【『フリー』『シェア』に続く注目作】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140815132
本日の一冊は、『フリー』『シェア』に続く、注目作。
※参考:『フリー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140814047/
※参考:『シェア』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140814543/
世界的ベストセラーとなった『グーグル的思考』の著者であり、2007年、2008年の世界経済フォーラムで「世界のメディア・リーダー100人」の一人に選ばれたジェフ・ジャービスが、「パブリック」(オープン戦略)について語った、注目の一冊です。
ユーザー数が世界で8億人を突破し、日本でも市民権を得つつあるフェイスブックの影響で、プライベートとパブリックの境界線が急速に失われつつある現在、われわれは、何をオープンにし、何をクローズにすべきなのか。
本書は、その問題に、真正面から切り込んでいます。
著者は、工業社会で生まれた「完全神話」が、「リスクとイノベーションを遠ざけ、オープン性と発明に水を差す」と指摘し、オープンにすることでより良い商品を開発できる可能性と、顧客を味方につける優位性を主張しています。
インターネットに関する限り、人はプライバシーの問題をテクノロジーの問題に転化しがちですが、実際には、<あなたが秘密を打ち明けた友達が、もしそれを誰かにもらしたとしたら、問題はその友達を選んだことだ。だから責任はテクノロジーではなく僕たちにある>。
本書では、そんなわれわれのプライバシー論の欠陥を指摘し、これからの個人、そして企業がどこまでパブリックを追求すべきか、その点を徹底的に議論しています。
グーグルがアンドロイドOSをオープンにしてiPhoneに対抗したことを挙げ、オープン戦略の優位性を指摘したり、既に始まったユーザーのパブリック化の動きを紹介したり、インターネットをマスメディア、工業社会の文脈で見る人々にどんどんゆさぶりをかけてきます。
161ページ以降にまとめられた「プライバシーとパブリックの倫理」そして238ページ以降にまとめられた「スーパー・パブリックカンパニー」の概念は、インターネット社会で情報をどう発信するか、どんな企業が望まれるかを知る上で、参考になると思います。
ただ、ハーバード・ビジネス・スクールのアンドレイ・ハギウ教授と、平野敦士カールさんがまとめた『プラットフォーム戦略』にもあるように、「オープン戦略」自体は、一つの打ち手に過ぎない。
※参考:『プラットフォーム戦略』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492532749/
この点を理解しつつ読むのであれば、興味深い示唆を与えてくれる論考だと思います。
訳文も読みやすく、事例も豊富なので、読み物としても楽しめる一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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公私の境目は、僕らが選ぶことだ。人目にさらすかどうか、シェアするかどうか、参加するかどうか
未知なるものを恐れるあまり、リンクの網から自分を切り離す時、僕らは、人として、企業として、組織として敗北することになる。自らをオープンにすれば、僕らは学び、つながり、協力する機会を得る
パブリックであることは、情報とその受け手への統制を権力の基盤とする機関を脅かす。既存勢力がこの変革に抵抗し、その危険を警告するのはそのためだ
「でも将来は、情報が個人のアイデンティティと結びつくはずだし、そうなることで価値がより高まるはずです」(ザッカーバーグ)
企業は、自社の価値を、所有物の値段(デジタルな世界では、所有物は資産ではなく負債になりつつある。本屋の店舗や棚、郵便局の支店とトラックがいい例だ)ではなく、つながりの質で測るようになるだろう。つながりは企業秘密より大きな価値をもつようになるだろう(シェアすることで顧客が何を本当に求めているかがわかるなら、凡庸なデザインを製品発表まで隠し続けることに価値があるだろうか?)
パブリックな存在になることでのみ、人はこの世界に足跡を残せる
この本を執筆中に、ニュージャージー州のラトガース大学で悲劇的な出来事が起きた。新入生のタイラー・クレメンティのルームメイトが、他の男性と寮室でいちゃついているクレメンティの画像を流したのだ。クレメンティは橋から飛び降りて自殺した。ルームメイトと、そのいたずらを手伝ったと言われる友達は、大学を辞めた。(中略)この事件から学ぶべきことは、いつもと同じことだ。自分がしてほしくないことは、他人にしてはいけない
プライバシーとは「知る」倫理だ。パブリックとは「シェアする」倫理だ
◆プライバシーの倫理 ※一部紹介
・情報を盗まない
・その情報であなたが何をするつもりかをはっきりさせる
・情報源を明らかにする
・自分の情報にアクセスできるようにする
◆スーパー・パブリックカンパニー
・すべての社員にネットというパブリックなツールを使って、顧客と直接的で開かれた関係をもつことを──つまり質問に答え、アイデアを傾聴して実行し、問題を解決し、製品を改善することを──奨励する
・製品とプロセスについてできる限り多くのデータを公開する
・コラボレーションを行なう
・広告なしでやっていける。顧客に製品を売ってもらうことによって
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『パブリック』ジェフ・ジャービス・著 NHK出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140815132
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◆目次◆
イントロダクション──大公開時代
パブリックの預言者 マーク・ザッカーバーグ
パブリックの選択
<パブリックネス>のメリット
プライベートとパブリック その歴史
パブリック・メディア
プライバシーとは何か?
僕らはどこまでパブリックだろう?
パブリックなあなた
シェア産業
スーパー・パブリックカンパニー
人民の、人民による、人民のための……
新しい世界
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