http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901873210/
みなさんは、「セグウェイ」という名前を聞いたことがあるでしょうか? これは、ひと言で表現するなら、バランスを取りながら進む、ヒューマン・トランスポーター(人間輸送マシン)です。
コードネーム「ジンジャー」の名で極秘に開発が進められ、2001年には「謎の発明」として世界中を騒がせた、まったく新しいマシン「セグウェイ」。この技術とコンセプトは、天才発明家ディーン・カーメンによって生み出され、数多くの投資家、エンジニア、果てはスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾスといったカリスマ経営者をも巻き込み、ようやく2003年に陽の目を見ました。
日本では諸事情により普及せず、あまり商品としては認知されていませんが、その開発物語である本書は、刺激的で示唆に富んだ1冊に仕上がっています。
約600ページに及ぶ厚い本ですが、それもそのはず。著者のスティーブ・ケンパーは、1年以上におよび、ディーン・カーメン率いる開発チームに密着。綿密な取材をもとに、本書を書き下ろしているのです。
果たしてその内容はどうかというと…はっきり言って非常にためになります。そして刺激的です。
話はディーンの少年時代から、史上初の「薬剤注入ポンプ」の発明、「ジンジャー」の前身となる「フレッド」の開発、「ジンジャー」プロジェクトの立ち上げ、そして完成にいたるまで、を時系列で追い、イベントごとにまとめられています。
発明に異常なまでの情熱を燃やし続ける偏執狂のディーンと、彼を取り巻く大投資家、経営者、エンジニアたち。その丁丁発止のやり取りは、読んでいるだけでも手に汗握る思いです。
マネジメントチームの中でのいざこざや、事業規模が拡大するにつれて生じてくる問題なども、読んでいて参考になりますが、なんと言っても最高潮は、「ジンジャー」に惚れたスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾスを交えての大ブレイン・ストーミングでしょう。
このブレイン・ストーミングでは、「ジンジャー」の出来栄えに業を煮やしたジョブズが、彼一流の「3つのデザイン哲学」を提示する場面があるのですが、これがまた面白い。このアイデアがどの程度反映されたのかはよくわからないのですが、おそらくきちんと反映されていれば、もっとすごいヒット商品になったことでしょう。また、ベゾスも、投資家への対処法や商品化した際のマーケティングに関して、目からうろこのアドバイスを与えています。
「ジンジャー」プロジェクトの成否はともかくとして、こうした一流の経営者たちの鋭い視点・考え方を学べるのが、本書の最大の価値と言ってもいいでしょう。
本書には、このほか、幻となったスピルバーグ映画『マイノリティ・レポート』での露出、情報漏洩の際の大パニックなど、「ジンジャー」開発物語にまつわる刺激的なエピソードが満載です。
また、エピソードを通して、開発上のさまざまな論点が盛り込まれているため、実際の経営にも役立つ、示唆に富んだ1冊です。
文句があるとすれば、アメリカ人特有の冗長な言い回しや、本が厚すぎることぐらいでしょうか(笑)。
というわけで、本日の1冊は、
『世界を変えるマシンをつくれ!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901873210/
です。表紙に乗っている「セグウェイ」の写真を見て、「え、これ
なの?」と思うかもしれませんが、ぜひ読んでみてください。
目次
プロローグ 第一印象
第一章 開発
第二章 期限付きの夢
第三章 CEOモード
第四章 カエルたち
第五章 冬至
第六章 ライオンとエンジェル
第七章 タックとロール
第八章 ディーンされる
第九章 スリップ
第十章 シェイクスピアはもうたくさん
第十一章 認可機関
第十二章 もっとも苦難の少ない道
第十三章 帽子からウサギは出てこない
第十四章 いつでもすべてが関係している
第十五章 西海岸の待ち伏せ
第十六章 死の灰
第十七章 漏洩
第十八章 発表
エピローグ 空中の城
訳者あとがき
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