2022年8月25日

『子どもは40000回質問する』イアン・レズリー・著 須川綾子・訳 vol.6066

【必読です。】
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本日ご紹介する一冊は、ノンフィクション作家で、BBCのコメンテーター、フィナンシャル・タイムズへの寄稿などでも知られる、イアン・レズリー氏による話題書の文庫化。

単行本が出された当時、なぜか興味を持てなくてスルーしていたのですが、読んでみて素晴らしい本だと思いました。

邦訳は、『子どもは40000回質問する』という、教育書あるいは科学書を思わせるタイトルですが、原題は『CURIOUS The Desire to Know and Why Your Future Depends on It』で、自己啓発的な要素もある内容です。

「40000回」というのは、子どもが2歳から5歳のあいだに「説明を求める」質問を計4万回行うという心理学者ミシェル・シュイナード氏の推定で、本書では人間の知的好奇心や知性がどうやって育てられていくのか、その秘密を紐解いています。

読んでいて驚いたのは、赤ちゃんが喃語(なんご:「アー」「ウー」というやつ)を発したタイミングで物の名前を教えると、覚える確率が高まるということ。

同様に、指さしにも学習を促進する効果があるようで、本書によると、「子どもが指さしを行う頻度は、言葉の習得の速さと関係している」そうです。

恐ろしいのは、この学習の過程で、親が子どもにきちんと反応しないと、学習が遅れ、好奇心が育たなくなってしまう恐れがあるということ。

本書には他にも、われわれの好奇心に影響をあたえるさまざまな因子について説明があり、教育者、親は読んでおくといいと思います。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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ミステリーはパズルより難しいが持続性がある。ミステリーによって持続的な好奇心が刺激されると、私たちは自分の知らないことに意識を集中し続けることができる。そして好奇心は、暗闇のなかで手探りしているときも、「充実感と意欲」を保つ原動力になるのである

インターネットにはミステリーをパズルに変え、パズルを瞬時に答えが出る疑問に変える性質がある

ベーコンは「科学、芸術、人類のあらゆる知識の大掛かりな再構築」の時代が到来したと告げた。そして、新しい時代の知識はすでに存在する抽象的な概念に磨きをかけるのではなく、観察に基づいて築かれなければならないと強調した

高所得層の家庭の子は、低所得層の子より多く質問する

どの時代においても「実験的授業」より、大人が指導する昔ながらの方法のほうが子どもたちは多くのことを効率的に学んでいた

創造性は空白から生まれるわけではない

知識こそが、創造性と好奇心の源泉

学校が知識のデータベースの構築を放棄するなら、多くの子どもたちは自分がまだ何を知らずにいるのか知らないまま成長する危険がある

組織の将来性を占ううえで重要な手掛かりとなるのは、そこに所属する人々に自分たちの知らないことを知ろうとする姿勢があるかどうかだ

洞察は情報の「収集」と「検証」から生まれる

ビャルニが従えていた乗組員が緑に覆われた土地を探索してみたいと思ったのは、大きな富や、思いのままになる乙女が待ち受けているのではないかと夢見たからだろう。だが、ビャルニには果たすべき約束があった

私たちが生まれながらにして抱えている自分自身への執着から自由になるには、他人について好奇心を働かせるしかない

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正直、本書を読む限り、現在の日本の教育改革は間違った方向に進んでいる懸念があり、教育関係者はぜひ読んで欲しい内容だと思いました。

ビジネスパーソンにとっては、どうすれば好奇心あふれる人生にできるか、どうすれば自分の組織が好奇心を失わずに済むのか、良いヒントが得られると思います。

380ページ超と、決して薄い本ではありませんが、面白くてラストまで一気に読みました。

ぜひ、読んでみてください。

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『子どもは40000回質問する』イアン・レズリー・著 須川綾子・訳 光文社

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◆目次◆

はじめに 「知りたい」という欲求が人生と社会を変える
第1部 好奇心のはたらき
第1章 ヒトは好奇心のおかげで人間になった
第2章 子どもの好奇心はいかに育まれるか
第3章 パズルとミステリー
第2部 好奇心格差の危険
第4章 好奇心の三つの時代
第5章 好奇心格差が社会格差を生む
第6章 問いかける力
第7章 知識なくして創造性も思考力もない
第3部 好奇心を持ち続けるには
第8章 好奇心を持ち続ける七つの方法
おわりに さあ、知識の世界を探究しよう
謝辞
補足
訳者あとがき
参考文献

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