【世界は「場」へと移行する?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/414088410X
本日の一冊は、毎日新聞社、月刊アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍する佐々木俊尚さんが、情報化、グローバル化の先にある世界の変容を論じた一冊。
われわれが現在直面している「第三の産業革命」の本質と、これまでの国民国家を形作ってきたヨーロッパ人の思想、来るべき「レイヤー化する世界」について、著者独自の見解を示しています。
主要な交易ルートから外れていたヨーロッパ人がたまたま大西洋にこぎ出して幸運を手に入れ、世界を植民地化して繁栄を遂げた。
植民地をソト、国民国家をウチとして発展してきた先進諸国が、なぜ現在、苦しんでいるのか。
著者は、その理由をこう説明しています。
<ヨーロッパの民主主義というのは、ソトに不利を押しつけることで成り立ってきた>
<いま、この地球上においてソトは消滅しようとしています。グローバリゼーションが地球を覆い、すべての国とすべても国民を、ウチへと招き入れようとしているからです>
インターネットが富を増やさず、かつ雇用も増やさない現実を、われわれはどうとらえればいいのか。
来るべき「レイヤー化する世界」に対して、われわれはどう対応すればいいのか。
本書で語られる「場」が、そのすべてを解き明かしてくれます。
「場」を制する者がビジネスを制す。
今後の世界の覇権の移り変わりを読む上で、またビジネスの新潮流をつかむ上で、参考になる一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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たとえば、電気。十九世紀前半に電気が利用できるようになった時、最初は街灯の電源ぐらいにしか使われていませんでした。灯りにする以外に何の用途があるのかだれもわからなかったのです
生産を増やしていくと、困ったことが起きてきます。工場の設備はまだまだ生産を増やせる余力があるのに、ものをつくるための原材料や燃料が足らなくなり、つくったものを売る先も不足してくるという問題です。そこで最初に産業革命が成功したヨーロッパの国ぐにが考えたのは、アジアやアフリカを植民地にすることでした
「境界」を定めず、無理にウチソトを分けないやりかたであれば、帝国の領土は無限に広がっていくことができます
実はヨーロッパの人びとは、大西洋に出て行くことを運命づけられていたのです。ヨーロッパ人にだけ立派な開拓者精神があったからではありません。彼らが出て行ける先は大西洋しかなかったから、大西洋に船をこぎ出したのです。なぜなら彼らは、中世の世界システムの中心となっていた交易ルートから外れていたからです
新大陸がもたらしたのは、銀だけではありません。広大な土地には開拓地を求めて多くの移民がわたり、農地を開き、街をつくっていきます。そうして新大陸はヨーロッパのものを買ってくれる巨大市場にもなってきます
精神的なよりどころである「聖」のキリスト教会は、「俗」の世界ではおまけでしかない人びとの心を支配していました
国民国家はめっぽう戦争に強かった
ヨーロッパの民主主義というのは、ソトに不利を押しつけることで成り立ってきた
いま、この地球上においてソトは消滅しようとしています。グローバリゼーションが地球を覆い、すべての国とすべても国民を、ウチへと招き入れようとしているからです
国民国家という古い権力支配が終わり、<場>という新しい権力支配が始まる
ウチとソトの縦の境界から、「レイヤー」という横の境界へ
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『レイヤー化する世界』佐々木俊尚・著 NHK出版
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◆目次◆
プロローグ 現代──第三の産業革命が起きている
第一部 中世──多くの民族がともに栄えた帝国の時代
第一章 かつてヨーロッパは辺境の地だった
第二章 なぜ中世の帝国は滅んだのか
第二部 近代──私たちが「国民」になった時代
第三章 「国民」は幻想からやってきた
第四章 「民主主義」という栄光
第五章 崩壊していく民主主義と国民国家
第三部 未来──〈場〉の上でレイヤー化していく世界
第六章 すべては〈場〉に呑み込まれる
第七章 レイヤー化する世界
第八章 「超国籍企業」が国民国家を終わらせる
第九章 新しい世界システムと私たち
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