【日本の活力を取り戻すには?】
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本日の一冊は、数多くの企業変革や業界再編に携わってきた、「再生」のプロ、冨山和彦さんが、日本経済再編のための提言をまとめた新書。
本書の冒頭に書かれているように、<「革命」の背景には、深刻な階級対立が存在する>わけですが、著者が考える現代日本の対立軸は、じつは「世代間対立」です。
個人金融資産1500兆円の大半を60代以上の人々が持ち、貧困子育て家庭でさえ上の世代に搾取される構造になっている、現在の日本社会。
著者は、この構造に異議を唱え、医療費や年金、定年制や税金の問題にどう取り組むべきか、持論を唱えています。
<平均寿命を超えた人の命を一分でも一秒でも長く延ばすことに、公共の福祉が全力を挙げるという社会のフレームワークは、そろそろ見直してもよいのではないか>
<資産や所得のある人には年金の支払いをストップする>
<既存の公的年金は「あるだけ解散」でご破算にする>
<解雇規制を緩和して、解雇自由の原則に戻る代わりに、定年は廃止する>
など、刺激的な提言が続いていますが、生産力のある若年層に希望を与えるという点で、意味のある議論だと思います。
既得権を持っている高齢者や資産家、正社員には不利な主張かもしれませんが、日本の未来を考える上で、重要な提言だと思います。
著者がかかわったJALの再生については、いろいろと異論があるでしょうが、これからの日本の方向性や、ビジネスチャンスについても触れられているので、教養として読んでおくといいでしょう。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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世界は「左右」の対立はとっくの昔に卒業していて、現在の先進国が共通に抱えている病巣は、既得権を多く持っているかいないか。つまり、世代間の対立が一つの大きな軸となっている
平均寿命を超えた人の命を一分でも一秒でも長く延ばすことに、公共の福祉が全力を挙げるという社会のフレームワークは、そろそろ見直してもよいのではないか
かつてのJALをはじめ、引退後の年金制度が充実している組織ほど、現役時代の勤労意欲も生産性も低いものだ
所得税の累進課税を強化するという話があるが、そもそも高齢者は、資産はあっても所得がない人も多く、所得税を引き上げてもあまり意味がない
明らかにお荷物扱いされ、仕事ぶりと給料が釣り合わないと自他ともに認める人々を、「雇用を守る」という大義名分だけでたくさん抱えている職場が、私には真に人間的職場、本当に人に優しい職場とは思わない
いまどき本当の改革をやろうとすると、必ず不利益の再分配をやらざるを得ない。それをやり切れるかどうかは、いわゆる頭の良い悪いよりも、もっと根本的な人間的器量、性格のほうが本質的な意味を持ってくる
エネルギーには言語的なハンディキャップがない
サービスというのはアプリケーションの勝負だから、その地域の実態に合わせてアプリケーションを細かく組み立てていかなければ、現地の人々に受け入れられない。そうすると、日本のような分業モデルは通用しなくなるのだ
日本はこの先、生産年齢人口が減少していくので、従来のGDPの指標としての意味が希薄になると、私は考えている。人口が減った分、GDPが減るのは当たり前だからだ。これから先、日本では、労働所得よりもむしろ資産所得が増えていくはずなので、GDPに所得収支を足したGNIのほうが、実態をよく表していることになるのではないか
日本的な説得のポイントは、やはり「情に訴えること」と「繰り返ししつこくやること」である
リーダー層や力を握った階層が、名声、権力、お金のすべてを手に入れると、少なくともすべての世代のインテリ男子からは、猛烈な嫉妬の攻撃にさらされる
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『30代が覇権を握る!日本経済』冨山和彦・著 PHP研究所
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◆目次◆
第一章 若い世代の活力を甦らせるために
──団塊世代よ「悠久の日本国民」の声を聞け!
第二章 塩漬け預金を社会に還元する方法
──年金と医療の見直しで上の世代のストックを吐き出させる
第三章 日本人に合った税体系と働き方
──労働市場改革で若年層へ雇用と所得を移転する
第四章 グローバル時代の人材育成
──大学再生と格差解消のための教育システム
第五章 日本の強みを生かした成長戦略
──医療とエネルギー分野でイノベーションを
第六章 リアル革命のススメ
──近未来、いまの三〇代がこの国の覇権を握るために
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