【本当にわかりやすい】
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本日の一冊は、スタンフォード大学とミネソタ大学で、「学生が選ぶ講義が上手な教師」の第1位に輝いたティモシー・テイラー氏による、ミクロ経済学入門。
池上彰氏が監訳を務め、絶賛していることからもわかるように、本当に本質を突いたわかりやすい内容で、第1章では、経済学の本質を伝えるため、経済学における「もっとも基本的な問い」を3つ紹介しています。
◆経済学におけるもっとも基本的な問い
・何を社会は生みだすべきか?
・どうやってそれを生みだすのか?
・生みだされたものを誰が消費するのか?
そして、これら3つを考えるヒントとして、また分業が進んだ経済を例える比喩として、「1つの巨大な倉庫」のたとえが出てくるのですが、これがじつに秀逸。
ちょっと長くなりますが、引用してみましょう。
<分業が進んだ経済は、1つの巨大な倉庫にたとえることができます。仮に経済活動によって生みだされたあらゆるものが、この倉庫にいったん集められるとしましょう。何かをつくったら表のドアから運び込み、何かがほしいときは裏口にまわって必要なものをとっていく、というようにです。分業ですから、各自がそれぞれちがうものを生産し、倉庫に持っていきます。ですが、ここで1つ問題が持ち上がってきます。倉庫に入っていくものと、出ていくものは、うまくバランスがとれていなくてはならないということです。誰も使わないものを持ってきても邪魔なだけですし、みんなのほしがるものが倉庫にすこししかなければ、裏口に長蛇の列ができてしまいます>
賢明な読者ならお気づきのように、この倉庫の比喩には、格差や貧困、公害、税金、政府による規制などの問題が含まれていないのですが、著者はこれに関しても、順を追って原理原則と今日的課題を説明していきます。
今後、消費税が増税された時に、価格や需要がどうなるのかは、第5章「価格弾力性」を読めばヒントが得られますし、どんな商売が儲かるかも、本書をよく読めばヒントが見つかると思います。
教科書として見ても、「価格弾力性」「規制の虜」「負の所得税」「情報の非対称性」「逆選択」「プリンシパル・エージェント理論」など、経済学用語がわかりやすく説明されており、重宝する内容です。
事例・データに関しては、あくまでアメリカのものが元になっていますが、日本のケースにも当てはまることが多く、参考になります。
大学時代に経済学を学んだけれど挫折したという方、そもそも経済学自体学んだことがないという方に、ぜひおすすめしたい入門書です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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◆経済学におけるもっとも基本的な問い
・何を社会は生みだすべきか?
・どうやってそれを生みだすのか?
・生みだされたものを誰が消費するのか?
本当の意味でのコストとは、いくらお金がかかったかではなく、そのために何をあきらめたかということなのです
◆需要の変化が起きるとき
1.社会全体で所得水準が上がったとき
2.人口が増えたとき
3.流行や好みが変化したとき
4.代替品の価格が変化したとき
◆供給の変化が起きるとき
1.技術が進歩したとき
2.天候などの自然環境が変化したとき
3.投入物の価格が変化したとき
需要が非弾力的なとき、コストの増加は消費者の負担となる。需要が弾力的なとき、コストの増加は生産者の負担となる
ニコチン中毒の人は、どれだけ価格が上がってもタバコを買おうとします。つまりタバコ需要は、非弾力的なのです
どれだけリスクに耐えられるかという問題は、どれだけ時間をかけられるかによって決まってきます。それにもかかわらず、多くの人が犯してしまう最大のまちがいは、リスクを避けすぎることです
どんな形の規制にも「規制の虜」と呼ばれる危険がつきまといます。規制の虜とは、規制をする立場の人が規制される側に思い入れを抱き、都合のいいように使われてしまう状態のこと
◆負の所得税
収入が増えることによって国からもらえる金額が減ってしまうとき、人びとは働くことに意義を見いだせなくなります。仕事をしないほうが、得だからです
情報の非対称性によって、とくに大きなダメージを受けるのは、保険市場
逆選択とは、保険会社にとって望ましくない人が集まってきて、望ましい人が離れていく傾向のこと
医療保険の加入者を対象にした調査によると、自己負担金の発生するグループでは、発生しないグループにくらべて医療費が3分の1になった
◆プリンシパル・エージェント理論
個々のプリンシパルの力が弱いとき、エージェントは仕事をさぼりがちになります。「プリンシパルの利益のためにがんばらなくては」という気持ちが薄れてしまうからです
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『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門(ミクロ編)』ティモシー・テイラー・著 かんき出版
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◆目次◆
イントロダクション 経済学の考え方
第1章 経済学とは何か
第2章 分業
第3章 需要と供給
第4章 価格統制
第5章 価格弾力性
第6章 労働市場
第7章 資本市場
第8章 個人投資
第9章 完全競争と独占
第10章 独占禁止法
第11章 規制と規制緩和
第12章 負の外部性
第13章 正の外部性
第14章 公共財
第15章 貧困と福祉
第16章 格差問題
第17章 情報の非対称性
第18章 企業と政治のガバナンス
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