2012年12月21日

『想定外』ジョン・ケイ・著 vol.3076

【幸せを追求することはなぜ愚かなのか?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4799312804

本日の一冊は、ロンドン・ビジネス・スクールおよびオックスフォード大学サイード・ビジネス・スクールで教授を務める著者が、「意思決定のパラドックス」を論じた一冊。

なぜ、目標にまっすぐ向かわない人のほうが目標を達成できるのか
なぜ、幸福を追求しない人のほうが幸福になるのか
なぜ、お金を追求しない人のほうがお金持ちになるのか
なぜ、回り道のアプローチが成功するのか

われわれが薄々勘付いているこうしたパラドックスを、さまざまな事例や研究結果をもとに論じており、じつに興味深い読み物です。

昨日紹介した『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』にも、著者らが思考を変え、<ミドリムシにはほとんど何も影響を与えないが、ミドリムシ以外の生き物は侵入できないような培養液を人為的に作り出すことができれば、別にクリーンルームでなくても問題がないんじゃないか>と悟るシーンが出てきましたが、うまくいくビジネスは、大抵こうした発想の転換を伴っています。

※参考:『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478021821
目的に向かって真っすぐ進むのではなく、回り道をする、そうして人生やビジネスに成功できることを、本書は伝えています。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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幸福になりたければそれを直接の目標にすべきではない
(ジョン・スチュアート・ミル)

ボーイングの成功は飛行機への愛情がもたらした

お金持ちは、実はお金を追求していない

自身の持つ自家用ジェット機を「弁解の余地のない買い物」と株主に説明したバフェットは、その数年後にジェット機を売り払い、その代わりに航空事業最大の株主となった。つまり事業そのものを買ってしまったのである

複雑な問題を回り道的なやり方で解決するには、「未来に横たわる目的の解釈」「達成途上に置く目標の実現」「基礎となる行動の実践」の3つをうまくつなげる必要がある

燃えやすい下草が除去されることにより、自然に防火帯が形成され、延焼を防いでくれる。つまり、山火事を減らす最良の方法は、「どんな火災も消火せよ」ということではなかったのだ

高い次元の目的に向かうために必要なのは回り道

偉大な人物は指標そのものを変えた

ホンダのベストセラーは50ccのスーパーカブだが、このモデルの主力の販売チャンネルはオートバイのディーラーではなく、スポーツ用品店である

単純な問題であっても、解決すべき内容の輪郭を定めてから取り組む必要がある

単純化には主観が不可欠

「盲目の時計職人」が、人類の理解を超えた複雑なものを創り出すことができる

環境がどう変化するかわからない、情報も不足している、変化も頻発している。そんなケースならば、ただ状況に適応しようとするだけの行為が、何か目的を持って行動した場合より実情に合うことがある

技量を磨くと回り道が見える

優れた意思決定は、それが試行錯誤の結果であるという意味で、回り道的にならざるを得ないのである。新たな情報を取り入れ、環境への適応をくり返す。さらに、そうした情報も、意思決定をくり返す過程から得られるものであるはずだ

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『想定外』ジョン・ケイ・著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4799312804

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◆目次◆

序章
第1章 回り道
第1部 回り道の世界
第2章 幸福
第3章 利益追求のパラドクス
第4章 ビジネスは芸術である
第5章 目的、目標、行動
第6章 回り道のユビキタス
第2部 回り道の必要性
第7章 「ごちゃまぜ検討」
第8章 多元論
第9章 相互作用
第10章 複雑性
第11章 不完全性
第12章 抽象化

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