2023年8月1日

『人気no.1にダマされないための本』小林直樹・著 vol.6288

【調査結果を正しく読める人になる】
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本日ご紹介する一冊は、高校教科書「新編 論理国語」(大修館書店 令和5年度新刊)にも採用された、『だから数字にダマされる』の著者、小林直樹さんによる新刊。

『だから数字にダマされる』
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著者は、「日経クロストレンド」の記者で、日々マーケティングの宣伝文句、各種調査と格闘している人物。

本書では、そんな著者が、各種メディアで発表される調査結果の正しい読み方、詐欺まがいの宣伝文句にダマされない方法を説いた、興味深い一冊です。

タイトルにもなっている「人気No.1」や、「日本はこんなにダメ」という結論になりがちな国際比較調査、評価基準を知らないと危ない都道府県ランキングなど、一般読者が鵜呑みにしがちな調査の裏側を丁寧に解説し、実態を正しく掴むアドバイスをしています。

「若者の○○離れ」や投票率、出生率のカラクリなどにも触れており、じつに勉強になりました。

個人的には、かねてから問題視していた地方の魅力について、大事な点に言及しており、じつにスカッとしました。

その問題というのは、「住んだ満足度と観光の魅力度は違う」というものですが、本書では、「魅力的だと思う」と「観光に訪れたい」はほぼ一致という見解を載せており、地方創生の問題を浮き彫りにした格好です。

検証されている調査結果は、この数年、ほとんどの方がメディアで見聞きした内容であり、自分が正しく読み解けていたか、検証する材料としても面白いでしょう。

統計データを正しく読むには、その調査方法や評価基準がもたらすバイアスにも気を配ることが大事。

ネット社会を生きる若い世代にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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「No.1を取らせてナンボ」の調査会社が現れ、顧客が希望する結果を恣意的につくり出す、正当な調査とは言い難い調査ビジネスがはびこるようになった

安易なNo.1表記は、企業にとってかえって逆効果になり得る。No.1であることを合理的、客観的に実証できなければ、景表法に抵触する可能性がある

実際、オリコンの顧客満足度ランキングのページで楽天モバイルの「評判・口コミ」を見ると、利用者の声で「良い点」として、多くの人が無料キャンペーンに言及している。一方で、「つながりやすさ」は楽天モバイルが4キャリア中4位だったことも分かる

国内でプラスのスコアが出るケースは珍しい。NPSを導入した企業の大半が、マイナス2桁という見慣れないスコアに少なからぬショックを受けることになる

他国と比べると、日本の回答は群を抜いて保守的で厳しい

P&G出身の敏腕マーケターが集うマーケティングコンサルティング会社、M-フォース(東京・渋谷)は21年3月、マーケットシェア拡大に有効なKPI(重要業績評価指標)として、「次回購買意向(NPI:Next Purchase Intention)」が、認知度や好感度、満足度、そしてNPSよりも相関が強く有効という結果を発表している

■スマホ操作方法に関する調査
日本で最もポピュラーなのは「左手持ち・右手人さし指操作」で、25.6%を占める。ところが他の10カ国でこれが主流の国は1つもない

大東建託は、当該県居住者にとっての魅力を構成する要素、非居住者にとっての魅力を構成する要素を分解して尋ねて結果をマージすることで、総合的な魅力度を算出している。これに対してブランド総研の魅力度調査は、何の魅力を重視して回答するかは回答者任せだ

「魅力的だと思う」と「観光に訪れたい」はほぼ一致

若者の投票率を上げるには、まず周囲の大人が投票に行くこと。これに尽きる。山形県は、若者の投票率を左右する因子を早くから見抜いてアンケート結果から立証に取り組み、“家族ぐるみ”の投票を呼びかけたことが成果につながっている

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表紙の怪しい雰囲気とは裏腹に、極めて真面目な本で、好感が持てました。

マーケティング誌の記者が書いていることもあり、マーケター、経営者にもおすすめの内容です。

ぜひ読んでみてください。

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『人気no.1にダマされないための本』小林直樹・著 日経BP

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◆目次◆

はじめに
第1章 人気No.1にダマされないために
第2章 世界VS日本… 国際比較調査の落とし穴
第3章 都道府県ランキングに一喜一憂するなかれ
第4章 「若者の○○離れ」のウソ・ホント
第5章 調査結果は「つくれる」か?
第6章 過去との比較なら調査条件を要確認
第7章 ネットで分かる栄枯盛衰
おわりに

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