2023年6月13日

『変化を抱擁せよ 人が増えても速くならない』倉貫義人・著 vol.6254

【ソフトウェア開発の前に】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4297135655

本日ご紹介する一冊は、ソフトウェア開発のプロフェッショナルが書いた、ソフトウェア開発における生産性の話。

かつて読んで感銘を受けたトム・デマルコの『ゆとりの法則』『ピープルウェア』を思わせる一冊です。

※参考:『ゆとりの法則』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822281116

※参考:『ピープルウェア』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822285243

著者は、ソニックガーデンの創業者で、2018年から「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムに社外取締役として参画。

クラシコムは、ECだけにとどまらず、メディアを持ち、オリジナルのWebドラマやラジオなども展開する会社で、社内でソフトウェアも内製しています。

著者は、そのクラシコムのエンジニアチームと協同し、より良いソフトウェアを作るよう、尽力しているようです。

本書では、そんな著者が長年の経験をもとに、ソフトウェア開発の生産性について述べています。

・人を増やしたからといって、速く作れるわけではない
・正確な見積もりを求めたら、見積もりが膨らんでしまう
・一度に大きく作ろうとするほど、結局は損をしてしまう

発注する側が何を知っておくべきか、受注側とどんな関係性を構築するべきか、どうすれば、不確実なソフトウェア開発の現場で生産性を高められるのか…。

ブルックスの名著『人月の神話』を引きながら、「銀の弾丸はないが、“金の弾丸”なら有効なときがある」と述べられた部分は、特に注目したいところです。

※参考:『人月の神話』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4621066080

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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システムは使い始めてから改善が始まる

事業の改善を続けていくなら、当然ながらシステムもずっと改修していく前提で作ったほうがいい

◆システムが動き始めてからの修正を難しくする2つの原因
(1)行きあたりばったりで改修を加えてしまう
(2)一度きりの完成を目指してしまう

プロジェクトからプロダクトの考え方に変える

プロダクトという共通の成果物と、目指す共通の目標を持つことで、システムは「依頼して作ってもらうもの」から「協働して一緒に作るもの」に変わります

2倍の予算があっても2倍の生産性にはならない

遅れているプロジェクトに人を追加すると遅れる3つの理由
(1)あとから入った人の情報や知識のキャッチアップと、その人たちへの教育にコストがかかる
(2)関わる人数が増えると、メンバー同士でのコミュニケーションにかかる時間が増えてしまう
(3)タスクを分解するにも限度がある

生産性を比較的容易に高める2つの方法
(1)高い生産性を出せるような環境を用意する
(2)クラウドに移管したうえで、クラウドの性能を増強する

速く作ることはできないが、速く作れるチームは作れる

チームの哲学や文化が揃っていることが大事

エンジニアたちとコミュニケーションするときには、ただ作ってほしい機能について話すだけでなく、「その機能がなぜ必要なのか」「事業にとってどういう意味があるのか」といった思いや理由について伝えたほうが、良いプログラムを作ってもらえるはず

同じソフトウェアを複数人で同時改修するのは非効率

シンプルで小さなソフトウェアでいたほうが、不具合の数も少なくなる

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ソフトウェア開発の実際について、当事者目線で書かれた、洞察力に優れた内容だと思います。

問題点があるとしたら、結局、ソフトウェア開発は良心的で開発力のあるところに任せるしかないという結論に落ち着いてしまうこと。

そしてそういう業者さんには仕事が殺到し、そうでない業者からは、info@宛に大量の営業メールが届く(苦笑)。

業者選びのコツとか、開発者の哲学の問題とか、もうちょっと言語化してくれたらさらに良かったと思います。

とはいえ、経営者も含め、ソフトウェア開発に関わる方にとっては、響く内容だと思います。

ぜひ、チェックしてみてください。

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『変化を抱擁せよ 人が増えても速くならない』倉貫義人・著 技術評論社

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◆目次◆

はじめに
1章 完成しても、終わりではない
2章 人を増やしても速く作れるわけではない
3章 たくさん作っても生産性が高いとは言えない
4章 人に依存せず同じ品質で作ることはできない
5章 プレッシャーをかけても生産性は上がらない
6章 見積もりを求めるほどに絶望感は増す
7章 一度に大きく作れば得に見えて損をする
8章 工程を分業しても、効率化につながらない
おわりに
参考文献

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