2023年1月4日

『西洋アートのビジネス史』高橋芳郎・著 vol.6148

【新年第一号】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/491028625X

先日、東京で朝から並び、「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ | 展覧会」に行ってきました。

クリスチャン・ディオール氏は、パリ政治学院を卒業し、画商からキャリアを始めたという異色のキャリアだったそうで、そのことも彼の革新性に寄与したかもしれないなあ、などと考えながら、美しいドレスを眺めていました。

本日ご紹介する一冊は、多摩美術大学を卒業し、同じく画廊の経営者を務めている著者が、西洋アートのビジネス史を解説した一冊。

西洋美術がいかにして「審美的価値」「社会的価値」「経済的価値」を獲得していったのか、アートの歴史をわかりやすく解説しており、ビジネスをする上で肝となる「価値」について考えさせられる一冊です。

メディアやブランディング、博覧会といった価値を高めるための装置、社会制度、国家、画廊経営者による支援など、西洋アートの価値を決定づけたさまざまな要因を知ることができ、日本のこれからの政策やビジネス創出のヒントとなり得る内容です。

資産としてアート購入を考えている人も、一読しておくと勉強になると思います。

単に教養として読んでも面白く、世界史の授業ではわからなかったアート史の流れが、一発で頭に入りました。

美術館に行くのが好きな方は、本書を読んでから行くとより理解が深まると思います。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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狭義のアート
・市場や権威に認められたもの
・実用性がないからこそ素晴らしいもの
・作品の存在そのものに感動を覚える
・自らの内なる衝動によって制作されたもの
・作者の名前がわかっているもの
・「誰の作品か」に価値を見出す

作家性が重視される現代のアートにおいては、自分の意志で制作する作品の格が高くて、依頼主からの注文を受けて作る作品は格が低いと考えられています

日本の襖絵や、中世の宗教画が、狭い意味でのアートに入らないのは、それらが装飾や教育などの意味を持つ実用品だからです。どちらも、広い意味ではアートと呼ばれていますが、狭義のアートではありません

なぜあれだけ栄華を誇ったギリシャ・ローマ文化が西ヨーロッパでいったん失われてしまったかといえば、相次ぐ戦乱などもありますが、キリスト教の教会の力が強く、教義に反する学問や文化などを厳しく弾圧したからでしょう

なぜルネサンスはフィレンツェから始まったのか。ミケランジェロの弟子ヴァザーリは著書『芸術家列伝』のなかで次のように三つの理由をあげています。第一に、作者が誰であるかよりも作品のよしあしを批評するような批判精神。第二に、商業国家であったために人々が勤勉で進取の気性に満ちていたこと。第三に、経済的な成功者が生まれるがゆえの、栄光と名誉への激しい渇望

万博における受賞は、それまではただの商品であったものに名誉を与えることで、人々の承認に基づいて機能する象徴財(威信財)へと変化させる意味がありました

デュラン=リュエルは、いつか人々が印象派を支持する時代が来るほうに賭けた

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新年一発目の本ということもあり、多少教養に振ってみましたが、思った以上にビジネスのヒントが書かれていて、勉強になりました。

ぜひ読んでみてください。

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『西洋アートのビジネス史』高橋芳郎・著 ディスカヴァー・トゥエンティワン

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◆目次◆

はじめに
第1章 アートとは何か?
第2章 ルネサンスに見るアーティストの誕生
第3章 ルネサンス以降のアートの変遷
第4章 メディアとブランドの誕生
第5章 画商の勃興とその発展
第6章 アートとビジネスの関係
おわりに

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