も多く起こったほうをつねに選ぶ。それが「マキシマイザー」だ

右半球はものごとを額面どおりに受けとり、正確に記憶するのに対し、左半球はよく似たものを同じだと思いこみやすい

あなたが誇りに思っているあなた自身は、脳のインタープリター・モジュールが紡ぎだしたストーリーだ

痛いと感じたから指を引っこめたことにするほうが理にかなっているから、タイミングを勝手に変えたのである。インタープリターは、意志的に行動した当人が満足するストーリーにしてくれるのだ

決定論的な文章を読むと攻撃的な傾向が強まり、他者への親切心が薄れる

◆社会関係を築くために求められる認知能力
(1)視覚情報を解釈して他者を認識する
(2)人の顔を覚えられる
(3)誰と誰が知りあいか覚えている
(4)情動的情報を処理できる
(5)複数の人間関係の情報を一元的に処理できる

すべての情動反応が等しく模倣されるわけではないことは、最近の実験で明らかになっている。幸せな表情はつねに模倣されるが、否定的な感情は模倣される人物による

脳に影響を及ぼす要因は無数にあり、その結果がスキャン画像にも現われる──カフェイン、煙草、アルコール、薬物、疲労、適応戦略、月経周期、汚染物質、疾病、栄養状態など

処罰を決定する段階になって情動関連の領域が活発になった

最後通牒ゲームでわかったように、人は自分が損してでも非協力者を懲らしめようとする。一回きりのゲームだからといって容赦はしない。それに懲罰が行なわれないと、集団の大小にかかわらず「ただ乗り」する者が出現し、協力関係が破綻することは理論モデルと実験的証拠の両方で立証されている

責任とは何かを突きつめれば、それは脳の特性ではなく二者間の契約である。その文脈のなかでは決定論は何の意味も持たない

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『<わたし>はどこにあるのか ガザニガ脳科学講義』マイケル・S・ガザニガ・著 紀伊國屋書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314011211

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◆目次◆

第1章 私たちのありよう
第2章 脳は並列分散処理
第3章 インタープリター・モジュール
第4章 自由意志という概念を捨てる
第5章 ソーシャルマインド
第6章 私たちが法律だ
第7章 あとがきにかえて

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