2006年10月5日

『常識を再発明する!』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478321256

本日の一冊は、17歳で起業し、翌年、イスラエルの3Di社と提携、
現在はウェブ3D技術を活用したウェブコンテンツ制作事業で注目
を浴びる、ヤッパの創業者、伊藤正裕さんによる一冊です。

本書の価値は大きく分けて2つあると思います。

1つ目は、今後、情報技術がどう発展していくかについて、良質な
仮説を手に入れることができるという点。

そして2つ目は、さまざまな試練で培われた、著者のビジネス観や
斬新なアイデアに触れられるという点です。

「若くして起業」という触れ込みで、各種メディアで引っ張りだこ
の著者ですが、読んでみると、意外に骨太な経営論を展開している
のに驚きます。

本書には、著者のテクノロジーに対する考え方や、人々の生活とテ
クノロジーの関係、そしてそこに自社がどう関与するか、などが詳
しく書かれているのですが、一冊読んだだけで、著者が今後社会を
どう変えて行きたいのかが、ヴィヴィッドに伝わってきます。

いまどき珍しい、使命感を持った経営者だと感じました。

先日、ご紹介した『資本主義に徳はあるか』でも論じられていたよ
うに、技術に携わる人には、「何のために」という視点が不可欠です。

※参考:『資本主義に徳はあるか』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/431401010X

その点著者は、技術の目的を、「人間生活を豊かに楽しくする」と
明確に定義しており、かつ自社のミッションについても、「接点を
いかにわかりやすくつくるか」と立ち位置を明確にしています。

投資家を意識したのか、ちょっと目線が不自然な本ですが、それで
も読む価値は十分にあると思います。

情報技術の行方に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

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■ 本日の赤ペンチェック
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要するに、ある一定のスペックを超えると供給側やつくり手側の発
想ではなく、需要者側の発想に戻ってくるのだ。需要者がデジタル
機器を選ぶ決め手はデジタルやスペックではなく、いかに見た目が
好みに合っているか、使い勝手がよいかというアナログ的な発想に
変わりつつあるといえる

現在、インターネットを使って何かを伝えようとすると、文字、静
止画、音声、動画の四つの手段しかない。だが、デジタルの世界が
今後、よりアナログ的になっていき、情報が吸収しやすくなるにつ
れて、もっと違う手法、アクセスのためのさらにわかりやすい接点
が必要になるのではないか

最新型のテレビのリモコンにはボタンが60~70個もある。なぜ、こ
んな使いにくいものができたかというと、テレビという固定観念を
変えることなく機能を追加していくからだ

人にはパターン認識能力があるのだから、ウィンドウやフォルダー
を実際の三次元空間で操れるようにすればどこに隠れているのかわ
かるようになる。五感をもっと使って、立体空間の中で奥に進む、
手前に戻る、右に進む、左に進むといった動作で隠れている

いかにグーグルやマイクロソフトやヤフーが検索エンジンを発達さ
せ、情報をインデックス化したとしても、必ずその接点やインター
フェイスが必要になる。ヤッパはそこにおいて必ずや社会の役に立
つことができるはずだと考えている

これまでは長年かけて発見・発明したその労力に報い、保護するこ
とが特許の使い方だった。しかし、いまや特許を後生大事に守って
いるだけではビジネスにならない。仮に特許だけ個人や企業から買
ったとしても、その裏にあるノウハウをセットにしないとビジネス
にならないのである

変化に対応でき、その時代の先を行きながら、変わらないフィロソ
フィーとミッション、メッセージを伝えるのがブランド戦略

最も大切な広告メディアは、社員そのものである。私たちのブラン
ドを体現するのは社員だからだ

相手の技術や特許を買うだけの買収では意味がない。私が欲しかっ
たのは、3Di社が私たちと一緒に誠心誠意、仕事に熱中してくれ
るというメンタリティだったのだ

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『常識を再発明する!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478321256
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■目次■

第1章 フィロソフィー―普遍的に社会貢献ができる会社をつくる
第2章 ミッション―人間の能力を活かしたインターフェイスを開発する
第3章 テクノロジー―OSやハードに依存しない独自のウェブ3D技術
第4章 物づくり―いかにアナログと技術を融合させるか
第5章 常識を再発明する―人間の生活を豊かにするアナログ発想

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