【現代日本の問題点を宮台真司がまとめて解説】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344981219
本日の一冊は、首都大学東京の教授で、社会学者、評論家として知られる宮台真司さんが、現在の日本の問題点をいくつかピックアップし、「ひとり日本の論点」をやってみたという一冊。
既にベストセラーになっている作品ですが、内容は、現在の日本の人間関係、メディア、教育、幸福論、米国論、日本論とじつに幅広い。
共通点を探ると、われわれが今、漠然と問題視している状況、不安に思っている状況を、社会学的な視点で論じた、という点でしょうか。
相変わらず歯に衣着せぬ語り口で、自身の主張を展開しており、人によって賛否両論分かれるものと思います。
経済的な部分の記述については、突っ込みどころもありますが、社会論としては、今まさに起こっている問題点とその本質がつづられ
ており、じつに興味深い。
なぜ若い女性がケータイ小説にはまるのか、なぜ若者は仕事にコミットメントできないのか、なぜ親友にさえ悩みを打ち明けられなくなったのか、まさに現在の若者の悩みをズバリ言い当てた、読み応えのある内容です。
また、これからのポピュリズムの流れや、どうやって人々が社会にコミットメントして行けばいいのかについても考察されており、社会全体のしくみや個人のあり方を問い直す論考となっています。
これからの人々の心の動きを知ることは、今後必ずビジネスにつながってきます。
生き方のヒントとして、ビジネスのヒントとして、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「他者の存在ゆえに――他者とのコミュニケーションの履歴ゆえに――自分は揺るぎない」というふうに考えるチャンスが減ってしまった
性愛関係(人間関係)によって自分が確からしく感じられるのではなく、逆に性愛関係(人間関係)のせいで自分が不安定で脆弱な存
在だと感じられてしまう
流動性が上昇したせいで、コミットメントが見合わなくなった
お茶の間や井戸端に相当する「場」がなくなれば、お茶の間や井戸端のコミュニケーションを支える共通前提を供給するメディアも不要になる
米国のタイム誌やドイツのシュピーゲル誌は、オンライン化によってむしろ大幅な黒字を出しています。手堅い優良コンテンツであるがゆえにビジネスエリートを含めた高額所得者がアクセスし、広告が集めやすいからです
<システム>の全域化によって<生活世界>が空洞化すれば、個人はまったくの剥き出しで<システム>に晒されるようになります
あれこれあって今がある、といった関係の履歴がかたちづくる入れ替え不能性――関係の唯一性――だけが、脆弱性の不安から人々を自由にします
周囲に「感染」を繰り広げる本当にスゴイ奴は、なぜか必ず利他的です
インターネットの最大の問題は、「匿名サイトで事件に巻き込まれる可能性」よりも「オフラインとオンラインとにコミュニケーションが二重化することによる疑心暗鬼」とそれがもたらす日常的コミュニケーションの変質
かつて<生活世界>の中で解決できたことが、解決できなくなって、<システム>を頼るしかなくなる結果、ますます<生活世界>が脆弱になっていく
緊急避難的には<システム>の過剰に見える導入は、たとえば生徒同士や生徒と教員の間の暴力沙汰に警察の介入を求めることも含めて不可避ないし不可欠ですが、「<システム>を頼ればOK」で済ませることはなく、<生活世界>の再構築に向けた活動をするべき
九一年のバブル崩壊以降、世代を問わず女性の売春が多かったのが工場城下町だった
「大きな社会」、すなわち、経済的につまずいたりちょっと法を犯した程度では路頭に迷わずに済む「社会的包摂」を伴った社会を、グローバル化の流れの中で、どうやって作り、維持するのか
ヒドイ社会で、キツイ状況に置かれた人たちが多ければ多いほど、こうしたポピュリズムの匂いが、社会のそこら中に蔓延していく
柳田は、日本人が公にコミットメントする「よすが」としての国土に注目した
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『日本の難点』幻冬舎 宮台真司・著
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◆目次◆
はじめに
第一章 人間関係はどうなるのか―コミュニケーション論・メディア論
第二章 教育をどうするのか―若者論・教育論
第三章 「幸福」とは、どういうことなのか―幸福論
第四章 アメリカはどうなっているのか―米国論
第五章 日本をどうするのか―日本論
あとがき
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