2013年5月3日

『エスプリ思考』川島蓉子・著 Vol.3209

【日本人初、エルメス本社副社長・齋藤峰明氏、語る。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4103338911

本日の一冊は、日本人で初めて、エルメス本社の経営に加わった日本人、齋藤峰明氏を、ファッションや消費に詳しい著者、川島蓉子さんが取材した一冊。

エルメス本社の様子や、五代目の前社長、ジャン・ルイ・デュマ・エルメス氏の言葉、齋藤氏の言葉などを織り交ぜ、エルメスのブランドの秘密に迫っているわけですが、ここには、大量生産・大量消費を背景に発展してきた大多数のラグジュアリーブランドと一線を画す、同社の姿勢が伺えます。

分業を良しとせず、一人の職人がすべてを手掛けることで責任と愛情を持ってモノ作りをする体制、流行で終わることを拒絶する姿勢、ライセンス・ビジネスを手掛けない方針…。

「量から質」に転換する時代、あらゆる企業が参考にすべきヒントが盛り込まれています。

紹介されているエルメス本社の話や、エスプリ思考も参考になりましたが、意外に面白かったのは、チャンスをつかんだ齋藤氏のキャリアを追った部分。

・静岡県島田市に生まれ、その後、大阪、東京などを転々として、都立青山高校に進学。

・卒業後、アテネ・フランセでフランス語を学習、大阪万博でフランス人たちのガイドを務め、猛勉強してソルボンヌ第一大学芸術学部へ。

・現地で「三越トラベル」のアルバイトに出合い、ノートルダム大寺院でクラシックコンサートを開催するまでに。大学卒業後は、いったん繊維系の商社のパリ支店に入社するも、請われて三越に転職。偶然も手伝い、小売り、生産にも携わり、その後エルメスに。

以上、氏の大まかな経歴ですが、ここには、キャリア成功のヒントがいくつも隠されています。

生まれ育った環境、自身の興味、学習した内容・スキルの希少性、偶然に乗っかる勇気、勢いのある業界にいることで与えられるチャンス、努力、チャレンジ精神、創意工夫、そして創業者精神との相性…。

並べあげればきりがありませんが、これらはすべて、氏のキャリア成功につながった要素と断言できます。

自らのキャリアを切り拓きたい方、また子どもの将来を案じる親に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「エルメスには、社史というものが存在しないのです」

新しい商品を出す時は、必ずデュマ氏が確認してから世に送り出していた。「いいものしか出してはいけない。悪いものを出して、もし売れてしまったらどうするのか。取り返しがつかないことになる」

単なる未来志向ではなく、過去と未来の結節点としての現在を大切にし、過去と未来がミックスされている時として今をとらえる

「買えるわけではないので、見せてもらうだけでは申し訳ない」とおばあさんが言うと、「スカーフは、見られること自体を喜んでいるのですから、心配なさらないでください」と、その店員は答えた。スカーフをさんざん見せてもらって大喜びし、おばあさんは帰っていった。後日、社長であるデュマ氏に、一通の手紙が届いた。本店で手厚いもてなしを受けた顛末と、お礼の言葉が綴られていた。デュマ氏は早速、本店の販売員に招集をかけ、手紙を読み上げ、「こんな素晴らしい仕事をしてくれる皆さんに感謝したい」と語りかけた。家長が家族に話すように、顔を合わせて直に伝えたのである

分業を良しとしないのがエルメスだ。一人の職人がすべてを手がけることで、責任と愛情を持ってモノ作りに力を注げる。一種類だけでなく、さまざまなタイプに及ぶことで、技術の幅や奥行きを広げられる。常に新鮮な気持ちで取り組める

流行で終わることを拒絶するところに、エルメスの価値は存在している

「僕が考えるエルメスのマーケティングとは、強いて言葉にするなら、作り手の意志と使い手の意志を交流させることでしょうか」(齋藤氏)

格段に品質が良ければ、人はどこか壊れたからといって、使い捨てることなく、長きにわたって修理を重ね、使い続けるに違いない

大きくなってもいいが、太ってはいけない

「『足は地に、頭は宇宙に』とは、デュマさんが語った大好きな言葉のひとつです。地に足をつけて自分の立ち位置をしっかり見究め、宇宙に向かって飛翔するような創造性を持てと言い続けていました」(齋藤氏)

組織のために仕事をするのではなく、目的のために仕事をする

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『エスプリ思考』川島蓉子・著 新潮社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4103338911

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◆目次◆

まえがき
第一章 エルメスで働く
第二章 齋藤ができるまで
第三章 「メゾンエルメス」を創る
第四章 仕事って何だろう?
第五章 新しい時代の価値観
あとがき

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