2013年8月1日

『ビッグデータの正体』ビクター・マイヤー=ショーンベルガ─、 ケネス・クキエ・著 Vol.3299

【ビッグデータが人間の思想を変える?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062180618

「相関関係と因果関係は違う。ビジネスにデータを活かすには、因果関係を探らなくてはならない」。

これは従来の社会科学の常識ですが、どうやらその常識が、大きく変わりつつあるようです。

その原因となるのが、本日のテーマ「ビッグデータ」。

ビッグデータの世界的権威であるビクター・マイヤー=ショーンベルガ─(オックスフォード大学オックスフォード・インターネット研究所教授)による『ビッグデータの正体』は、これから起こりつつある変化を論じた、じつに知的な読み物です。

本書によると、「N=全部」が前提となるビッグデータの時代には、因果関係よりも、相関関係が重要になる。

「何が何でも因果関係を突き止める」という価値観から、「現実がそうなっているんだから、理由なんてどうでもいいじゃないか」という価値観への変化です。

既に実業界では、この変化が起こりつつあり、本書には、書評家を敗北させたアマゾンのケースや、女性客が妊娠しているかどうかまで予測するターゲットのケースなど、いくつかの企業のケースが紹介されています。

要するに、<ある客がヘミングウェイを読んだ後になぜF・スコット・フィッツジェラルドを買いたいと思ったのか、コンピュータは知る由もない。が、それは重要ではなかった。ともかく売れたことは事実である>ということです。

インフルエンザの流行を予測したグーグルのように、いまやデータさえあれば、専門家の予測を凌駕する正確な予測ができる時代。

ある意味、ビッグデータの時代とは、専門家不要の時代、と言ってもいいのかもしれません。

本書によると、ビッグデータの時代に起こる変化は、全部で3つあります。

1.ビッグデータは限りなくすべてのデータを扱う
2.量さえあれば精度は重要ではない
3.因果関係ではなく相関関係が重要になる

これに伴って、われわれ人間の価値観にも変化が起きる、というのが著者の見解ですが、これは今後ビジネスで成功する人間の条件として、見逃せないポイントでしょう。

時代が変わり、生き残る人間のメンタリティにも変化が訪れる。

新たな時代の到来を予見するために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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グーグルのシステムは、各検索語の使用頻度と、インフルエンザ感染の時間的・空間的な広がりとの間の相関関係の有無を見ていただけだ。グーグルは、合計4億5000万にも上る膨大な数式モデルを使って検索語を分析し、CDCが提供している2007年、2008年の実際のインフルエンザ症例とグーグルの予測を比較検討した。そこで彼らは大変なことに気付く。特定の検索語45個と、ある数式モデルを組み合わせたとき、グーグルの予測と公式データとの間に高い相関関係が見られたのだ

小さな虫から見れば、重力は取るに足らない問題だ。むしろ、自然界で虫たちに影響のある制約条件といえば表面張力だ。表面張力のおかげで、虫は水の上を安心して歩くことができる。一方、人間は表面張力など気にも留めない。情報も、規模が重要なのだ

データを増やせば増やすほど、アルゴリズムは飛躍的に成績が向上した。50万語のデータ量では最低の成績だった単純なアルゴリズムが、データを10億語にしたとたん、最高の成績を発揮したのである

オンラインDVDレンタルのネットフリックスでは、新規受注の4分の3が推奨作品

女性たちの基本的な傾向としては、妊娠3カ月ごろから無香料ローションを多く購入し始め、その後マグネシウムやカルシウム、亜鉛といったサプリメントの購入傾向が強まる

オレンジ色に塗装されたクルマは欠陥が大幅に少ない

東京にある産業技術大学院大学の越水重臣准教授は、人間の臀部、つまり尻の形状を科学的に捉える研究に取り組んでいる。着座したときの尻の形、姿勢、重量分析を数値化・集計することで、座り方自体が情報になるというのだ(中略)実は、この技術、自動車の盗難防止システムとして開発されている

ユーザーの位置情報をどれだけ収集できるかが物を言う時代になっている。居場所や訪問予測に基づき、ターゲットを絞って個人単位で広告を打てる

アマゾンのようなネットショップは、有効なデータと不適切なデータを選別する高度な仕組みを構築している。例えば、過去の購入履歴データに基づいて推奨した本を客が閲覧したり実際に購入したりした場合、その過去データには客の「好み」がまだ反映されていると判断する。このように古いデータの有効性にスコアを付けて、いわば情報の“減価償却”に取り組んでいるのである

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『ビッグデータの正体』ビクター・マイヤー=ショーンベルガ─、ケネス・クキエ・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062180618

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◆目次◆

第1章 世界を変えるビッグデータ
When Data Speaks データが語り始めるとき
第2章 第1の変化「すべてのデータを扱う」
「N=全部」の世界
第3章 第2の変化「精度は重要ではない」
量は質を凌駕する
第4章 第3の変化「因果から相関の世界へ」
答えが分かれば、理由は要らない
第5章 データフィケーション
「すべてのもの」がデータ化され、ビジネスになる時代
第6章 ただのデータに新たな価値が宿る
ビジネスモデルの大変化 その1
第7章 データを上手に利用する企業
ビジネスモデルの大変化 その2
第8章 リスク──ビッグデータのマイナス面
『1984』の悪夢は実現するか
第9章 情報洪水時代のルール
ビッグデータ時代のガバナンスとは
第10章 ビッグデータの未来
ここまで述べてきたことの「まとめ」

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