2013年3月2日

『何が、会社の目的(ゴール)を妨げるのか』ラミ・ゴールドラット・著 岸良裕司・監修 Vol.3147

【ゴールドラット博士の遺言】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478024014

本日の一冊は、名著『ザ・ゴール』の著者、故ゴールドラット
氏の遺稿と生前のインタビューをまとめた注目作。

※参考:『ザ・ゴール』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478420408

『ザ・ゴール』と言えば、米MBAでもテキスト採用されている、生産管理の定番中の定番であり、全世界でベストセラーとなったビジネス小説。

本書では、なぜ、ゴールドラット博士がこの『ザ・ゴール』を書いたのか、博士が生産管理を通じて何を目指していたのか、その思想の根本に触れることができます。

本書13ページに、氏がリストラを憎む理由が書かれていたので、紹介しましょう。

<私はイスラエル人です。国民の義務として一八歳から三年間兵役に就き、その後も、四二歳までは毎年、最低三〇日間の兵役に就きました。業績好調な米国企業のトップだった私は、毎年その時期がくると、飛行機のファーストクラスでイスラエルに帰り、軍隊で二等兵としての扱いを受けたのです。そんなコントラストが、人間という存在について深く考えるよう私を促しました。ある年、レイオフされて一年以上職を見つけられないでいる男と同じ兵舎に入りました。厳しい環境で寝起きをともにしながら、私は、どれだけ失業が人を不安に陥れ、プライドを奪う、おぞましい体験かということを理解しました。それ以来、私は感情的と言ってもいいほどレイオフやリストラを憎むようになったのです>

『ザ・ゴール』で紹介されたTOC(制約性の理論)のことを、単なる合理化と思っていた方は、本書を読んでゴールドラット博士の人間愛に触れ、目からうろこが落ちるに違いありません。

「日本の企業は大切なものを捨てている」と見出しがつけられた項では、こんなことも述べています。

<経営者と従業員のコラボレーションというのは本来、ロイヤルティ(忠誠心)があって初めて成立するものだと思うんですが、多くの方々が理解していないのは、実はロイヤルティというものは一方通行ではなく、両方通行であるということなんです>

小説を読んだだけではわからなかった、執筆の意図、経営思想、教訓が散りばめられており、じつに読み応えのある一冊です。

なかでも、物理学者だった著者が、『ザ・ゴール』がなぜ売れたのか聞かれて答えた、以下の言葉には、感銘を受けました。

<人はあらゆるものを理解したいという気持ちを持っていると思うんです。何かを構造的に理解するということに関して、非常に興味を持っている。それに対して、もし説明が間違っていると、人はそれを無視するようになる。しかしそれをきちっと説明できているということであれば、人は非常に喜んで聞いてくれます>

本書には、ほかにも、『ザ・ゴール』訳者の三本木亮さんが選んだ、シリーズのダイジェスト&名言と、直接博士から薫陶を受けた、ゴールドラット・コンサルティング・ジャパンCEOの岸良裕司さんによる原稿が盛り込まれています。

『ザ・ゴール』ファンには必読の一冊。まだ『ザ・ゴール』を読んでいない方は、『ザ・ゴール』を手に取るきっかけとして、ぜひチェックしてみてください。

(まあ、それだけ『ザ・ゴール』は良い本だということですが)

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人はあらゆるものを理解したいという気持ちを持っていると思うんです。何かを構造的に理解するということに関して、非常に興味を持っている。それに対して、もし説明が間違っていると、人はそれを無視するようになる。しかしそれをきちっと説明できているということであれば、人は非常に喜んで聞いてくれます

経営者と従業員のコラボレーションというのは本来、ロイヤルティ(忠誠心)があって初めて成立するものだと思うんですが、多くの方々が理解していないのは、実はロイヤルティというものは一方通行ではなく、両方通行であるということなんです

多くの企業において、営業部門は部分最適を追求しがちです。すなわち、彼らの勲章は大口顧客を抱えていることや大口注文を取ってくることです。ですが、少量かつ高頻度の注文に即時対応するモデルを目指すには、このように「大きく考える」というマインドセットを変えなければなりません

「愚か者は自分の失敗に学ばない。才人は自分の失敗に学ぶ。しかし、賢人は他の人の失敗からも学ぶ」──これも博士が好んで口にしていた言葉である

どのような尺度で私を評価するか教えてくれたら、どのように私が行動するのか教えてあげましょう

釘を打つのが得意な人には、すべてのものが釘に見えてしまう

重要なのは、フローに集中し、局所的なコストを無視することで、結果的に、製品一つ当たりのコストもずっと下がっていくということだ

早く作りすぎることを防ぎたいのであれば、その作業に必要な材料を投入しなければいいのだ

いつ原材料を投入するかの決定が、どこにどれだけの長さのキューをつくるのかを決めることになり、それは注文を完成させるのに必要な時間を決定し、そしてそれがまた、いつ原材料を投入するかを決めることになる

明らかになった余剰キャパシティへの賢明な対応は、これをもっと積極的に活用することだ

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『何が、会社の目的(ゴール)を妨げるのか』ラミ・ゴールドラット・著 岸良裕司・監修 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478024014

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◆目次◆

日本を愛してやまなかった父の危惧 ラミ・ゴールドラット
Part1 言行編
第1章 INTERVIEW
なぜ、私は『ザ・ゴール』の邦訳を許可しなかったのか
第2章 INTERVIEW
効率を正しく追求すれば、むしろリストラの必要はなくなる
第3章 INTERVIEW
繁栄し続ける企業には「調和」がある
第4章 INTERVIEW
適者生存──少量かつ高頻度の受注に即時対応できるリアルタイムの生産体制を構築せよ
第5章 直伝 ゴールドラット博士の20の教え 岸良裕司
Part2 論文・著作編
第6章 ARTICLE
TOCとは何か
──ゴールドラット博士のTOC概論 エリヤフ・ゴールドラット
第7章 ARTICLE
巨人の肩の上に立って
──ヘンリー・フォードと大野耐一の生産革新 エリヤフ・ゴールドラット
第8章 ARTICLE
フォードに学び、フォードを超えた男
──大野耐一の挑戦 エリヤフ・ゴールドラット
第9章 『ザ・ゴール』シリーズ翻訳者が厳選
あなたの常識が覆る50の「至言」 三本木亮
解説 月曜日を楽しみな会社にするために 岸良裕司

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