2004年9月17日

『スリッパの法則』

http://tinyurl.com/5r7ol

著者は、ジャーディン・フレミングの中小型株チームで驚異的な実績を収めたファンドマネージャー、藤野英人氏。

冒頭のバフェットの話ではないですが、毎月四十社以上、これまでに累計三千社を超える企業のトップと面談してきたという、つわものです。

そのつわものが、バランスシートや目論見書、有価証券報告書などからはわからない、社長のキャラクターや企業文化、そしてそれらと業績の相関関係を導き出しているのが、本書『スリッパの法則』です。

ちなみに、タイトルは、法則26「社内では、スリッパに履きかえる会社に投資すると、不思議に儲からない」から取ったもの。

本書には、こんなユニークな「法則」が全部で63個、紹介されています。ただの相関関係にとどまるのでなく、考察を深め、因果関係とおぼしきところまで発展させているのが、おもしろいところです。

非常によくまとまっている本なので、今回は、法則のうちのいくつかと、興味深い言葉を抜き出してみることにします。
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 本日の赤ペンチェック
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【紹介されている法則の例】

法則 3 社長の自伝を本人からプレゼントされたら、その会社への投資は控える

法則 4 創業者のコンプレックスを聞くことは重要なキーになる

法則 9 平凡な社長は総論を話し、優秀な経営者は各論も話す

法則12 大成功している経営者は例外なく細かい

法則14 社長室の豪華さとその会社の成長性は反比例する

法則23 兄弟で経営している会社で、弟の学歴が兄の学歴を上回っており、保有株数に差がない場合は、現在および将来の兄弟喧嘩の可能性を考える。

法則29 トイレの汚い会社への投資は必ず損をする

法則30 極端に美人の受付嬢がいる会社は問題がある

法則31 自社製品以外のおみやげをくれる会社への投資は儲からない

【興味深かった言葉】

収益を伸ばす会社の社長や社長室には一定のパターンがあり、業績を悪化させる社長や会社にもまた類似性がある

机の前に座ってデータをメカニカルに分析するだけでは、ファンドマネージャーとしてよい成績を上げることはできません。企業のトップである経営者の話を聞き、実際に会社を見て、その雰囲気を肌で感じることが大切なのです。

人が会社を興し、活動していく行為には、人間の持つ欲望やビジョン、自己実現という精神の根底の部分に原点がある

投資という観点から会社を見ると、いままでの成功よりも今後の事業展開が重要な関心事です。創業者のキャラクターに魅了されてしまうと、その会社の事業の成長、ステージを見誤ってしまうおそれがあります。

よい社長の条件を簡単に言えば、話が具体的か、数字を使って客観的に説明できるか、人の話に耳を傾ける率直さがあるか、ということです。

私たち投資家にしてみれば、現在何をやっているかを熱心ノ語り、将来のビジョンについて語る経営者に投資をしたいのです。なぜそうしたビジョンを持つに至ったかを知るためには、その人の歴史を知る必要があるのです

経営者の歴史を知ることは重要です。とりわけ、家庭環境を聞くことは大きな意味を持ちます

コンプレックスは人を動かす大きな原動力です。ピラミッドから排除されたことに対する無意識の復讐心が強い闘争意識となり、会社を引っ張っていくことが多いのです

社長が経営理念やビジョンを話すときに目が輝いているかどうかがポイントです。いかにも興奮した様子で話す社長は信頼できます

優れた経営者は社員に思想教育ができます。十代、二十代の若者はゼニカネでは動きません。ボランティアをやりたい人も多いし、根本的には働かなくてもいいと思っている人もいます。(中略)だからこそ、経営者は旗を掲げる必要があります。仕事に対する社会的意義や、やりがいについて徹底的に教え、諭し、会社の業務がどのように日本の社会や文化に貢献するか、といった具体的な事柄を明確に説明しなければなりません

ビジネスの社会では、同業他社に競い勝つために努めて個性的である必要があります。そして、経営者はスピードを重視する必要があります。スピードがあるということは、時代感覚を持っている証拠です。(中略)経営者が会社の経営改革について、矢継ぎばやに具体的な行動を起こしているか、よい会社であってもさらによくする努力をしているかどうかで、スピード感の有無を見ることができます
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というわけで、本日の一冊は、

『スリッパの法則』
http://tinyurl.com/5r7ol

です。200ページに満たない薄い本ということで、当初はさほど期待していなかったのですが、藤野氏の経営者を評価する視点、そしてその根底にある哲学に、私は大変興味を持ちました。

みなさんも、ぜひ読んでみてください。

目次

まえがき
序章 ファンドマネージャーだからわかる会社の真の姿
第1章 社長の性格や人格で決まる会社の運命
第2章 要注意!会社を滅ぼす危ない社長
第3章 ダメな会社、こんなところに落とし穴!
第4章 よい会社と悪い会社の分かれ道
第5章 常識にとらわれると判断を間違える
あとがき
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