【村上春樹、創作の秘密】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163731008
本日の一冊は、待ちに待った、小説家・村上春樹さんのインタビュー集です。
1997年?2009年にかけて行われた、国内外のインタビューをまとめたもので、村上春樹氏の作品や創作哲学、テクニックに迫った、じつに興味深い一冊に仕上がっています。
あまりにジャンルがかけ離れていて、「これはビジネス書じゃないだろう!」とお叱りを受けてしまいそうですが、氏の作り手としての視点や、表現の工夫、そして地道に仕事を続けるストイックな姿勢は、われわれビジネスパーソンも、必ずや学べるところがあると信じています。
土井が読んでいて思ったのは、村上春樹さんはやはり、一流と呼ばれる人に共通する考え方や資質を持っているということ。
土井が本書から読み取ったのは、ズバリ以下の点です。
1.自分の興味の対象が明確である
2.強みに対して集中投資している
3.継続するための考え方としくみを持っている
4.フィードバックシステムを持っている
5.優れた人から学んでいる
6.お金以上の価値のために、お金と時間を有効活用している
以前、『走ることについて語るときに僕の語ること』を読んだ時にも感じたことですが、著者の創作に対するストイックな姿勢には、本当に頭が下がります。
※参考:『走ることについて語るときに僕の語ること』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167502100
経営においても、創作活動においても大切のは「規律」ですが、このインタビューからは、著者がどれほど規律を大切にしているかがビシビシ伝わってきます。
一流の作り手の精神を学ぶために、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
なお本書は、村上春樹氏と長年一緒に本を作り続け、このインタビュー集の出版を勧めた(つまり読み手である我々の恩人)、文藝春秋出版局の岡みどりさんの遺作となった作品のようです。
もう一人の「一流」の魂を感じるためにも、ぜひ買って読んでみてください。
なお本書は、土井にとって、ここ数日間の睡眠不足の原因であり、一生取っておきたい一冊となったことを申し添えておきます。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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僕のいちばん大きな関心は、今のところ、より優れた、より大きな作品を書くことにあります。そして、お金で買うことのできるもっとも素晴らしいものは、時間と自由である、というのが僕の昔から変わらない信念です
旅行の目的は(ほとんど)すべての場合―パラドクシカルな言い方ではあるけれど―出発点に戻ってくることにあります。小説を書くのもそれと同じで、たとえどれだけ遠いところに行っても、深い場所に行っても、書き終えたときにはもとの出発点に戻ってこなくてはならない
グローバルという言葉は、僕にはあまりぴんとこない。なぜなら我々はとくにグローバルである必要なんてないからです。我々は既に同質性を持っているし、物語というチャンネルを通せば、それでもうじゅうぶんであるような気がするんです
せっかくこうして作家になれたんだもの、何かを書くのなら、とにかく少しでも良いものにしていきたい。それは言うなれば、労働倫理みたいなものですよね
小説を書いていない時間に、自分がどれだけのものを小説的に、自分の体内に詰め込んでいけるかということが、結果的にすごく大きな意味を持ってきますよね
人には「原理になってしまいたい」という欲求があるんじゃないのかな。肉体を失って原理になってしまいたい
彼女は僕の妻であり、立場はとてもはっきりしています。どこにも異動しない。ずっとそこにいます。良くも悪くも(笑)。言い換えれば、一種の定点です。それが僕にとっては大事なことなんです。定点を身近に確保しておくこと
カポーティから学んだのは、短編小説においては文章というものが「妖しくなくてはならない」ということです
「とにかくフェロモンが出てりゃいいんだろう」みたいなことになってはいけない。そこには優しさと哀しみのようなものがなくてはならないし、書き手の視線は基本的にできるだけ遠くを見ていなければならないということです
カーヴァーから僕が強く感じたのは、「偉そうじゃない」こと
もし今日走らなかったら、その翌日も走らないだろうと思うのです。自らに必要以上の負荷をかけることは、人間にそもそも具わっている性質ではありませんから、肉体に学ばせた習慣は、すぐに解かれてしまうものです。それは書くことにも当てはまります。僕は毎日規則正しく書くことで、精神を鈍らせないようにしているのです
「少なくとも最後まで歩かなかった」、墓石にそう刻んでもらいたい
小説家にとって、エッセイをたくさん書くというのは、あまりいいことではないと僕は思うんですよ。それだけ抽斗が少なくなっちゃうわけだから
何かを産み出せる資格というのは、多かれ少なかれとくべつなものです。いったんそれを掴んだら、掴み続けるしかない
※「つかむ」は文字化けを避けるため、「掴」としています
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『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』村上春樹・著 文藝春秋
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163731008
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◆目次◆
アウトサイダー
現実の力・現実を超える力
『スプートニクの恋人』を中心に
心を飾らない人
『海辺のカフカ』を中心に
「書くことは、ちょうど、目覚めながら夢見るようなもの」
お金で買うことのできるもっとも素晴らしいもの
世界でいちばん気に入った三つの都市
「何かを人に呑み込ませようとするとき、
あなたはとびっきり親切にならなくてはならない」
「せっかくこうして作家になれたんだもの」
レイモンド・カーヴァーについて語る
「恐怖をくぐり抜けなければ本当の成長はありません」
『アフターダーク』をめぐって
夢の中から責任は始まる
「小説家にとって必要なものは個別の意見ではなく、
その意見がしっかり拠って立つことのできる、
個人的作話システムなのです」
サリンジャー、『グレート・ギャツビー』、
なぜアメリカの読者は時としてポイントを見逃すか
短編小説はどんな風に書けばいいのか
「走っているときに僕のいる場所は、穏やかな場所です」
ハルキ・ムラカミ
あるいは、どうやって不可思議な井戸から抜け出すか
るつぼのような小説を書きたい(『1Q84』前夜)
あとがき
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