2012年12月2日

『古典力』齋藤孝・著 vol.3057

【齋藤孝氏が教える、古典の読み方<十カ条】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004313899

佐藤優さんの『読書の技法』が、売れていますね。

※参考:『読書の技法』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492044698

サブタイトルに「熟読」「速読」などとキャッチーな言葉もついていますが、売れた理由は、その教養の深さにあったのではないでしょうか。

今年は、『「超」入門 失敗の本質』や、『銃・病原菌・鉄』の文庫化、マクニールの『世界史』の再燃など、古典のリバイバルがブームとなりました。

※参考:『「超」入門 失敗の本質』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478016879

※参考:『銃・病原菌・鉄』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794218788

※参考:『世界史』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122049660

その流れに便乗して、本日は古典がらみの本を一冊、ご紹介したいと思います。

ご紹介するのは、ベストセラー作家であり、明治大学文学部教授である齋藤孝さんによる『古典力』。

古典を読むための方法論を10通り紹介し、かつ著者おすすめの古典名著のエッセンスを紹介した一冊で、古典への入門書としては手頃な一冊です。

いくつか読み方について紹介すると、

第一条 一通りの知識を事前に得る

先入観なしに読み始めるのをよしとする方もいらっしゃるでしょうが、著者がおすすめするのは、事前に歴史的意義などを知り、それから読み始めること。その方が一文一文の重みも感じられるそうです。

第二条 引用力を磨く

会話でも、文章でも、古典の言葉を引用しようと意識するだけで、古典の読み方が変わる。引用したい文を3つ選んで、そのつながりを考えれば、読書感想文ができる、という視点も参考になりました。

第三条 さかのぼり読み

古典の影響関係をさかのぼってたどる、好きな作家がリスペクトする古典を読むことで、古典の影響力を感じることができる。知識が深まっていく実感が味わえる読み方です。

中盤では、渋沢栄一、孔子、ゲーテ、小林秀雄などの偉人が古典をどう活用したかについても触れており、こちらも参考になります。

後半の著者おすすめの50冊(マイ古典にしたい名著五〇選)は、1タイトル見開き2ページという制約もあり、正直、食い足りない感はありますが、読書リストとして活用すればOKだと思います。

古典を読む「勘所」を得るために、読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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古典は、玄米やするめに似ている。かめばかむほど味が出る。味わうには、しっかりアゴを使ってかまなければならない。それがめんどうだと感じれば、どんどんやわらかい食べもの(読みもの)へと流れていく。すると、いっそうかむ力は弱くなり、アゴも小さくなってくる。これが進めば、離乳食のようなやさしい文章しか受けつけなくなる

その時々の人気だけでなく、そのジャンルでの新たな手法や新たな常識、スタンダード(基準)を作り出したかどうかが、古典の条件

グローバルに情報が行き交うようになってはきたが、民族間、宗教間、国家間の緊張は必ずしも緩和していない。価値観の多様性を受け容れる知性の力が、他者に対する寛容さとなる

◆古典を読むための十カ条
第一条 一通りの知識を事前に得る
第二条 引用力を磨く
第三条 さかのぼり読み──古典の影響を読み取る
第四条 パラパラ断片読み──全部を読もうとしない
第五条 我田引水読み──自分の経験に引きつける
第六条 つかみ読み──作品世界にどっぷりつかる
第七条 クライマックス読み
第八条 演劇的音読
第九条 バランス読み
第十条 マイ古典の森をつくる

友人までもが、金銭に目が眩み、官を去って商人になるとは呆れた、と責める。そこで、渋沢はこう反論し、覚悟を決めた。「私は論語で一生を貫いてみせる。金銭を取り扱うが何ゆえ賤しいか。君のように金銭を卑しむようでは国家は立たぬ。官が高いとか、人爵が高いとかいうことは、そう尊いものではない。人間の勤むべき尊い仕事は到る処にある。官だけが尊いのではないと、いろいろ論語などを援いて弁駁し説きつけたのである。そして私は論語を最も瑕瑾のないものと思ったから、論語の教訓を標準として、一生商売をやってみようと決心した」。人生の転機では、信念とエネルギーが必要だ。自分の内側の心だけでは充分ではない。古典の精神を自分の援軍とすることで信念の力が強くなる

行為と動機と、満足する点。この三点で自分が見られると思うと、見透かされる感じがする。人物を見るポイントを、この明確な三点にさらっと凝縮しているところに孔子の凄みを感じる

スケールの小さな個性などにどれほどの価値があるのか、というゲーテの問いかけは、「個性が大事」というスローガンを信じて疑わない私たちに突き刺さってくる

近代的なロマンティックなものは、主観的手法によって作られ、古代的なクラシックなものは、客観的手法によって作られる、という考え方がゲーテにはある

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『古典力』齋藤孝・著 岩波書店

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396612192

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◆目次◆

第一章 古典力を身につける──今、なぜ古典力が必要なのか
第二章 活きた古典力──四人の先人のワザ
第三章 マイ古典にしたい名著五〇選

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