2023年7月13日

『犬は「びよ」と鳴いていた』山口仲美・著 vol.6276

【オノマトペの名著】
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『言語の本質』が売れ、オノマトペに注目が集まっていますが、オノマトペといえば有名なのは、埼玉大学名誉教授、山口仲美(やまぐち・なかみ)さんの名著、『犬は「びよ」と鳴いていた』。

『言語の本質』
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じつにマニアックなオノマトペ研究本ですが、このタイミングで文庫化されたというのが面白いですよね。

本書では、オノマトペの歴史的研究で知られる著者が、歴史的文学作品や辞書などを引きつつ、日本語の擬音語・擬態語の変化を論じています。

例えば、「わんわん」で定着している犬の鳴き声は、じつは江戸時代からのもので、平安時代は「ひよ」(当時は濁音表記がないので本当は「びよ」)。これが江戸時代中頃まで使われていたというから驚きですよね。

馬の鳴き声も、平安時代は「イン」で、江戸時代から「ヒン」になったなど、衝撃の内容が書かれています。

本を作る立場からすれば、こういうのを参考にして、新しいオノマトペを開発したい衝動に駆られますね。

著者によると、平安時代の文献では、『今昔物語集』が擬音語・擬態語の宝庫だそうなので、これはチェックしてみたいところです。

本書43ページから50ページには、この『今昔物語集』で使われている擬音語・擬態語が一覧で載っていますが、これを見ると、昔の人とわれわれでは、随分と捉え方が違っていたんだなと思います。

われわれの思考や感覚は、じつは言葉の影響を強く受けています。

われわれの生きる時代がどんな音で彩られているのか、その影響はどうなのか、客観視する上でも、面白い読み物だと思います。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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英語では擬音語・擬態語が三五〇種類しかないのに、日本語ではなんと一二〇〇種類に及ぶ

「東方に朝日がつるつると出たれば」(『毛詩抄』)

最初にひっかかったのは、平安時代の『大鏡』に出てくる犬の声です。「ひよ」って書いてある

「ココ」は、猿が食べ物を食べている時の満足そうな声を写したもの

「ニココニ」という擬態語があります。現代語で言えば「ニヤニヤ」「ニタニタ」って感じの語

擬音語・擬態語を掛詞にして二重の意味をもたせる。おしゃれです

「あざあざ」というのは、色彩が鮮明で目のさめるような派手やかさを意味する擬態語。『源氏物語』初出の語ですが、紫の上という特定の人物の形容だけにこの語を用いています

『源氏物語』には、黒髪の描写として「つやつや」と「はらはら」と「ゆらゆら」の三種の擬態語が出てきます

「すくすく」「そよそよ」「つやつや」[ABAB]型が日本代表

『今昔物語集』に登場する擬音語・擬態語 ※一部紹介
イガイガーー赤子の泣き声
エブエブーー嘔吐の音
ガサーー人がおびえてはね起きる音
ザブザブーー食物を器から口にかきこむ音
ツブリーー水の中に飛び込む音
ヒターー相手の体に密着するさま

電子音に限らず、現在はさまざまな機械音であふれかえっています

私たち人間のたてる声も、三〇年前よりも笑い声が目立っています

「わんわん」は江戸時代初めから

昔は濁音表記がなかった

猫は「ねうねう」と鳴いていた

「猫」には遊女の意味も

日本人は、鼠の声も雀の声も、室町時代までは「しうしう」と聞き、江戸時代以降は「ちいちい」「ちうちう」とまた同じ言葉で聞いてきた

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平安時代、江戸時代と聞いて、小難しい本を連想される方もいらっしゃると思いますが、そこはまったく問題ありません。

文章が読みやすい上に、コミカルなイラストや漫画のワンシーンも入っているので、楽しくオノマトペの世界を冒険できると思います。

文章を書く人にとっては、どうやって擬音語・擬態語を作るか、その型も示されているので勉強になると思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『犬は「びよ」と鳴いていた』山口仲美・著 光文社

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◆目次◆

第一部 擬音語・擬態語の不思議
(1)擬音語・擬態語に魅せられる
(2)擬音語・擬態語のかたち
(3)擬音語・擬態語の寿命
(4)擬音語・擬態語の変化
(5)掛詞で楽しむ擬音語・擬態語
(6)辞典の中の擬音語・擬態語
第二部 動物の声の不思議
(1)昔の犬は何と鳴くーー犬ーー
(2)ニャンとせうーー猫ーー
(3)チウき殺してやらうーー鼠ーー
(4)モウモウぎうの音も出ませぬーー牛ーー
(5)イヒヒンヒンと笑うて別れぬーー馬ーー
(6)われは狐ぢゃこんこんくゎいくゎいーー狐ーー
(7)ももんがの鳴きやうを知らぬーーモモンガーー
(8)美し佳しと鳴く蝉はーーツクツクボウシーー
エピローグ
あとがき 文庫版刊行にあたって
索引

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