【江戸時代のカリスマ出版プロデューサー、蔦屋重三郎とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4054059724
本日の一冊は、喜多川歌麿、東洲斎写楽を見出し、朋誠堂喜三二、山東京伝らの黄表紙・洒落本で知られる江戸時代の出版人、蔦屋重三郎を扱った歴史小説。
普段、あまり歴史小説は読まないのですが、今回はテーマが出版ということもあり、即座に完読。
結論から言うと、「大当たり」でした。
話は、店仕舞いを覚悟していた日本橋の地本問屋・豊仙堂の主人、丸屋小兵衛が蔦屋重三郎に雇われるところから始まります。
『吉原細見』で当てた蔦屋が、次々とヒットを飛ばし、江戸をあっと言わせる様は、見ていて痛快です。
歌麿が描いた虫の絵の入った狂歌集、松平定信の政治を揶揄し、大問題となった草双紙、そしてそれらを売るための斬新な手法…。
一人の天才を軸に繰り広げられる人間ドラマ、そして出版人としての鋭い視点・手腕に、思わず釘付けになりました。
「仕事は何のためにあるのか」と悩みながら凡百の自己啓発書を読むより、本書を一冊読むほうが、はるかに人生にプラスのインパクトがもたらされると思います。
ぜひ、読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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金儲けのためなんかじゃない。ましてや功名のためでもない。遥かに年上の彫物職人に『なんでこんな手のかかることをさせるんだよ、これだから問屋様は困るんだ』と文句を言われ、彫り師たちに『こんな馬鹿な思い付きに付き合わされる暇はねえんだけどな』と皮肉を言われながらも、結局新しいものを作ったのは──。自分が、どうしても納得いかなかったからだ
重三郎の店・耕書堂は吉原の中にある。売っているのは『吉原細見』だ。『吉原細見』とは、吉原の中にある店やそこで年季を過ごしている遊女たちの格付けが載っている案内のことである。かつてはいくつもの本屋が似た趣向のものを出していたが、蔦屋版のそれの人気は群を抜いていて、気づけば蔦屋の独占稼業になっていた。それもそのはず、蔦屋版のそれは吉原の全てを網羅していた上、さらには番付まで載っている。これを吉原で買えばそれだけで通ぶれる、そんな本だった。『吉原細見』には案内本であるというだけではなく、もう一つの意味合いがあった。吉原に行って来た記念に、とお土産代わりに買われる商品の一つだったのだ
「ええ、あいつはまったく自分のことを疑ってねえ。たぶん、漠然と俺はいつか芽が出るんだ、って信じてるんじゃないかね。ああいう奴は将来化ける」
「これを沢山刷りました。吉原で撒いてみたいなあと思ってます」
「へえ、これを? こんなきれいなものを無料で撒いちゃうの? もったいない」
「いえね、今回、この狂歌集で随分儲けてるんで、この引札でさらに客を呼び込もうかって。面白いでしょう」
「ああいう、本は読まないけれども作り話が好き、っていう人たちを戯作の世界に引きずり込めれば、相当の売り上げが期待できるんじゃないでしょうか」
重三郎は、懐からある紙を取り出した。その紙を広げると、重三郎はその内容を詠んだ。
「白河の 水の清きに すみかねて 元の田沼の 池や恋しき」
人はそうは変わらない。人間は色を好む。そしてそれと同じくらい、金を好み絵空事の物語や絵を好む。このどうしようもない世の中から逃げ出したい人々が物語や絵を見やって溜飲を下げるのは摂理のようなものだ。それを否定するなんて誰もできはしない
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『蔦屋』谷津矢車・著 学研マーケティング
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◆目次◆
特にないので割愛します。
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