本日の一冊は、良質なロングセラー・テキストとして知られる、ファイナンスの解説書です。
本の帯に「『自分だったら、どうする?』が実感できる」とありますが、まさにその通りで、読者に考えるきっかけとヒントを与えてくれる、おもしろい作りになっています。
たとえば、第11章で取り扱われている「価格か販売数量か、どちらをとるか」という命題。これに関しても、単に価格と販売数量の関係だけを考えるのではなく、同じコストを販売員のインセンティブにまわした場合や、広告宣伝費にまわしたりした場合など、さまざまなケースを想定しながら学べるようになっています。
もちろん、もともとファイナンスのテキストですから、企業分析や資本の調達、利益およびキャッシュ・フローの分析など、さまざまなファイナンス上のトピックに触れています。
どの本でも変わらないファイナンスの用語や数式を出しても仕方ないので、ファイナンス担当、経営者の持つべき心構えの部分をご紹介することにします。
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■ 本日の赤ペンチェック
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◆すべての企業が担っている財務上の3つの役割
1.利益をあげる
2.キャッシュ・フロー
3.健全な財政状態
内部向けの利益報告書では、営業費用は変動費と固定費に区別され、変動費はさらに販売数量によって変化するものと、売上高によって変化するものに分けられる。営業費用の適切な分類に関する重要性についてはいくら言っても言い過ぎにはならない。
来期の資本調達方法を検討するときには、来期の利益(営業活動)からのキャッシュ・フローを考慮に入れるべきである。
多くの企業にとって中心的な戦略は成長である。成長は、より高い売上水準を支えるために必要とされる営業資産の増加に資金を提供するために追加的な資本が確保されるということを要求する。
販売数量の増加に焦点を当てるときには常に、生産能力に気を配る心がけが大切である。追加的な販売数量を満たすために必要な生産能力を整備するために固定費が増加するはずである。
他の利益要素が一定であると仮定すれば、利益要素をどれか1つだけ変化させるとすると、販売価格の引き上げがもっとも望ましい。価格の引き上げが利益をもっとも増加させ、キャッシュ・フローの面でも最善の結果をもたらす。
マネジャーは多くの長期の資本投資意思決定を下す。資本投資の分析は、その企業に必要とされる資本コストによって決まり、資本コストは負債と株主資本の比率、それら2つの資金源のコスト、さらには法人税率といった条件によって左右される。株主資本の調達コストは利子率のように契約で決まるものではない。ROEをどう設定するかは、その企業の経営トップの判断に任されている。
経営判断が優れていても管理がおざなりであれば、最初から無謀な決定をしたのと同じく、悲惨な結果が待っている。すぐれた管理ツールが備わってこそ、意思決定のための優れたツールが生きるのである。
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さすがは定番書。それぞれ「落とし穴」や「勘どころ」といった項目でポイントがまとめられているため、非常に使い勝手がいいです。
というわけで、本日の一冊は、
『MBA入門ファイナンス』
http://tinyurl.com/6547n
です。本気で勉強したい経営者、ファイナンス担当者にはおすすめの一冊です。
■目次■
第1部 企業の内部および外部向けの財務報告
第2部 資産と資本源泉
第3部 利益およびキャッシュ・フローの分析
第4部 資本投資分析
第5部 その他の分析
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