【『銃・病原菌・鉄』著者の最新作】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532168600
本日の一冊は、名著『銃・病原菌・鉄』の著者、ジャレド・ダイアモンドによる待望の最新作。
※参考:『銃・病原菌・鉄』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794218788
『銃・病原菌・鉄』は、文明の発達に地域間格差が生まれた理由を考察し、「優位性」の秘密に迫った本でしたが、今回の本は、われわれが伝統社会から何を学べるか、というコンセプトで綴られています。
先日、子どもと一緒に観ていた『まんが日本昔ばなし』で、猟師さだ六と猟犬シロが大きな青イノシシに出くわし、夢中で追っているうちに隣の領地に入り、あわれさだ六は殺される、という話がありましたが(「さだ六とシロ」)、かつてこの日本でも、他人の領地に勝手に入ると殺された時代があったのです。
この『昨日までの世界(上)』や「さだ六とシロ」のお話が教えてくれるのは、現在、国家社会に生きるわれわれが「当り前」と思っていることは、じつは当り前ではない、ということです。
本書では、ニューギニアのさまざまな部族を観察・研究した著者が、彼らの集団とわれわれとの違いを指摘し、われわれの社会が持っている優位性と問題点をあぶり出します。
例えば著者は、われわれの人間関係について、こんな指摘をしています。
<われわれは、どこかに移動するたびに、接する人の輪を完全に入れ替えるような一生を送っているのである>
だから、交通事故や商取引に絡む係争のほとんどは、それまで面識のない人間同士の係争だったり、これから先の人生で二度とかかわりを持つことのない人間同士の係争だったりする。
結果、詐欺が生まれ、争いは激しくなるわけですが、これが伝統社会であれば、そうはなりません。<相手の近くでその後の一生を送らなければならなかった>人々は、村でもめごとが起こっても、人間関係をうまく回復させる道を追求したのです。
SNSによって、人間関係が密になった今、われわれは再び、「村」を構築しようとしています。
そこで人間関係をどうするか、どんなルールを設けるべきか、さまざまなヒントを、本書は与えてくれています。
上巻で扱われているトピックは、友人や敵の概念、戦争や賠償に関する話、子育てと高齢者の扱いなど。
下巻では、危険と宗教、言語、健康などを扱っているようです。
明日、また下巻について紹介します。ぜひお楽しみに。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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現代の西洋世界に住むわれわれは移動の自由をあたりまえの権利として受け止めているが、昔はそのような権利は例外的にしか得られなかった
村のなかでもめごとが起きたら、人間関係をうまく回復させるか、お互いの存在を許容できる程度にまで問題を解決するよりほかなかった。なぜなら、結局はその相手の近くでその後の一生を送らなければならなかったからである
◆人間社会の四つのカテゴリー
1.小規模血縁集団(バンド)
2.部族社会(トライブ)
3.首長制社会(チーフダム)
4.国家(ステート)
◆相互に排他的占有領域を持ち、隣接集団との境界線を防衛する社会集団の4条件
1.防衛された占有領域の人口が多く、稠密で、境界の巡察専用の要員を捻出できること
2.排他的領域内の生産性が高く、生産量が生産量が安定し、収穫量の先読みができる環境であること
3.排他的占有領域内に命をかけて守る価値のある、貴重な資源や設備があること
4.集団の成員が流動的ではなく、隣接集団とはっきり見分けがつき、両者がめったに交わらないこと
人口が稠密で環境が安定している地域では、人々の移動距離は昔から短く、自分の居住する世界に関する知識も局所的だった。逆に、人口が疎密で、人々がばらばらに拡散して生活し、しかも環境の変動が大きい地域では、人々の移動距離は昔から長かった
物々交換が彼らの個人的関係の強化に役立つ
「それを使って人ができることのなかで、もっとも重要性が低いのは、それを食べることである、という事実は、豚についても指摘できる」(トーマス・ハーディング)
国家システムと非国家システムの双方に共通するもうひとつの点は、加害者の負担を分割する第三者の存在である
修復的司法においては、犯罪を、法律に対する違法行為として捉えるだけでなく、個人や社会全体に被害をもたらす行為として捉える
長生きする高齢者が多くなればなるほど、高齢者個々の希少価値は減少する
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『昨日までの世界(上)』ジャレド・ダイアモンド・著 日本経済新聞出版社
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◆目次◆
日本語版への序文
プロローグ 空港にて
第1部 空間を分割し、舞台を設定する
第1章 友人、敵、見知らぬ他人、そして商人
第2部 平和と戦争
第2章 子どもの死に対する賠償
第3章 小さな戦争についての短い話
第4章 多くの戦争についての長い話
第3部 子どもと高齢者
第5章 子育て
第6章 高齢者への対応──敬うか、遺棄するか、殺すか?
索引
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