2014年4月9日

『外資系金融のExcel作成術』 慎泰俊・著 vol.3550

【これはすごい。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492557318

本日の一冊は、ひさびさに感動したノウハウ本。

Excelの本など、星の数ほどあるわけですが、本書は、その辺の類書とはひと味もふた味も違います。

著者の慎泰俊(しん・てじゅん)氏は、モルガン・スタンレー・キャピタルで「エクセルニンジャ」の異名を取った投資プロフェッショナル。

それゆえに本書では、外資系金融エリートしか知らない、グローバル基準のExcelフォーマット、美しく表を魅せる方法、さらには、業績をシミュレートするための財務モデルの組み方が紹介されているのです。

まずは、美しく「見やすい」表の作り方ですが、著者によると、<「見やすい表」とは、一言でいえば、「どうやって見ればよいのか説明を必要としない表」のこと>。そのためには、<情報の並べ方が人間の認知の仕組みに従っている>必要があるのです。

以前ご紹介した、池上彰さんの『わかりやすく<伝える>技術』に、「日本は左、アメリカは右」という原則が載っていましたが、これに近い考え方を、企業分析の表でも実践する、ということです。

※参考:『わかりやすく<伝える>技術』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062880032/

では、どうすれば良いのかというと、原則はいたってシンプル。

著者の言葉を借りると、「時間は左から右に流れる」「論理は上から下に流れる」ように作るのが原則です。

本書の例をもとに紹介すると、売上、営業利益などの財務数値とKPI(Key Performance Indicator)があったら、業績の原因となるKPIを上に書き、結果である財務数値を下に書く、ということ。

これをやるだけでも、じつにシンプルで見やすい表になります。

さらに、グローバル基準の書類の作り方として、フォントについても細かく指定。つまらないところで評価を落とさないために、丁寧なアドバイスがなされています。

【グローバル基準の書類の作り方】
◆通常の場合
・日本語はMSPゴシック(Macであればヒラギノ角ゴでもよい)
・英語であればArial

◆非常にフォーマルな文書の場合
・日本語はMSP明朝
・英数字はTimes New Roman

そして、もう知っている人には釈迦に説法ですが、ホワイトワーカーが知っておくと便利なExcelのショートカット集、そして最後に最難関のExcelによる財務モデルの作り方が載っています。

Excelをある程度使ったことがあり、かつ会計についても、基礎的なことを学んでいることが条件ですが、会計に明るくない人でも、本書を読むことで、企業分析の何たるかを知ることができるので、一読しておいて損はないと思います。

恐ろしくわかりやすい説明、Macユーザーにまで配慮した内容で、挫折することなど一切気にせずに、一気読みできる一冊。

ひさびさの「当たり」本です。ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「見やすい表」とは、一言でいえば、「どうやって見ればよいのか説明を必要としない表」のこと

見やすい表とは、その表の見方についてのアフォーダンスを備えているもの

時間は左から右に流れる

論理は上から下に流れる

論理が上から下に流れる表というのは、言い方を変えると、「表を上から下に説明していけば何が起こったのかを説明できる表」のこと

なぜか日本の会社のExcelでは、英数字についてもMSPゴシックなどの日本語フォントを用いているところが多いのですが、MSPゴシックは本来日本語を書くために生まれたフォントで、英数字についてはあまり精神を割かれていないのか、決して美しいフォントにはなっていないという意見が大勢を占めています

◆通常の場合
・日本語はMSPゴシック(Macであればヒラギノ角ゴでもよい)
・英語であればArial

◆非常にフォーマルな文書の場合
・日本語はMSP明朝
・英数字はTimes New Roman

Excelで表を作るときのフォントサイズは10ポイントが良い

置換の画面で、「検索する文字列」に「=*」と入力し、置換後の文字列を空白にします。ここで「*」はワイルドカードで、どんな文字列であっても「=」の後に続くものはすべて置換の対象

モデルの作り方にはある約束事があります。それは、インプット欄(すなわち数字をベタ打ちしてよいエリア)の数字は青、アウトプット欄(すなわち数字を組んでいるエリア)の数字は黒にする、ということです。こうすることにより、初めてモデルを見た人でも、どのエリアはいじってよくて、どのエリアはいじってはいけないのかが理解できる

◆財務モデル作成の3ステップ
(1)財務三表を連動させ、実績値が整合しているか確認する
(2)実績値から重要業績評価指標(KPI:Key PerformanceIndicator)を求め、経営分析をする
(3)KPIを前提条件として将来財務諸表を作成する

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『外資系金融のExcel作成術』慎泰俊・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492557318

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◆目次◆

第1部 基礎編
第1章 見やすいExcelの表を作る
第2章 Excelの作業スピードを3倍にする
第2部 モデル編
第3章 初級者のためのモデル作成入門
第4章 本格的に財務モデルを組む
第5章 財務モデルを使った分析
第6章 モデル上級者になるためのヒント

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