2011年11月13日

『訣別─大前研一の新・国家戦略論』大前研一・著 Vol.2671

【大前研一の国家戦略論とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023309826

本日の一冊は、大前研一さんが、ベストセラー『平成維新』以来、ひさびさに打ち出した国家戦略論。

※参考:『平成維新』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062044757/

1章、2章で日本の政治家、与党の政策を叩いた後、日本が混迷している原因の分析、それから、進むべき道を説いています。

江戸時代(幕藩体制)からの訣別、明治時代(行政改革)からの訣別、戦後体制(成長モデル)からの訣別といった「三つの訣別」、さらには「変人特区」「グレート・ソサエティ構想」など、斬新な政策提言がなされています。

「変人特区」というのは、日本版一国二制度のことで、変人知事や変人市長が独自の行政構想を打ち出している自治体に土地の使い方などの権限を与えて、自由な発想で都市再開発や産業政策をやらせる方法。

国全体でやるのが難しければ、まずは部分的に成功事例をつくる、という考え方です。

そして、「グレート・ソサエティー構想」というのは、イギリスのキャメロン首相が推進している「大きな社会(ビッグ・ソサエティー)」の日本版のことで、社会政策の多くを慈善団体や社会起業家などに委ねる構想のこと。

「税金を納めるのも大切だが、税金でやってきたことを減らすのに貢献した人や組織に対して制度的に報いていくのである」という考え方は、これから現実的になってくるのではと思います。

タイトル的に、政策に関する内容がほとんどと思う向きがあるかもしれませんが、実際には、ビジネスや個人のキャリア、子どもの教育に役立つ記述も多く、これからの人生設計に役立ちます。

ぜひチェックしてみてください。

————————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
————————————————————

偏差値に縛られなかった我々の時代は、皆、自分の未来は無限だと思っていた

答えのない時代に必要なのは考える力であり、決断力や判断力、そして行動力である

日本人は貯蓄好きな民族といわれるが、それは昔の話だ。二〇年ほど前は日本の可処分所得に対する貯蓄率は約15%だったが、二〇〇七年には一・七%まで低下した

家計の大きな負担になっているのは住宅ローンと教育費とマイカーの購入費(維持・管理費)である。この三つをうまくやりくりした人とそうでない人では、生涯で一億円くらいの差が生じてくる

子どもにかける教育費の半分でもいいから、自分や配偶者に投資すべきだと私は考える。そうすることで世帯としての「稼ぐ力」が上がれば、結果的によりよい教育を子どもに授けることができる

夫婦で稼ぐ能力を磨いてダブルインカムが倍増すれば、単独で流れのままに稼いでいたころに比べて世帯収入が四倍になる

かつての日本人ビジネスパーソンは現地に骨を埋める覚悟で海外に飛び出した。次男、三男が多いから食うために自分で道を切り開くのは当然だと考えていたし、後顧の憂いもあまりなかった。いい意味でリスクを取る生き方ができたのだ

優秀な「移民」を厳選して、日本の文化や生活習慣に適応できるように受け入れ教育をしながら、少しずつ慎重に受け入れていくことが非常に重要

仁川空港に投資を一極集中することで東アジアのハブ空港としての地位を着々と築いている韓国に対して、日本では甘い需要予測をもとに作られた地方空港が乱立し、国が管理する空港も地方自治体が管理する空港も大半が赤字を垂れ流し続けている

確実な少子高齢化と円高リスクの未来を思えば、国内だけでものづくりを完結しようとすることに無理があるのであって、日本から資本を持ち込んで、アジアの国々を第二、第三のものづくりの故郷にしていくことを考えるほうがはるかに現実的

地下資源や原油に恵まれているわけでもなく、農産物も満足に取れない。そんなシンガポールが豊かさを享受できている理由は何か。それは繁栄の源泉を世界に求めたからだ

キャメロン首相は政府債務を膨らませ、官僚主義による効率の低下を招いてきた労働党の「大きな政府(ビッグ・ガバメント)」政策から脱却するための理念を提唱した。それが「大きな社会」である。「大きな社会」とは、社会政策の多くを慈善団体や社会的起業家などに委ねる構想だ

「税金を納めるのも大切だが、税金でやってきたことを減らすのに貢献した人や組織に対して制度的に報いていくのである」

————————————————
『訣別─大前研一の新・国家戦略論』大前研一・著 朝日新聞出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023309826

————————————————-

◆目次◆

第一章 迷走する日本
第二章 混迷の原因はどこにあるか
第三章 このままいけば日本は衰退する
第四章 三つの訣別
第五章 まず、小さな勝利を積み重ねる
第六章 そして、ゼロベースの大改革を断行せよ

この書評に関連度が高い書評

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー