2022年8月30日

『働く悩みは「経済学」で答えが見つかる』丸山俊一・著 vol.6069

【「毎日しんどい」の原因がわかる】
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本日ご紹介する一冊は、現代資本主義における生きづらさの原因を、マルクス、アダム・スミス、ケインズ、ヴェブレンなど、17人の知の巨人に聞いてみる、という設定の本。

著者は、NHKエンタープライズエグゼクティブ・プロデューサーで、東京藝術大学客員教授も務める丸山俊一氏です。

「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題のニッポンの教養」「ソクラテスの人事」はじめ、数々の教養エンターテインメント企画を作ってきた人物で、現在も「欲望の資本主義」「欲望の時代の哲学」などのプロデュースをしています。

今回の書籍はフィクションですが、現代人の悩みに知の巨人たちの理論を持って答えるとこうなる、という内容で、働きがいを感じられない方、生きていてしんどいという方には、その原因がわかる内容です。

システムの中で消耗しないためには、自分が置かれた状況やシステムを客観視することが不可欠。

その点本書は、われわれが身を置く資本主義というシステムの本質に迫った内容で、なぜ今デジタル時代になって急速に格差や疎外が進行しているのか、その理由がわかります。

新しい時代の旗手たちは、もちろんこうした問題点を知っていて、あえて綺麗事を言っているはずですが、真面目な人はそれに乗せられて疲弊してしまいますよね。

そうならないためにも、こういった理論の基礎は、ぜひ押さえておきたいところです。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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「自分の使用価値は変わっていないのに交換価値だけが増えるのって、なんだか悪いことをしているような気がしてしまいます」

本来、労働それ自体は人間にとって、生きるエネルギーを生み出すことに直結するような、生存に対して過不足なく必要な、豊かな営みであるはずです。その豊かな営みである労働は、人間が自分で考える構想の作業、すなわち“精神的労働”と、実際に自らの身体を動かして行う実行の作業、すなわち“肉体的労働”が統一されたものだったはずなのです。しかし、どうでしょう……、商品を生むプロセスが細分化していくにつれて、あるいは会社組織が強固になっていくにつれて、この構想(精神的労働)と実行(肉体的労働)が分離され、資本家が構想を独占し、労働者が実行のみを担うことになっているのではないでしょうか(マルクス先生)

大体、進歩という概念など、簡単に信じてはいけないのです。頭で考えることには限界がある。むしろ人間は、身体のレベルで、手作業などによって試行錯誤し、いったい何を目指しているか、この今手で触れているものをこねていることによって何が生まれるのか、自分でもよくわからないままに、その過程を楽しむうちに、そこで生まれるものの可能性を発見していくものなのです(レヴィ=ストロース先生)

理性は情念の奴隷です。感情が行為の目的を設定しているのですし、行為を倫理的に評価するのも、私に言わせれば、究極的には感情です。倫理的判断も感情から逃れられないのです(ヒューム先生)

“現在だけしか知らない”ことと、“過去も知っている”ことと、いったいどちらのほうが人間を保守的にすると思いますか? 答えは、断然、現在だけの人です(ケインズ先生)

現代の疲労には原因がないのですよ。経済、知識、欲望、肉体、記号、衝動など、本当にあらゆるレベルで競争の原理が貫徹してしまい、すべてのものが、差異化と超差異化の絶え間ない過程において交換価値として生み出されるのですから(ボードリヤール先生)

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エシカル消費やパーパス経営など、最近流行りのキーワードに冷静な批判を加えていて、じつに痛快な内容です。

また、現代人の生き方についても、交換価値を上げることにばかり夢中になって味わうことを忘れた、と厳しい批判を加えています。(「リンゴを高く売ることに夢中になっているうちにリンゴの味を忘れた?現代人」)

新しい社会経済システムが導入されると、決まって不適合を起こす人がいますが、本書はわれわれが今身を置いている資本主義社会、そしてデジタルが加速するこれからの社会経済システムの本質的問題を指摘した本だと思います。

お金や社会とどう付き合っていくか、いい塩梅を知りたい方は、ぜひ、読んでみてください。

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『働く悩みは「経済学」で答えが見つかる』丸山俊一・著 SBクリエイティブ

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◆目次◆

はじめに 今の時代の働き方に悩むすべてのみなさんへ
第1章 マルクス先生、今働くって、何ですか?
第2章 アダム・スミス先生と社会善のユウウツ
第3章 ケインズ先生、データ、AIは光ですか?
第4章 ヴェブレン先生、毎日疲れるのも資本主義のせいですか?
第5章 斎藤幸平先生、やっぱり資本主義じゃダメですか?

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