2019年10月29日

『アート思考』秋元雄史・著 vol.5385

【ビジネスマンがアートに学ぶべきこと】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833423367

本日ご紹介する一冊は、東京藝術大学大学美術館館長・教授であり、「ベネッセアートサイト直島」プロジェクトの主担当も務めた秋元雄史さんが、ビジネスに活かせる「アート思考」を述べた一冊。

のっけから、<どんな角度から考えても、「アートとビジネスはまったく異なる」>と書いており、アートをビジネスに活かそうと思った方には拍子抜けですが、結果的には、十分ビジネスに役立つ内容だと思います。

なかでも、次世代の社会のあり方を構想する思考実験の場所としてのアート、問いを立てる、見方を変える、常識からの逸脱、「炭鉱のカナリア」的アラート機能という意味で、アートはビジネスに先行する、重要な機能を担っていると思います。

本書では、難解と思われている現代アートの歴史と意味、代表的作品を通じて、マーケットやメディアを賑わす現代アートの正体を解説。

アートに苦手意識のあるビジネスパーソンも、これを読めば一気に現代アートに詳しくなれるでしょう。

拙書『「人生の勝率」の高め方』でも書いたように、グローバルで戦うビジネスパーソンになるためには、会話に登場する「隠れシグナル」を理解することが必要不可欠。

※参考:『「人生の勝率」の高め方』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4046042265/

本書には、アートに関する恥をかかない程度の教養と、ビジネスに必要な視点の両方がまとめられているので、時間がないという方にこそ、おすすめです。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

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今日のアートは、旧来のような人間の内面世界を表現するだけのものでなく、テクノロジーやデザインと結びつき社会的な課題に新たな提案を行う、あるいは、現代思想と結びつき次の時代の社会のあり方を構想するといった思考実験の場所でもあるのです

アートに求められるのは、経済的・社会的成功ではなく、やむことなき自己探求をし続けることです。社会に対する問題提起、つまり新たな価値を提案し、歴史に残るような価値を残していけるかどうかという姿勢を極限まで追求することが、アーティストの願望

「人が見えていない世界」を先取りすることが、オリジナリティを生む発想の原点

最初にするべきことは、あなたの曇った目を取り除くことです。私たちは自らを取り巻く外界を正しく理解していると思っていますが、まずそれが間違いであると気づく必要があります。それは、あなたが「見ている」と思い込んでいるものは、「本当に見ているもの」ではない可能性が高いからです

美術史を学ぶと、人類は目に見える世界を捉えるために様々な認識パターンを「発明」してきたことがわかります。点、線、面、円、四角形、三角形は、人間が発明した幾何学的な図形で、人はこれらを利用して世界を視覚的に把握しているのです。また輪郭線、陰影法、遠近法という技法を使い、本物らしく物や人を写し出しています

アーティストのような眼を得るためには、何をすればいいのでしょうか? それは視覚以外の知覚や認識に改めて意識を向けること

現実として、目の前で体験している「あなた」が感じていることは、自分で行っているのですが同時に社会から教育されたものでもあります。世界との直接的な出会いを実感したいのであれば、アーティストと同様に、「あなたと社会(環境)の間(あいだ)」を疑い、認識を再構築していく必要があります

芸術家や詩人を、最初に「炭鉱のカナリア」にたとえたのは、カート・ヴォネガットというアメリカの小説家でした。ヴォネガットは、
感受性に優れた芸術家をカナリアとして捉えることで、アーティストは世の中の「不穏な空気」をいち早く察知し、警鐘を鳴らし危険を知らせる役目を担うべきであると考えたのです

残念なことですが日本においては、今や世界のメインストリームである現代アートがほぼ理解されていません。しかし、現代アートはスポーツに例えればサッカーのようにグローバルな展開をしています

技巧を磨くことはもちろん大切ですが、やたら技巧に走ってしまい、仕上がりがきれいなだけでコンセプトの弱い作品をつくって満足していると、その先がない

◆現代アートの三大要素(『現代アートとは何か』小崎哲哉)
「インパクト」「コンセプト」「レイヤー」

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各章の終わりにまとめがついており、内容の要約と押さえておくべき用語・固有名詞が一覧できるのが、じつに親切です。

これ一冊読むだけで、グローバル教養の基本である現代アートが一気に身近になる、そんな内容です。

「付録」の「注目すべき現代アーティストたち」が、日本人に偏っているのは、日本人アーティストを支援する著者の立場上、仕方ないことだと思いますが、逆に言えば、グローバルで評価される日本人アーティストが誰なのか、ヒントがつかめると言っていいでしょう。

アート投資を考える人はもちろん、教養としてのアートに興味がある方、イノベーションのヒントにしたい方にもおすすめの内容です。

ぜひ、読んでみてください。

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『アート思考』秋元雄史・著 プレジデント社

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◆目次◆

はじめに
第1章 すべては「問い」から始まる
第2章 アートとビジネスの交差点
第3章 イノベーションを実現する発想法
第4章 アートと資本主義
第5章 現代アート鑑賞法
付録 注目すべき現代アーティストたち

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