2011年8月5日

『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』 安西洋之、中林鉄太郎・著 vol.2571 

【これは秀逸。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822248631

「ベストセラーになる本はわからなくても、ベストセラーにならない本は99%当てられる」

これは、アマゾンでバイヤーをやっていた時代から、土井が周囲によく言っていたことです。

なぜ売れない本がわかるのか?

それは、売れない本は、より大きなマーケットを捉えるための言語と理解を欠いているからです。

会計なら会計、ITならIT、医学なら医学の世界に閉じこもっていて、他者に伝わることがないから、売れないのです。

言語は、いわば磁石のようなもの。人を引きつけることもできれば、遠ざけることもできる。

そしてその磁石のベースとなるものは、他者への理解と自己客観化だったりするのです。

だから、今後日本企業がグローバル化する上で、この他者への理解と自己客観化は必要不可欠。

自社商品の特性を理解し、相手の生活習慣に合わせたローカリゼーションを行うことが重要なのです。

本日の一冊は、イタリア在住のビジネスプランナー安西洋之さんと、桑沢デザイン研究所を経てプロダクトデザインの専門家として活躍する中林鉄太郎さんが、世界に通じる商品開発、マーケティングのコツをまとめた、注目の一冊。

「肉に合う醤油」を開発してシェアを伸ばしているキッコーマンやカップ麺をメキシコの国民食に変えたマルちゃん、教会を拠点に普及活動を行った公文…。

数多くの成功例が、各企業のグローバルマーケティング担当者への取材をもとに語られる、じつに興味深い内容となっています。

国による文化の違いや、生活習慣の違いが、どのようにビジネスチャンス、そしてリスクにつながっていくか、ここまで明確に示した本はおそらくこれまでになかったと思います。

世界進出を考えるビジネスマンの必読書として、ぜひ広く読まれて欲しい一冊です。

————————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
————————————————————

米国人の舌をがっちりと捉えたのは「肉に合う醤油」であり、「寿司につける醤油」ではなかった

米国ではバーベキュー用のタレとして「テリヤキ」があり、米国市場向けのローカリゼーション商品になっている

慣れや学習が、寿司への態度を変えていくのだ。すなわち、問題は味だけではない

米国の文化人類学者であるエドワード・T・ホール氏は、その著書において「パリの子供たちは道の名前を銅像や記念碑があるところで変わると覚える」と書いている。日本では考えられない道の覚え方だ

ケータイにおける動作ロジックより白物家電のほうが、文化差が出る。新しいジャンルの商品より、従来からある生活習慣に馴染んだ商品のほうが、伝統的文化要求をより内包していることが多い

1発目に「この会社、本当、俺たちのことを何にも知らないで出したんだね。商品改善の文句を言う気にもなれない」と思われないことだ。質の高いフィードバックは、相手の期待度と近似値でこそ返ってくる

キッコーマンの醤油はヨーロッパ市場の成長率が著しく、ここでの動向が注目される。オランダの工場はフル回転だ。2009年の醤油の海外販売を地域比率でみてみると、75%が北米、アジア・オセアニアが15%、欧州は8%と小さい。しかし、伸び率は欧州が断トツだ

『マルちゃん』がメキシコで支持を受けました。その理由は、アメリカに出稼ぎに来ていた移民が、家族や友人へのお土産として軽量のカップ麺を大量に持ち帰ったことが1つの要因(食評論家の横川潤氏)

(ヨーロッパでは)冷蔵庫は、デザイン性や収納性などで、商品価値が判断されます。一方、洗濯機は、より品質面での信頼感が重要視(パナソニックホームアプライアンス社の斉藤哲志氏)

現在、公文が英国で展開する学習センターの95%は教会内にある

日本で香水は化粧品の一部として売られ、売り上げは全体の2~3%にしかならない。しかし、ヨーロッパでは香水ははっきりと独立したポジションにあり、化粧品との売り上げ比率はほぼ同じだ

多くのアメリカ人は出張で空港に着いたら、その場でレンタカーを借りて移動する。ところが、ナビ付きのレンタカーは料金が割高なので、出張の多い人はPNDが必需品になっている(リサーチ会社ベルウッドの鈴木喜千也氏)

————————————————
『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』安西洋之、中林鉄太郎・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822248631

————————————————-

◆目次◆

INTRODUCTION グローバル時代に欠かせないローカリゼーションの視点
CHAPTER1 世界のお客さんの「頭の中」
CHAPTER2 世界で売れる8つの日本製品
1.キッコーマンの醤油は「日本食」ではなく
「グローバルスタンダード商品」
2.「マルちゃんする」とメキシコで独自解釈されたカップ麺
3.「腑に落ちなくても従う」パナソニックの欧州白物家電戦略
4.外国人だって洗ってほしい? TOTOが目指す世界制覇
5.世界の親を熱狂させる公文式「超国家」学習法
6.スマートフォンに現地化は不要? ソニー・エリクソンの戦略
7.ヴェルサイユ宮殿の村上隆
8.フランス人になりきろうとしたシェフ松嶋啓介
CHAPTER3 現地化のチェックポイント
CHAPTER4 ローカリゼーションマップを作る

この書評に関連度が高い書評

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー