2014年4月7日

『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』 カレル・フェラン・著 vol.3548

【問題作の登場です。】
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名著『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』に、ホットドッグ・スタンドを経営する、ある老人の経営者のエピソードが出てくるのですが、みなさま覚えておいででしょうか?

※参考:『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN4102428011

ニューブランズウィック州にある、その老人のおいしいホットドッグの噂は数マイル四方に知れわたっており、経営には何の問題もないかのように見えました。

老人は客を戸口の前でにこやかに出迎え、ホットドッグを勧める。パンは焼きたて、薬味のピクルスは歯ごたえがよく、マスタードの風味は絶妙で、玉ねぎの煮えぐあいもぴったり。それを笑顔で差し出すウェイトレスも感じがいい。

そこに、ハーバード大学で経営学の修士号と経済学の博士号を取った息子が帰ってきて、こう言うのです。

「なんということだ、父さんにはいまがひどい景気の後退期だということがわからないんですか? コストの削減が必要です! 広告板の使用をやめ、宣伝費を浮かせましょう。六人の人員は二人にして労働費用を節減しましょう。父さんは道路わきで時間を無駄にしないで、調理を受け持つのです。仕入れ先には、安いパンやソーセージをよこすように言いましょう。マスタードとピクルスは安い品に変え、玉ねぎはいっそのこと抜きましょう…(以下省略)」

結果、店には閑古鳥が鳴き、二カ月後、帰ってきた息子に商売の調子はどうかと聞かれ、老人はこう言うのです。

「おまえの言うとおりだった! たしかにとんでもない不景気時代だよ」

これは、MBAや経営コンサルタントを揶揄した話ではありません。このエピソードを受けて、著者のキングスレイ・ウォードはこう解説するのです。

「わかるだろうか、老人は企業家だったが、ある限界があった。彼は客の求めるものがわかっていた。ほんとうの企業家であるための基本的な資質のなかで、彼に欠けていたのはただひとつ、自分の信念を守る勇気だった」

……長々と紹介しましたが、ここでやっと本日の一冊の登場です。

本日の一冊、『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』は、気鋭のコンサルタントが大手コンサルティングファームの内情を明かし、全米のビジネス界を騒然とさせた一冊。

経営コンサル依存症の経営者に、警鐘を鳴らす一冊ということで、がぜん注目が集まる内容です。

著者は、マサチューセッツ工科大学および同大学院を卒業後、デロイト・ハスキンズ&セルズ(現デロイト・トウシュ・トーマツ)、ジェミニ・コンサルティング等で戦略、オペレーション、組織開発、IT分野のコンサルタントとして活躍し、その後ファイザーのコンシューマー部門のアジア太平洋地域のIT担当マネージャー、J&Jのコンシューマービジネス部門のオンラインマーケティング担当マネジャーを務めた人物。現在はオペレーティング・プリンシパルズ社の共同設立者として活躍しています。

本書は、そんな著者が見た、大手コンサルティングファームの無意味なサービス(ときに経営を悪化させる)と、現場の実態にそぐわない提案、また、コンサルタントが頼りがちな理論、ールの限界を明らかにした一冊。

タイトルは過激ですが、経営者に自分の頭で考えることの大切さ、実行する前に熟慮することの大切さを説いた内容で、意外とバランスの取れた内容でした。

巻末についている、「危険なコンサルタントの見抜き方」は、経営者、コンサルタントともに要チェックの内容です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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この数十年、企業のリーダーたちは「どうしたらわが社はビジネスを通して人びとの暮らしをもっとよくするために貢献できるか」という重要な課題に取り組もうとせず、あまり意味のない問題にばかりとらわれてきた(中略)その結果、効率一辺倒の企業ばかりになってしまったのだ──どこも同じようなやり方で同じような商品やサービスを提供し、成長を目指すにも企業買収しか能がない

企業に関するありとあらゆる情報を手に入れようと思ったら、本来ならその企業のなかで働くしかない

お得意の「人員削減」を自社で行うはめになる(ジェミニの話)

ひとつの計画に固執することの問題点は、想定外の事業機会に対しては万全の対応が取れないことだ(中略)ビジネスの成功は、業界の将来を予測し市場の方向性を決定づけたりすることではなく、大きなチャンスを見逃さずにとらえること──とくにまだ誰も気づいていないうちに──にかかっている

私が思ったのは、「労働組合に入っている従業員は非協力的でいい加減」などと聞かされていたのとは反対に、ほとんどの従業員は問題点をよくわかっており、自分たちでも何とかしたいと思っているのに、彼らには業務のやり方を変える権限すらなく、疎外されているということだ

各部門がバラバラに機能していると、部門間で目標の対立が見られる場合が多い

このような測定システムから私が学んだことのひとつは、目標を決めて設定し、それについて報酬や罰則を設けると、必ずと言ってよいほどその目標は達成されることだ。しかし、残念ながらそのせいで、測定できない大事な目標が犠牲になってしまうことが多い

人は評価基準を達成するために評価基準じたいを操作してしまう場合もある

業績考課のプロセスは、社員の熱意を挫くのだ。日々のふれ合いのなかで指導やフィードバックを行ってこそ、社員の業績は向上する

業界平均を「少し上回る」給与がベスト

業績が悪い理由は「能力」より「環境」が大きい

クライアントが最もやってはいけないことは、コンサルタントを雇って、自分たちの代わりに考えさせることだ

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『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』カレル・フェラン・著 大和書房
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479794336

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◆目次◆

はじめに 御社をつぶしたのは私です
Introduction 大手ファームは無意味なことばかりさせている
第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない
第2章 「最適化プロセス」は机上の空論
第3章 「数値目標」が組織を振り回す
第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち
第5章 「マネジメントモデル」なんていらない
第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな
第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち
第8章 「ベストプラクティス」は“奇跡”のダイエット食品

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